損益計算書(財務諸表)の書き方【建設業】

損益計算書は財務諸表を構成する書類の一つであり、建設業許可申請書類に欠かすことのできないものです。
今回は前回に引き続き、架空の会社の財務諸表を一から作成するのは困難なので、手引書に記載されている財務諸表例を解説する形式で記事を進めます。

この記事は「架空の建設業者を想定して、実際にロールプレイ形式で申請書類を作成する」という企画の第12回目です。

今回は前回作成した申請書類の続きから作成していきます。
なお、前提条件は第1回から変化ありません。
まずは、以下の第1回の前提条件を確認してからこの記事を読み進めることを推奨します。
①:【建設業】申請書書類作成演習:①許可申請書

また、これまでのアーカイブは以下のリンクから参照できます。
閲覧書類編:閲覧書類【建設業】 アーカイブ
確認書類編:確認書類【建設業】 アーカイブ

1 損益計算書の概要

記載事項

損益計算書の記載事項は以下の通りです。

  1. 法人の事業年度の開始日及び最終日
  2. 法人名または屋号
  3. 完成工事高
  4. 兼業事業売上高
  5. 完成工事原価
  6. 兼業事業売上原価
  7. 完成工事総利益(総損失)
  8. 兼業事業総利益(総損失)
  9. 役員報酬
  10. 従業員給料手当
  11. 退職金
  12. 法定福利費
  13. 修繕維持費
  14. 事務用品費
  15. 通信交通費
  16. 動力用水光熱費
  17. 調査研究費
  18. 広告宣伝費
  19. 貸倒引当金繰入額
  20. 貸倒損失
  21. 交際費
  22. 寄付金
  23. 地代家賃
  24. 減価償却費
  25. 開発費償却
  26. 租税公課
  27. 保険料
  28. 雑費
  29. 受取利息及び配当金
  30. 貸倒引当金繰入額
  31. 貸倒損失
  32. 前期損益修正益
  33. 前期損益修正損
  34. 税引き前当期純利益(純損失)
  35. 法人税、住民税及び事業税
  36. 法人税等調整額
  37. 当期純利益(純損失)

実際のフォーマット

実際のフォーマットは以下の通りです。

損益計算書

2 作成要領

全ての記載事項を解説すると膨大な量になるため、以下は重要なポイントを絞って解説します。

完成工事高

これは日商簿記でいうところの「売上高」です。建設業に関わる売上高のみ完成工事高と呼称します。
なので、最初に決算書の「売上高」を建設業の売り上げと兼業部門の売り上げに振り分ける作業が必要です。
そして、振り分けた金額をフォーマットのⅠの売上高にそれぞれ記入します。
なお、工事の準備として実施する除草や除雪での売り上げは兼業部門に含まれます。

完成工事原価

これは日商簿記でいうところの「売上原価」です。建設業に関わる原価のみ完成工事原価と呼称します。
なので、最初に決算書の「売上原価」を建設業の原価と兼業部門の原価に振り分ける作業が必要です。
そして、振り分けた金額をフォーマットのⅡの完成工事原価と兼業事業売上原価にそれぞれ記入します。
なお、この完成工事原価は、必ず完成工事原価報告書の完成原価と一致しなければなりません。
まあ、そもそも完成工事原価報告書は損益計算書の完成工事原価を明らかにするためのものなので、当然なのですが。

完成工事総利益(総損失)

これは完成工事高から完成工事原価を引いたものです。すなわち、税金等を引かれる前の純然たる売上のことです。
これがプラスになれば総利益、マイナスなら総損失となります。
これも建設業と兼業部門で振り分けて計算します。

それ以外の勘定科目

上記3種類以外の勘定科目については、基本的に決算書の数字を転記するだけの作業になりますので、解説は省略します。

最後に

損益計算書の目的は、当期純利益(純損失)の額を明らかにすることです。この当期純利益(純損失)が明らかにならなければ、貸借対照表が作成できません。
決算書からの転記ミスがないように気を付けましょう。

今回は以上で終わります。
最後までご覧いただき、ありがとうございます。
次回は、貸借対照表を解説する予定です。


この記事が建設業許可の取得を検討されている方の参考になれば幸いです。

また、この他にも有益な情報を逐次投稿しております。よろしければ他の記事もご覧ください。
投稿記事 - 熊谷行政書士法務事務所 広島県広島市 (lo-kuma.com)

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