行政書士法施行規則が改正された!行政書士法の業務制限と電子申請の拡充
行政書士は、日常生活やビジネスにおいて様々な法的手続きをサポートする重要な役割を担っています。特に、官公署に提出する書類の作成など、その業務範囲は非常に広範です。しかしながら、行政書士の業務には一定の制限が存在します。最近の規則改正により、軽自動車に関する電子申請が新たに拡充されました。今回は、行政書士法の業務制限や最新の改正点、そして行政書士が抱くかもしれない不安要素について詳しく解説します。
目次
行政書士法第19条の概要
業務の制限
行政書士法第19条は、行政書士または行政書士法人でない者が、業務として他人の依頼を受けて報酬を得て、官公署に提出する書類の作成を行うことを禁止しています。ただし、次の場合には例外が認められています。(以下、要約)
- 他の法律に別段の定めがある場合
- 総務省令で定める、定型的かつ容易に行える手続について、一定の経験や能力を持つ者が行う場合
この条文の目的は、行政書士の専門性と信頼性を確保し、無資格者による業務の質の低下を防ぐことにあります。
(以下、原文)
(業務の制限)
第十九条 行政書士又は行政書士法人でない者は、業として第一条の二に規定する業務を行うことができない。ただし、他の法律に別段の定めがある場合及び定型的かつ容易に行えるものとして総務省令で定める手続について、当該手続に関し相当の経験又は能力を有する者として総務省令で定める者が電磁的記録を作成する場合は、この限りでない。
行政書士法
具体的な適用例
例えば、行政書士でない者が官公署に提出する書類を作成する場合、これは違法行為となります。しかし、総務省令で定める特定の手続については、経験や能力を有する者がこれを行うことが許されています。この例外規定により、一定の条件下で業務が柔軟に運用されることが可能となっています。
行政書士法1条の2の詳細
業務の定義
行政書士法第1条の2では、行政書士の業務範囲が定義されています。具体的には、他人の依頼を受けて報酬を得て、以下の書類を作成することが業務とされています。(以下、要約)
- 官公署に提出する書類(電子的な記録も含む)
- 権利義務や事実証明に関する書類(実地調査に基づく図面類も含む)
この業務範囲の明確化により、行政書士が法的手続きの専門家としての役割を果たすことが保証されています。
(以下、原文)
(業務)
第一条の二 行政書士は、他人の依頼を受け報酬を得て、官公署に提出する書類(その作成に代えて電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によつては認識することができない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)を作成する場合における当該電磁的記録を含む。以下この条及び次条において同じ。)その他権利義務又は事実証明に関する書類(実地調査に基づく図面類を含む。)を作成することを業とする。
2 行政書士は、前項の書類の作成であつても、その業務を行うことが他の法律において制限されているものについては、業務を行うことができない。
行政書士法
法的制限
また、行政書士は他の法律で制限されている業務を行うことはできません。これにより、他の専門職との業務分担が明確化され、法的なトラブルを未然に防ぐことができます。
行政書士法施行規則第20条の改正内容
新たな電子申請手続の導入
令和元年(2019年)から運用が開始された「軽自動車保有関係手続のワンストップサービス(軽自動車 OSS)」により、道路運送車両法に基づく継続検査の電子申請が可能となりました。さらに、令和5年(2023年)1月からは新規検査の電子申請も対象に加わりました。この改正により、行政手続が一層効率化され、ユーザーの利便性が向上しました。
総務省令で定める手続
行政書士法施行規則第20条では、法第19条第1項ただし書に基づく総務省令で定める手続が規定されています。具体的には、以下の手続等が対象となります。
- 自動車の新規登録及び新規検査の申請
- 軽自動車の新規検査の申請
- 登録自動車及び検査対象軽自動車の継続検査の申請
指定された団体
これまでは、これらの手続は行政書士しか行えませんでしたが、今回の改正により、一般社団法人日本自動車販売協会連合会および一般社団法人全国軽自動車協会連合会がこれらの手続きを行うことが可能となりました。この改正は、特に新規検査の申請手続きについて、行政書士以外の団体にもその役割を担わせることで、手続きの効率化と利便性の向上を目指しています。
公布日および施行日
この行政書士法施行規則の一部改正は、令和6年(2024年)5月31日に公布され、令和6年(2024年)7月1日から施行されます。この新しい施行日から、指定された団体が新規検査の申請手続きを行うことが正式に認められます。
行政書士が抱く不安
今回の法改正により、行政書士が独占していた業務が他の団体にも開放されることとなります。これは、デジタル技術の発展による影響とも言えますが、行政書士の中にはこの変化を不安に感じる方も少なくないでしょう。具体的には、以下の点が挙げられます。
- 業務の一部喪失
新規検査の申請手続が一般社団法人日本自動車販売協会連合会および一般社団法人全国軽自動車協会連合会にも開放されたことで、行政書士の業務範囲が狭まる可能性があります。 - 競争の激化
これまで行政書士が独占していた業務に他の団体が参入することで、競争が激化し、行政書士の仕事が減少する可能性があります。 - デジタル技術への対応
電子申請手続の拡充により、デジタル技術に対応できる行政書士とそうでない行政書士との間で差が生じる可能性があります。
時代の変革期
我々の属する環境は時代に合わせて常に変化し続けています。生物の歴史上、強い生物が生き残ってきたのではなく、環境の変化に対応できる生物が生き残ってきました。行政書士としても、この時代の変化に対応し続け、進化し続けることが求められます。デジタル技術の発展により、業務の一部が他の団体に開放されることは、確かに不安要素となり得ます。しかし、これは同時に、自身のスキルを向上させ、新たな業務領域を開拓する絶好のチャンスでもあります。常に学び続け、時代の変化に柔軟に対応することで、行政書士としての価値をさらに高めていきましょう。
まとめ
今回の法改正により、行政書士の業務範囲とその制限についての理解が深まりました。また、軽自動車の電子申請手続が新たに拡充されたことで、ユーザーの利便性が大きく向上しました。行政書士法第19条、第1条の2、及び施行規則第20条に基づくこれらの改正は、法的手続の専門家としての行政書士の役割をより明確にし、業務の効率化と信頼性の向上に寄与しています。
特に、新規検査の申請手続きをこれまで行政書士しか行えなかったところを、一般社団法人日本自動車販売協会連合会および一般社団法人全国軽自動車協会連合会が行えるように改正された点は、非常に重要です。これにより、手続きの迅速化が期待され、利用者にとって大きな利便性の向上が見込まれます。
一方で、行政書士にとっては業務の一部が他の団体に開放されることで不安要素も存在します。これを機に、行政書士自身がデジタル技術に対応し、業務の幅を広げる努力が求められるでしょう。我々の属する環境は時代に合わせて常に変化し続けているため、この変化に対応し、進化し続けることが不可欠です。
最後に
今回は行政書士法の業務制限と電子申請の拡充について解説しました。
今回は以上で終わります。
最後までご覧いただき、ありがとうございます。
この記事が行政書士の業務について学びたい方の参考になれば幸いです。
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投稿記事 - 熊谷行政書士法務事務所 広島県広島市 (lo-kuma.com)
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