完成工事原価報告書(財務諸表)の書き方【建設業】

完成工事原価報告書は財務諸表を構成する書類の一つであり、建設業許可申請において重要な書類の一つです。

いよいよ非常に重要な書式である財務諸表の作成までやってきました。
しかし、今回に関しては、架空の会社の財務諸表を一から作成するのは困難なので、手引書に記載されている財務諸表例を解説する形式で記事を進めます。
また、分量が多いため、完成工事原価報告書、損益計算書、貸借対照表、株主資本等変動計算書、注記表の5部構成で解説します。

この記事は「架空の建設業者を想定して、実際にロールプレイ形式で申請書類を作成する」という企画の第11回目です。

今回は前回作成した申請書類の続きから作成していきます。
なお、前提条件は第1回から変化ありません。
まずは、以下の第1回の前提条件を確認してからこの記事を読み進めることを推奨します。
①:【建設業】申請書書類作成演習:①許可申請書

また、これまでのアーカイブは以下のリンクから参照できます。
閲覧書類編:閲覧書類【建設業】 アーカイブ
確認書類編:確認書類【建設業】 アーカイブ

財務諸表の概要

財務諸表の構成とは?

この財務諸表とは、申請者が法人であれば以下の4つの書類から構成されています。

  1. 貸借対照表
  2. 損益計算書
  3. 完成工事原価報告書
  4. 株主資本等変動計算書
  5. 注記表

申請者が個人事業主であれば、上記のうち貸借対照表と損益計算書の2点のみが必要になります。
というより、本来の財務諸表という用語の意味は、貸借対照表と損益計算書の2点の総称を指しています。
それ以外の3つは貸借対照表と損益計算書を作成する過程でできる副産物であったり、補足資料のような役割です。
申請者が法人の場合のみ例外的に提出書類が多くなるというイメージで良いかと思います。

完成工事原価報告書とは?

完成工事原価報告書とは、当期で完成に至った工事の原価をまとめた書類です。
そのため、施工中で来期に持ち越される予定の工事は含まれません。
また、兼業部門がある場合は、その原価は含まれません。

この書類は損益計算書と貸借対照表を作成する過程で発生する副産物的な資料です。
逆に言えば、完成工事原価報告書が分からなければ損益計算書と貸借対照表は理解できません。
最初は難しいと思いますが、まずは簡単な問題を解きつつ理解を深めましょう。

完成工事原価報告書の記載事項

完成工事原価報告書の記載事項は以下の通りです。

  1. 事業年度の開始日と最終日
  2. 法人名または屋号
  3. 材料費
  4. 労務費
  5. 外注費
  6. 経費
  7. 完成工事原価

実際のフォーマット

実際のフォーマットは以下の通りです。

完成工事原価報告書

作成要領

①事業年度の開始日と最終日

ここには「自(より)」に事業年度の開始日を、「至(いたる)」に最終日を記入します。

②法人名または屋号

ここには法人名と会社形態を記入します。株式会社であれば(株)のように略称を用いることが出来ます。
代表者の氏名等は不要です。

③~⑥材料費、労務費、外注費、経費

これら4つは1つずつ解説するのが難しいため、一度に解説します。

完成工事原価とは、前述の通り当期で完成に至った工事の原価をまとめたものです。
そのため、まずは当期に発生した工事を全て列挙し、発生した原価を集計します。
この集計した表が原価計算表です。
この段階ではまだ未成工事と完成工事の原価が混合しています。

原価計算表

(例題:建設業経理事務士第3級 第36回 抜粋)
上記の例ではA工事、C工事は完成していますが、B工事とD工事は未完成です。
そこで、A工事とC工事のそれぞれの各費用を抽出します。

材料費

工事のために仕入れ、使用した材料の費用です。
具体的には素材費、買い入れ部品費、燃料費、現場消耗品費、消耗工具機具備品費の合計額が該当します。
上記の例題の場合、
A工事(48,000+140,000=62,000)+C工事(78,000)=266,000となります。

労務費

現場で建設作業をする作業員に対する賃金、給料及び手当などの工事に直接要した人件費の額が該当します。
おな、労務費のうち、工種・工程別等の工事の完成を約する契約で、その大部分が労務費であるものは(うち労務外注費)として完成工事原価報告書に内数を記載します。
具体的には、材料を自社負担し作業だけを外注する場合や、他社から応援の人材を受け入れたような場合は(うち労務外注費)に該当します。
上記の例題の場合、
A工事(50,000+103,000=153,000)+C工事(44,000)=197,000となります。

外注費

請負工事を会部の会社に外注した場合にかかる費用です。
ただし、労務費の(うち労務外注費)に振り分けたものは含みません。
上記の例題の場合、
A工事(70,000+84,000=154,000)+C工事(98,000)=252,000となります。

経費

材料費、労務費、外注費以外の経費で、完成工事のために直接かかった費用の総称です。
なお、作業現場事務所の給与手当、退職金、法定福利費、福利厚生費等の人件費の合計額は(うち人件費)として完成工事原価報告書に内数を記載します。
上記の例題の場合、
A工事(20,000+32,000=52,000)+C工事(58,000)=110,000となります。

完成工事原価

前述の通りに算出された各費用をそれぞれ転記していきます。

完成工事原価報告書

これで完成工事原価を明らかにすることが出来ました。
あとは所定のフォーマットに転記するだけです。

最後に

さて、一見難しい完成工事原価報告書ですが、仕組みを覚えれば割と簡単に読み解くことが出来ますね。
この完成工事原価報告書の完成工事原価は、必ず損益計算書の完成工事原価と一致します。必ず確認しましょう。

今回は以上で終わります。
最後までご覧いただき、ありがとうございます。
次回は、損益計算書を解説する予定です。


この記事が建設業許可の取得を検討されている方の参考になれば幸いです。

また、この他にも有益な情報を逐次投稿しております。よろしければ他の記事もご覧ください。
投稿記事 - 熊谷行政書士法務事務所 広島県広島市 (lo-kuma.com)

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