廃棄物と有価物の境界線:法令に基づく実務上の解説
廃棄物の処理や取り扱いに関しては、法律に厳しく定められています。しかし、実際の現場では「これは廃棄物か、それとも有価物か?」という疑問が生じることが多いです。廃棄物として処理しなければならないのか、それとも資源として有効活用できるのか、この判断は非常に重要です。
今回は、廃棄物に該当するかどうかの判断基準を、具体例を挙げながら詳しく解説していきます。
目次
廃棄物の定義
まず、廃棄物とは何かを法律に基づいて確認しましょう。廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃棄物処理法)第2条では、廃棄物を以下のように定義しています。
(定義)
第二条
この法律において「廃棄物」とは、ごみ、粗大ごみ、燃え殻、汚泥、ふん尿、廃油、廃酸、廃アルカリ、動物の死体その他の汚物又は不要物であつて、固形状又は液状のもの(放射性物質及びこれによつて汚染された物を除く。)をいう。
この定義からわかるように、廃棄物とは一般的に、占有者が不要としたものを指します。しかし、ここで問題となるのが「不要物」の解釈です。ある物が不要であると判断されるかどうかは、その物が有償で取引されるか、または自ら利用されるかによって決まります。
有価物と廃棄物の判断基準
有価物として取引される物
では、具体的にどのような物が廃棄物に該当しないのか、以下の例を見てみましょう。
(1) 10%の銅を含むレンガくず
この場合、レンガくずに10%の銅が含まれているとします。このレンガくずが有償で取引されている場合、それは有価物とみなされ、廃棄物には該当しません。廃棄物処理法において、廃棄物かどうかはその物が有償で取引されるかどうかで判断されるためです。
(2) 外国に有償で輸出する貴金属を含む廃液
次に、貴金属を含む廃液が有償で外国に輸出されるケースです。この場合も、有償で取引されている以上、この廃液は廃棄物には該当しません。ただし、この取引がバーゼル条約など国際的な環境規制に違反しないことが前提となります。
(3) 国内で有価物として取引される産業廃棄物を加工した物の輸出
最後に、国内で有価物として取引される産業廃棄物を加工し、それを輸出しようとする場合です。この場合も、輸出する物が有価物として扱われている限り、それは廃棄物には該当しません。見本として輸出される物であっても、それが有価物である限り廃棄物には該当しないとされています。
廃棄物に該当するかどうかの実務上の判断
実務上、廃棄物に該当するかどうかの判断は非常にデリケートです。廃棄物処理法の適用を避けるために、有価物としての取引を装うケースも存在しますが、そのような場合は取引の実態や契約内容、さらには取引の相手国での処理状況なども考慮されます。
例えば、貴金属を含む廃液が有償で取引されるとしても、実際にそれが処分目的で輸出されるのであれば、それは廃棄物と見なされる可能性があります。このため、取引の透明性や法令遵守が求められるのです。
まとめ
廃棄物と有価物の境界線は、非常に微妙であり、法令に基づく正確な判断が求められます。今回は、具体例を挙げながら、廃棄物に該当するかどうかの判断基準を解説しました。重要なのは、廃棄物処理法の定義と実務における取引状況を踏まえた上で、適切な判断を行うことです。
廃棄物処理法第2条に基づき、廃棄物に該当しない物であっても、バーゼル条約やその他の国際的な環境規制に適合しているかを確認する必要があります。法令の遵守を怠ると、思わぬトラブルや法的責任を負う可能性があるため、常に最新の法令と実務の動向に注目することが求められます。
最後に
今回は廃棄物と有価物の実務上の区分について解説しました。
今回は以上で終わります。
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投稿記事 - 熊谷行政書士法務事務所 広島県広島市 (lo-kuma.com)
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