袋地通行権の判例を徹底解説

私たちの日常生活の中で、土地の利用に関する問題はしばしば発生します。特に、特定の土地が他の土地に囲まれて公道に通じない「袋地」となった場合、その所有者がどのようにして公道にアクセスするかは重要な問題です。今回は、袋地通行権に関する最高裁判所の判例を詳しく解説し、この問題の法的背景と具体的な解決方法を探ります。
【判例 最高裁判所第三小法廷 平成2年11月20日

事件の背景

人物関係

  • D氏
    旧地番の土地の所有者
  • 上告人
    D氏からdの土地を購入した者
  • 訴外F
    D氏からfの土地を購入した者

事件発生の経緯

本件は、東京都大田区の土地に関する問題です。昭和16年4月当時、D氏が旧地番の土地(ab丁目の土地)を所有していました。昭和35年9月、D氏はこの土地を合筆し、新たな一筆の土地としました。さらに、D氏はその土地を分筆し、dの土地とfの土地とに分けました。

  • 昭和35年9月
    D氏はdの土地を上告人に売却し、所有権移転登記を行いました。
  • 昭和36年4月17日
    D氏はfの土地を第三者(訴外F)に売却し、所有権移転登記を行いました。

この結果、上告人所有地は袋地となり、公道へのアクセスが問題となりました。

裁判に至る経緯

上告人は、自己の所有する袋地に対する通行権を主張し、隣接する土地所有者との間で紛争が生じました。この問題は、最終的に最高裁判所まで持ち込まれることとなりました。

判決の核心部分

囲繞地通行権の法的背景

民法213条は、共有物の分割または土地の一部譲渡によって公道に通じない袋地が生じた場合、袋地所有者が残余地について囲繞地通行権を有することを規定しています。この通行権は、残余地の所有者が変わっても消滅しません。

(公道に至るための他の土地の通行権)
第213条

  1. 分割によって公道に通じない土地が生じたときは、その土地の所有者は、公道に至るため、他の分割者の所有地のみを通行することができる。この場合においては、償金を支払うことを要しない。
  2. 前項の規定は、土地の所有者がその土地の一部を譲り渡した場合について準用する。
民法

裁判所の判断

最高裁判所は、本件において次のように判断しました。

  1. 袋地所有者の権利の継続性
    民法213条に基づき、袋地所有者が残余地についての通行権を有するという規定は、土地の特定承継があっても消滅しない。したがって、上告人は、D氏からfの土地を購入した訴外Fに対しても通行権を主張できる。
  2. 物権的権利の継承
    囲繞地通行権は、袋地に付着した物権的権利であり、残余地自体に課せられた物権的負担である。このため、通行権は土地の所有者が変わっても継続する。
  3. 袋地所有者の保護
    通行権が消滅すると、袋地所有者が偶然の事情によって法的保護を失うことになるため、不合理な結果を避けるために通行権は消滅しないとする。

判決理由の詳細

上告人が袋地となった土地を購入した時点で、D氏はまだfの土地を所有していました。その後、fの土地が訴外Fに売却されたにもかかわらず、上告人は通行権を維持しました。これは、袋地所有者の権利が、土地の特定承継によって消滅しないことを示しています。

また、原判決の判断において、上告人所有地を囲む土地のうち、民法213条に基づく通行権を行使することができるとされたため、原審の判断が正当とされました。

まとめ

本件判例は、袋地通行権の継続性とその法的保護について重要な判断を示しています。民法213条に基づく通行権は、土地の所有者が変わっても消滅せず、袋地所有者は引き続き通行権を主張できることが確認されました。この判例は、土地利用に関する問題解決の指針となる重要なものであり、今後の土地紛争解決に大いに参考となるでしょう。

最後に

今回は袋地所有者が残余地についての通行権を有するかについて解説しました。

今回は以上で終わります。
最後までご覧いただき、ありがとうございます。

この記事が民法について学びたい方の参考になれば幸いです。

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投稿記事 - 熊谷行政書士法務事務所 広島県広島市 (lo-kuma.com)

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