他人の株券を巡る争い:民法200条2項に基づく判例解説

株券の所有権を巡る争いは、金融市場においてしばしば発生する問題です。今回は、他人から盗取された株券の所有権を巡る裁判における判決を詳しく解説します。この判決は、民法200条2項の解釈に大きな影響を与えるものです。特に「承継人が侵奪の事実を知っていた場合」に関する重要な判断を示しています。
【判例 最高裁判所第一小法廷 昭和56年3月19日

事件の背景と経緯

事件の背景

この事件は、株券を担保として受け取った上告人が、その株券が盗取されたものであることを知っていたかどうかが争点となりました。具体的には、上告人が株券の所有者である被上告人に対して占有回収の訴えを提起されたことから始まります。

紛争の経緯

  • 前提
    上告人は訴外者Dから、本件株券を貸金の担保あるいは売買の目的物として引き渡しを受けました。
  • 問題発覚
    上告人は、本件株券がDらにおいて他人から盗取され、横領され、または騙取されてきた物件であることを推察していました。しかし、実際にそうであっても構わないと考えていました。
  • 裁判開始
    被上告人は、上告人がこれらの事実を知っていたとして、民法200条2項に基づき占有回収の訴えを提起しました。

占有回収の訴え)
第200条

  1. 占有者がその占有を奪われたときは、占有回収の訴えにより、その物の返還及び損害の賠償を請求することができる。
  2. 占有回収の訴えは、占有を侵奪した者の特定承継人に対して提起することができない。ただし、その承継人が侵奪の事実を知っていたときは、この限りでない。
民法

法的争点

民法200条2項の解釈

争点は、民法200条2項但書にある「承継人が侵奪の事実を知っていた場合」に該当するかどうかです。この規定により、侵奪の事実を知っていた場合、承継人も占有回収の対象となります。

裁判所の判断

原審の判決

原審では、上告人がDらによる株券の取得が犯罪行為によるものであることを認識しており、これが窃盗である可能性も十分に知っていたと判断されました。したがって、上告人は侵奪についての悪意の特定承継人にあたるとされました。

最高裁の判断

最高裁は、原審の判断を覆しました。上告人が「なんらかの形での侵奪があったこと」を知っていた場合には該当するが、単なる可能性の認識にとどまる場合は該当しないと判断しました。この判断の根拠として、以下の点が挙げられます。

  • 具体的認識の必要性
    承継人が単に前主の取得が不正である可能性を知っていただけでは不十分であり、具体的な侵奪の事実を知っている必要がある。
  • 法解釈の基準
    民法200条但書の規定を拡張解釈することは適当でないとされました。

判決の影響

この判決は、承継人が占有の侵奪を知っていたと判断されるためには、具体的な認識が必要であることを示しました。単なる可能性の認識では足りず、具体的な侵奪の事実を知っていることが必要です。

まとめ

本件は、株券の所有権を巡る争いにおいて、民法200条2項の解釈がどのように適用されるかを示す重要な判例です。特に、承継人が侵奪の事実を知っていた場合に該当するためには、具体的な認識が必要であるという判断は、今後の類似の事件においても重要な基準となるでしょう。

最後に

今回は自動車の登録と即時取得について解説しました。

今回は以上で終わります。
最後までご覧いただき、ありがとうございます。

この記事が民法について学びたい方の参考になれば幸いです。

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