現物出資に関する調査報告書と財産引継書について
株式会社の設立手続きには多くの重要なステップがあります。その中でも注意が必要なのが現物出資に関する手続きです。今回は、現物出資に関する調査報告書および財産引継書の作成方法と、その際の注意点について詳しく解説します。これは、株式会社を設立する際に不可欠なプロセスであり、特に法令遵守の観点から非常に重要です。
目次
現物出資とは?
現物出資とは、資本金として現金以外の資産(建物、自動車、有価証券など)を出資することを指します。現金が不足している場合でも、価値のある資産を利用して株式会社を設立することが可能です。ただし、このような現物出資を行う場合、いくつかの特別な手続きが必要になります。
現物出資の法的要件
現物出資を行う際には、次の要件を満たす必要があります。
- 定款への記載
現物出資を行う場合、その旨を定款に明記する必要があります。これは「変態設立事項」と呼ばれる特別な事項であり、定款に記載されるべきものです。 - 検査役の選任
通常、発起人の申立てにより裁判所が選任した検査役が、定款に記載された現物出資の評価額が適正であるかどうかを調査します。
検査役の調査が不要な場合
以下のいずれかに該当する場合、検査役の調査は不要です。
- 弁護士や税理士などの専門家から、定款に記載された現物出資の目的財産の価額が相当であるとの証明を受けた場合。
- 定款に記載された価額の総額が500万円以下の場合。
- 目的財産が市場価格のある有価証券であり、定款に記載された価額が市場価格以下である場合。
取締役の調査義務
検査役の調査が不要な場合でも、取締役や監査役(設置している場合)は、現物出資として出資されたものの価額を調査し、その結果を報告書として作成する義務があります。この調査報告書は登記の際に必要な添付書類となります。
調査報告書の作成手順
以下は、現物出資がある場合の調査報告書の書式例です。
調査報告書
現物出資の目的たる財産の表示
私どもは、令和〇年〇月〇日、株式会社○○(設立中)の取締役に選任されたので、会社法第93条の規定に基づいて調査をした。その結果は、次の通りである。
調査事項
1. 定款に記載された現物出資財産の価額に関する事項(会社法第33条第10項第1号及び第2号に該当する事項)
定款に定めた現物出資をする者は発起人Aであり、出資の目的たる財産、その価額並びにこれに対し割り当てる設立時発行株式の種類及び数は下記の通りである。
- 車種:○○○○
- 年式:令和〇年式
- 車体番号:札幌〇〇あ〇○○○
- 定款に記載された価額:金100万円
- 割り当てる設立時発行株式:普通株式 80株
上記については時価金200万円以上であり、当該定款の定める価額は相当であることを認める。
2. 発起人Aの引受けにかかる80株について、令和〇年〇月〇日午後〇時〇分、現物出資の目的たる財産の給付があったことは、別紙財産引継書により認める。
3. 令和〇年〇月〇日午後〇時〇分までに上記以外の出資にかかる払込みが完了していることは、別紙払込みがあったことを証する書面により認める。
4. 上記事項以外の設立に関する手続が法令又は定款に違反していないことを認める。
上記の通り会社法の規定に従い報告する。
令和〇年〇月〇日
株式会社○○
出席設立時取締役 A ㊞
出席設立時取締役 B ㊞
出席設立時取締役 C ㊞
財産引継書の作成手順
財産引継書は、現物出資における財産が実際に会社に引き渡されたことを証明する書類です。分かりやすくいえば、領収書のような役割を果たします。
次に、財産引継書の書式例は以下の通りです。
財産引継書
現物出資の目的たる財産の表示
- 車種:○○○○
- 年式:令和〇年式
- 車体番号:札幌〇〇あ〇○○○
- 価格:金1,000,000円
私所有の上記財産を現物出資として給付します。
令和〇年〇月〇日
発起人 北海道札幌市〇区○○ A ㊞
株式会社○○ 発起人A 御中
まとめ
現物出資に関する手続きは、株式会社設立において非常に重要であり、法令遵守の観点から厳密に行う必要があります。本記事では、現物出資の基本的な手続きとその際の注意点、具体的な調査報告書と財産引継書の書式例を示しました。これにより、株式会社設立時の現物出資に関する理解が深まることでしょう。
最後に
今回は現物出資に関する調査報告書と財産引継書について解説しました。
今回は以上で終わります。
最後までご覧いただき、ありがとうございます。
この記事が法人設立について学びたい方の参考になれば幸いです。
【参考:法務省:株式会社の設立手続(発起設立)について (moj.go.jp)】
また、この他にも有益な情報を逐次投稿しております。よろしければ他の記事もご覧ください。
投稿記事 - 熊谷行政書士法務事務所 広島県広島市 (lo-kuma.com)
なお、業務に関するお問い合わせは、下記のお問い合わせ方法からいつでもどうぞ。
お問い合わせ - 熊谷行政書士法務事務所 広島県広島市 (lo-kuma.com)