屋内消火栓の設置基準について知っておくべきこと
火災は突然に発生し、迅速な対応が求められます。火災に対する備えとして、屋内消火栓の設置は非常に重要です。しかし、屋内消火栓には種類や設置基準があり、それぞれの違いや要件を理解することは決して簡単ではありません。今回は、屋内消火栓の種類や設置基準について詳しく解説し、法令に基づいた必要な情報を提供します。
目次
屋内消火栓とは
屋内消火栓とは、人が操作をすることで消火を行う固定式の消火設備です。水源、加圧送水装置、起動装置、屋内消火栓箱、ホース、ノズル、非常電源などから構成されています。一般的に、配管内は高架水槽からの水で満たされており、火災時に消火栓を起動させてホースを使って水を放出し、消火を行います。
屋内消火栓の種類
屋内消火栓には、主に1号消火栓と2号消火栓の2種類があります。
1号消火栓
項目 | 内容 |
---|---|
到達距離 | 半径25m以内 |
操作人数 | 2人以上 |
ホースの長さ | 30m |
ホース径 | 40mm程度 |
放水量 | 毎分130リットル |
ポンプ吐水能力 | 毎分150リットル × 消火栓設置個数 |
水源水量 | 2.6m³ × 消火栓設置個数 |
2号消火栓
項目 | 内容 |
---|---|
到達距離 | 半径15m以内 |
操作人数 | 1人 |
ホースの長さ | 20m |
ホース径 | 25mm程度 |
放水量 | 毎分60リットル |
ポンプ吐水能力 | 毎分70リットル × 消火栓設置個数 |
水源水量 | 1.2m³ × 消火栓設置個数 |
1号消火栓は放水能力に優れ、2号消火栓よりも広範囲に対応できる特徴があります。
屋内消火栓の設置基準と免除条件
屋内消火栓の設置が必要かどうかは、建物の用途や階数、床面積によって変わります。以下に具体的な基準を示します。
設置基準
建物の種類 | 地階、無窓階、4階以上の階の床面積 | それ以外の階の床面積 |
---|---|---|
劇場や集会場 | 100m²以上 | 500m²以上 |
キャバレー、遊技場、料理店、百貨店、旅館、学校、図書館など | 15m²以上 | 700m²以上 |
スプリンクラー設備、屋外消火栓設備、動力消防ポンプ設備などが設置されている場合、これらの消火設備の有効範囲については屋内消火栓の設置が免除されることがあります。
屋内消火栓の操作方法
1号消火栓
1号消火栓は2人以上で操作します。基本的に1人が起動用ボタンを押して開放弁のバルブを開放し、もう1人がホースを取り出し、ホースを伸ばした後に放水を行います。ホースを持って火源に近づいた時点でバルブを開放し、消火活動を行います。
2号消火栓
2号消火栓は1人で操作可能です。ノズルを手に持ち、開放弁を開くことで放水が可能になります。開放弁の開放操作を行うかノズルを脱着することで、自動的に装置が起動し、放水しながらホースを取り出して移動できます。
屋内消火栓設備の水源
消防法施行令第11条第3項第1号ハおよび第2号ロ等に基づき、水源は上水道水を使用し、規定水量以上を確保しなければなりません。1号消火栓の放水量は1分間に130リットル以上、2号消火栓は1分間に60リットル以上と定められています。放水時間はともに20分間とされています。たとえば、1号消火栓の場合、水源は130リットル×20分間=2600リットルが必要です。
屋内消火栓設置基準
防火対象物(消防法施行令別表第1) | 延べ面積 | 地階、無窓階・4階以上の階の床面積 |
---|---|---|
劇場や映画館など 公会堂、集会場 | 通常:500m²以上 主要構造が準耐火構造:1000㎡以上 主要構造が耐火構造:1500㎡以上 | 通常:100m²以上 主要構造が準耐火構造:200㎡以上 主要構造が耐火構造:300㎡以上 |
キャバレー、カフェーなど 遊技場・ダンスホール 性風俗関連特殊営業の店舗など カラオケボックスなど個室の店舗など 待合・料理店など 飲食店 百貨店、マーケットなどの店舗・展示場 旅館・ホテルなど 寄宿舎、下宿・共同住宅 病院・診療所など 老人・障がい者の入所施設 老人デイサービスセンターなど 幼稚園・特別支援学校 小学校・中学校・高校・大学など 図書館、博物館・美術館など 蒸気浴場、熱気浴場等 公衆浴場等 車両の停車場・船舶、航空機の発着場 | 通常:700m²以上 主要構造が準耐火構造:1400㎡以上 主要構造が耐火構造:2100㎡以上 | 通常:150m²以上 主要構造が準耐火構造:300㎡以上 主要構造が耐火構造:450㎡以上 |
神社、寺院、教会など | 通常:1000m²以上 主要構造が準耐火構造:2000㎡以上 主要構造が耐火構造:3000㎡以上 | 通常:200m²以上 主要構造が準耐火構造:400㎡以上 主要構造が耐火構造:600㎡以上 |
工場、作業場 映画スタジオ・テレビスタジオ | 通常:700m²以上 主要構造が準耐火構造:1400㎡以上 主要構造が耐火構造:2100㎡以上 | 通常:150m²以上 主要構造が準耐火構造:300㎡以上 主要構造が耐火構造:450㎡以上 |
自動車倉庫・駐車場 飛行機などの格納庫 | 設置対象外 | 設置対象外 |
倉庫 | 通常:700m²以上 主要構造が準耐火構造:1400㎡以上 主要構造が耐火構造:2100㎡以上 | 通常:150m²以上 主要構造が準耐火構造:300㎡以上 主要構造が耐火構造:450㎡以上 |
倉庫以外の事業場 | 通常:1000m²以上 主要構造が準耐火構造:2000㎡以上 主要構造が耐火構造:3000㎡以上 | 通常:200m²以上 主要構造が準耐火構造:400㎡以上 主要構造が耐火構造:600㎡以上 |
※1 以下のものに関する複合用途防火対象物 劇場や映画館など 公会堂、集会場 キャバレー、カフェーなど 遊技場・ダンスホール 性風俗関連特殊営業の店舗など カラオケボックスなど個室の店舗など 旅館・ホテルなど 病院・診療所など 老人・障がい者の入所施設 老人デイサービスセンターなど 幼稚園・特別支援学校 蒸気浴場、熱気浴場等 | それぞれの用途防火対象物に従う | それぞれの用途防火対象物に従う |
地下街 | 通常:150m²以上 主要構造が準耐火構造:300㎡以上 主要構造が耐火構造:450㎡以上 | 設置対象外 |
建造物の地下道に面した部分+地下道 上記※1の用途で用いられている場合 重要美術品として認定された建造物 延長50m以上のアーケード 市町村長指定の山林 | 設置対象外 | 設置対象外 |
危険物の規制に関する政令上の指定可燃物 | 政令規定の数量の750倍以上の貯蔵または取扱い | 政令規定の数量の750倍以上の貯蔵または取扱い |
※消防法施行令第11条および別表第1、危険物政令別表第4を基に作成。
まとめ
屋内消火栓は、火災発生時に迅速に対応するための重要な設備です。建物の種類や用途に応じて適切な種類の消火栓を設置し、定められた基準に従うことが必要です。また、設置基準や免除条件を理解することで、適切な防火対策を講じることができます。火災から命や財産を守るために、屋内消火栓の設置と適切な運用を心掛けましょう。
最後に
今回は屋内消火栓について解説しました。
ちなみに、カフェーというのは喫茶店のことではありません。明治時代から昭和初期までに発展したキャバレーのことです。太宰治の小説に頻出する施設ですね。
もう現在ではおそらく存在しないでしょう。
今回は以上で終わります。
最後までご覧いただき、ありがとうございます。
この記事が消防法について学びたい方の参考になれば幸いです。
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