不活性ガス消火設備の設置基準と効果について解説
火災対策の一環として、特に工場やデータセンター、発電施設などで重要な役割を果たす不活性ガス消火設備。その設置基準や効果について知っておくことは、防災対策を強化するために重要です。今回は、不活性ガス消火設備の基本的な概要から設置基準、法令の条文名まで詳しく解説します。
目次
不活性ガス消火設備とは?
不活性ガス消火設備は、二酸化炭素、窒素、アルゴンガス、あるいはこれらのガスを混ぜ合わせたものを消火剤とする消火設備のことを指します。また、不活性ガスが空気中に放出されると、空気中の酸素濃度が低下し、これによる窒息効果で炎を抑制することが期待されます。この設備は、油火災や電気火災が起こる場所、または水を使うことで故障のリスクがある機器の保護に特に有効です。
不活性ガス消火設備の構成
不活性ガス消火設備は、以下の主要な構成要素から成り立っています。
- 起動装置
消火剤の放出を開始する装置。 - 保安装置
消火剤の適正な放出を管理する装置。 - 高圧ガス容器
液化二酸化炭素などの消火剤を保管する容器。
特に二酸化炭素を用いる場合、液化された二酸化炭素が高圧ガス容器に貯蔵され、火災時には噴射ヘッドから液化した二酸化炭素が放射されます。二酸化炭素が気化する際に温度を低下させ、窒息作用と合わせて炎を鎮火します。
保安措置
不活性ガス消火設備を使用する際は、人命を守るための保安措置が必要です。特に全域放出方式(防護区域内の全体に不活性ガスを放出して消火する方式)を用いる場合は、以下のような措置が求められます。
- 音響装置の設置
ガス放出時に警報を発する音響装置を設置し、区画内の人間に警告します。 - 消火剤排出措置
放出された消火剤を安全な場所に排出するための措置。 - 表示灯と音声装置
防護区画の出入口に表示灯を設置し、隣接する場所に消火剤放出を知らせる音声装置の設置。 - 遅延装置
装置を起動してから貯蔵容器を開放するまで20秒以上の遅延装置の設置。
免除される場合
特定の条件下では、不活性ガス消火設備の設置が免除される場合があります。
- スプリンクラー設備が有効な範囲
指定可燃物を保管している建物で、スプリンクラー設備が有効な範囲内は設置免除。 - 駐車場
駐車しているすべての車が同時に屋外に出ることが可能であれば設置免除。
不活性ガス消火設備の種類
不活性ガス消火設備には、固定式と移動式の2種類があります。
固定式
- 全域放出方式
防護区域内の全体に不活性ガスを放出。 - 局所放出方式
防護対象物に対して直接不活性ガスを放出。
移動式
消火剤を貯蔵している容器が固定されていて、人がノズル付きホースを持って火に近づき、不活性ガスを放出して消火を行います。
法令の条文名
不活性ガス消火設備の設置基準は、消防法施行令13条・16条および消防法施行規則19条等に規定されています。例えば、全域放出方式の不活性ガス消火設備の噴射ヘッドは、不燃材料で造った壁、柱、床または天井により区画される必要があります。
消火剤の種類
消火剤には、二酸化炭素、窒素、IG-55(窒素とアルゴンガスを50:50で混合)、IG-541(窒素とアルゴンガスと二酸化炭素を52:40:8で混合)が使用されます。用途や防護区画の面積に応じて適切な消火剤が選定されます。
起動方法
不活性ガス消火設備の起動方法には、手動式と自動式の2種類があります。原則として手動で行われますが、普段人がいない場所や手動式にすることが不適当な場所では自動式が採用されます。
不活性ガス消火設備設置基準
項目 | 基準 |
---|---|
防火対象物の道路の部分の床面積 | 屋上:600m²以上 屋上以外:400m²以上 |
自動車の修理・整備に使用されている部分の床面積 | 地階・2階以上:200m²以上 1階:500m²以上 |
駐車に使われている部分 | 地階・2階以上:200m²以上 1階:500m²以上 屋上:300m²以上 昇降機つき駐車施設:収容車両数が10台以上 |
発電機・変圧器など電気設備がある部分の床面積 | 200m²以上 |
鍛造場、ボイラー室など多量の火気を使う部分の床面積 | 200m²以上 |
通信機器室の床面積 | 500m²以上 |
指定可燃物を貯蔵または取り扱う場合 | 指定量の1000倍以上を貯蔵または取扱い場合 |
まとめ
不活性ガス消火設備は、特に油火災や電気火災のリスクがある場所において、水を使用せずに火災を鎮火するための重要な設備です。その設置基準や保安措置について正確に理解し、適切に運用することが、火災リスクを最小限に抑えるために欠かせません。法令に基づいた適切な設置と保安措置を実施し、安全な環境を確保することが重要です。
最後に
今回は不活性ガス消火設備の設置基準と効果について解説しました。
今回は以上で終わります。
最後までご覧いただき、ありがとうございます。
この記事が消防法について学びたい方の参考になれば幸いです。
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投稿記事 - 熊谷行政書士法務事務所 広島県広島市 (lo-kuma.com)
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