署名(記名押印)が必要な文書とは?
今回は、署名(記名押印)が必要な文書について詳しく解説します。日常生活やビジネスの場面で、どのような文書に署名や押印が必要なのか、またその法的根拠を知ることは非常に重要です。この記事を読むことで、必要な場面で適切な対応ができるようになります。ぜひ最後までお付き合いください。
目次
署名(記名押印)が必要な文書の例
まず、具体的にどのような文書に署名や押印が必要なのかを見ていきましょう。以下の例は、法律上必須とされている主要な文書です。
約束手形と小切手の振出し
約束手形や小切手を振り出す際には、銀行に対して振出人の署名が必要です。これは、振出人の自署または記名押印がなければ無効とされるためです。約束手形の振出人は所持人に支払を約束する者です。また、小切手の振出人は銀行に支払を委託する者です。「誰がそういう約束をしたか」「誰がそういう支払の委託をしたか」を明確にするために、振出人の名称の記載は金額などと同様に重要なものです。これを「署名」といい、「自署」または「記名捺印」により行います。
なお、記名押印での取引の場合、押捺する印鑑は振出人が支払銀行に事前に届けている届出印でなければいけません。それ以外の印鑑では、支払銀行は支払に対応しません。
遺言における署名と押印
遺言に関しても、署名と押印が必須です。また、遺言は一部の例外を除き、自筆証書、公正証書、または秘密証書で行わなければならないとされています。
(普通の方式による遺言の種類)
第967条
遺言は、自筆証書、公正証書又は秘密証書によってしなければならない。ただし、特別の方式によることを許す場合は、この限りでない。
特に、自筆証書遺言の場合、その全文、日付、氏名を自署し、押印しなければなりません。氏名などを記しただけでは無効です。
(自筆証書遺言)
第968条
- 自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。
また、自筆証書中の文言を加除、変更する際には、遺言者がその場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じません。
公正証書遺言の場合も同様に、遺言者および証人が、公証人が書き取った内容について筆記の正確なことを承認した後、各自これに署名し、印を押すことが求められます。
秘密証書遺言の場合は、
- 遺言者が、その証書に署名し、印を押すこと
- 遺言者が、その証書を封じ、証書に用いた印章をもってこれに封印すること
- 遺言者が、公証人一人および証人二人以上の前に封書を提出して、自己の遺言書である旨ならびにその筆者の氏名および住所を申述すること
- 公証人が、その証書を提出した日付および遺言者の申述を封紙に記載した後、遺言者および証人とともにこれに署名し、印を押すこと
が要件とされており(民法第970条)、やはり作成者の遺言者の署名・押印が必要です。ただし、遺言者が署名することができない場合は、公証人がその事由を付記して、署名に代えることができます。
遺言と押印に関する最近の裁判例
最後に、遺言と押印に関する最近の裁判例を紹介します。
花押と押印
自筆証書遺言の押印は、実印だけでなく認印でもよく、指印でもよいとされています(最高裁判所判例平成元年2月16日)。また、印章による押印でなく花押による自筆証書遺言の効力が争われた事例がありました。最高裁は、わが国において、押印に代えて花押を書くことによって文書を完成させるという慣行ないし法意識が存在するとは認めがたいとして、花押の書かれた遺言を無効としました(最高裁判所判例平成28年6月3日)。
押印の場所
遺言書の文面上には遺言者の署名のみで押印がないが、2枚からなる遺言書には遺言者の契印がある場合は有効であるとされました(東京地方裁判所判決平成28年3月25日)。また、本文の署名下に印はなかったが、これを入れた封筒の封じ目にされた押印があれば有効であるとする判例もあります(最高裁判所判例平成6年6月24日)。
まとめ
署名(記名押印)が必要な文書には、約束手形や小切手、遺言書などがあります。これらの文書において署名や押印が求められるのは、その文書の真正性を担保し、誰がその文書を作成したのかを明確にするためです。法的な根拠としては、民法の規定や判例が存在します。また、それぞれのケースに応じた署名や押印の方法が定められています。重要な文書を作成する際には、これらの要件を満たしているか確認することが大切です。
最後に
今回は署名(記名押印)が必要な文書について解説しました。
今回は以上で終わります。
最後までご覧いただき、ありがとうございます。
この記事が印鑑制度について学びたい方の参考になれば幸いです。
また、この他にも有益な情報を逐次投稿しております。よろしければ他の記事もご覧ください。
投稿記事 - 熊谷行政書士法務事務所 広島県広島市 (lo-kuma.com)
なお、業務に関するお問い合わせは、下記のお問い合わせ方法からいつでもどうぞ。
お問い合わせ - 熊谷行政書士法務事務所 広島県広島市 (lo-kuma.com