機械器具設置工事と清掃施設工事の特定許可取得要件について

概 要

建設業許可の取得要件の一つに「専任技術者となりうる者がいること」が挙げられます。
この専任技術者になるためには、

1 規定の国家資格を有していること
2 規定年数(10~12年)以上の実務経験があること
3 高校・大学・高専・専門学校で指定学科を卒業後、規定年数(3~5年)以上の実務経験があること

上記3つのうちのどれか1つに該当していなければなりません。

当然ですが、この中で最も証明が容易なのは1の国家資格保有者です。資格合格証を提出すれば簡単に証明できます。
その他の要件はことごとく実務経験が必要なので、実務期間の証明に一苦労を要します。
現職場で全ての実務経験が証明できれば理想的です。しかし、職場を転々としていて、その合計年数をもって証明する場合はそれぞれの前職場に実務経験証明資料(内容については割愛します)を請求しなければなりません。
前職場を円満に退職した場合は請求し易いですが、トラブルがあって退職した場合は請求しにくいものですし、そもそも前職場が倒産や合併で消滅してしまっている場合なども考えられます。その場合は実務経験の証明はより難しくなるでしょう。

建設業許可全29業種のうち「電気工事」と「消防設備工事」の2つだけは「電気工事士」または「消防設備士」の免許を取得した後に積んだ実務経験しかカウントされないため注意が必要です。

国家資格をもって専任技術者になる場合

さて、建設業の29業種のうち、ほとんどの場合はこの国家資格のうち「一般許可ならば2級、特定許可ならば1級の施工管理技士」で専任技術者になることが可能です。(セコカン万能説)
参考までに以下に専任技術者になることができる資格の一覧表のリンクを添付します。

専任技術者になることができる資格・免許等コード番号一覧表(令和5年7月以降) | 熊谷行政書士法務事務所 広島県広島市 (lo-kuma.com)

技術士という資格について


しかし、機械器具設置工事と清掃施設設置工事の2業種の特定許可要件は「技術士」という国家資格に限定されています。
日常生活をしていて、技術士という資格を耳にすることはほとんど無いと思います。
この資格は取得が極めて難しい資格です。
個人的には司法書士や税理士になるのとほぼ同等の難易度だと感じています。

まず、1次試験に合格して技術士補となり、そこから実務経験を最短でも4年、最長で10年積まなければ2次試験を受験することができません。
そしてこの2次試験の合格率は約10%程度です。
1次試験合格が40%程度なので、一発ストレート合格率は約4%程度の狭き門です

(画像:公益社団法人 日本技術士会HPより引用)

技術士になるには難関大学を卒業しなければならない?

また、指定の学科を卒業することにより1次試験の免除制度もあるのですが、この場合は更に過酷であり、国の指定する大学(または高専)の工学部等を卒業する必要があります。
しかも、その指定大学は東工、早稲田、明治、法政、そして全人類の憧れの的である香川大学などの錚々たる難関大学ばかりが名を連ねています。
そもそも入学するのが尋常ではなく大変です。日本国民の上位10%以内の偏差値に入らなければなりません。
なので、ほとんどの人は一次試験受験後に実務経験を積んで2次試験に臨まれるものと思料しますが、順当にいっても6年間は資格取得に必要な超難関資格なのです。
なお、指定大学等の一覧は以下のリンクから参照することができます。
技術士法第三十一条の二第二項及び第三十二条第二項の規定に基づく教育課程及び対応する技術部門の指定について:文部科学省 (mext.go.jp)

現状では実務経験で専任技術者になるのが常態化している

いかがでしょうか、技術士の資格がいかに難関かがご理解いただけたでしょうか。

そのため、この2業種で専任技術者を確保するためには規定年数(10~12年)の実務経験のある者を勧誘するのが最も現実的なのではないでしょうか。
とはいえ、建設業許可においての実務経験は他業種の工事に従事している期間があった場合はその期間は重複計算できない(同時並行で舗装と土木の工事していても、どちらか一方の実務経験でしかカウントされない)という縛りがあるため、これもなかなか厳しい条件なのです。

結 言

以上のことから、機械器具設置工事と清掃施設工事の特定許可取得においては、専任技術者になりうる者の確保が最重要課題となります。
また、なんとか申請時に専任技術者になりうる者が確保できたとしても、定年退職等でその要員がいなくなってしまったら許可要件を満たさなくなってしまうため、取得後も絶えず要員の育成に励まなければなりません。

この2業種の特定許可を取得しようとしている事業者は、先行的かつ継続的に専任技術者要員の確保を計画するようにしましょう。

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