署名された文書の適切な保管方法とは?
署名や記名押印された文書は、法人にとって極めて重要な資産です。しかし、これらの文書をどのように保管すればよいか、その方法や期間については法令により厳密に規定されています。
今回は、署名された文書の保管方法について詳しく解説し、その根拠となる法令や実務上のポイントを説明します。
目次
法人における文書の保管義務
確定申告後の7年間の保存義務
法人が作成する帳簿および取引に関する書類については、所得税法に基づき、その年度の確定申告の提出期限から7年間の保存が義務づけられています。具体的には、総勘定元帳、仕訳帳、現金出納帳、売掛金元帳、買掛金元帳、固定資産台帳、売上帳、仕入帳などが該当します。これらの帳簿記帳に関連する証憑として、注文書、契約書、領収書なども同様に7年間の保存が必要です。
No.5930 帳簿書類等の保存期間|国税庁 (nta.go.jp)
内部統制と各種業法による保存義務
契約書や注文書などの文書は、税務上の観点だけでなく、契約の終了や債務が完済するまで、債権管理上の観点からも大切に保管する必要があります。また、法人には内部統制の観点や各種業法に基づき一定期間の保存が義務づけられている書面があります。これにより、適切な保存期間を設定し、文書が必要な時に迅速に取り出せるようにしておくことが求められます。
文書の保存方法
紙による保存が原則
文書の保存は、基本的に紙媒体による保存が原則です。しかし、保存期間の最後の2年間(6年目以降、特定の書類については4年目以降)は、一定の要件を満たすマイクロフィルムにより保存することが認められています。マイクロフィルムによる保存を行う場合は、適切な基準を満たすマイクロフィルムリーダやマイクロフィルムリーダプリンタを設置する必要があります。
電磁的記録による保存
改ざん防止や証拠価値を維持するために、契約書や注文書などの文書を電磁的記録で保存することも可能です。特に、タイムスタンプを付与することで、電子データの証拠価値を確保することができます。
債権管理と保存期間
上記以外の文書を債権の保全等の目的で保存する場合、契約書や注文書はその履行が完了するまで保存する必要があります。契約の内容や履行方法などに紛争が生じた際には、これらの書面が重要な証拠となります。また、貸金業法では、借入人の最終返済が行われた後に契約書などの債権証書を返還することが定められているため、完済までは保管しておく必要があります。
(債権証書の返還)
第二十二条 貸金業者は、貸付けの契約に基づく債権についてその全部の弁済を受けた場合において当該債権の証書を有するときは、遅滞なく、これをその弁済をした者に返還しなければならない。
文書の廃棄方法
保存期間が終了した文書は、適切に廃棄することが求められます。特に、契約書などには営業上の秘密や顧客の個人情報が含まれることが多いため、溶解や裁断などの方法で確実に処理することが重要です。
海外との契約における押印の効力
日本では、通常、署名に加えて押印を行いますが、これは法的には必須ではありません。しかし、海外では一般的に署名(サイン)のみで契約の意思を表明します。したがって、日本人が海外との契約に際して署名に加えて押印を行っても、法的効力には特段の影響はありません。押印は不要ではあるが、無害であるということです。
まとめ
署名された文書の適切な保管は、法人の内部統制や法令遵守の観点から非常に重要です。法定の保存期間を守り、適切な方法で保管し、必要なときに迅速に取り出せるようにすることが求められます。また、保存期間が終了した文書は、確実に廃棄することが必要です。これらの実務上のポイントを押さえて、法人の文書管理を適切に行ってください。
このように、文書の保管に関する法令や実務のポイントを理解し、適切に対応することで、法人の信頼性や法的安定性を高めることができます。
最後に
今回は署名された文書の適切な保管方法について解説しました。
今回は以上で終わります。
最後までご覧いただき、ありがとうございます。
この記事が印鑑制度について学びたい方の参考になれば幸いです。
また、この他にも有益な情報を逐次投稿しております。よろしければ他の記事もご覧ください。
投稿記事 - 熊谷行政書士法務事務所 広島県広島市 (lo-kuma.com)
なお、業務に関するお問い合わせは、下記のお問い合わせ方法からいつでもどうぞ。
お問い合わせ - 熊谷行政書士法務事務所 広島県広島市 (lo-kuma.com