自動継続特約付き定期預金の消滅時効に関する最高裁判決の解説
金融商品の選択において、預金者として注意すべき点は多岐にわたります。特に、自動継続特約付きの定期預金契約については、その仕組みや法律的な影響について理解を深めることが重要です。今回は、自動継続特約付き定期預金契約における預金払戻請求権の消滅時効に関する最高裁判決について解説します。この判決は、預金者にとって重要な意味を持ち、契約の理解を深める一助となるでしょう。
【判例 最高裁判所第一小法廷 平成19年6月7日】
目次
事件の背景
登場人物と相関関係
本件の登場人物は、上告人(預金者)と被上告人(A信用組合から事業を譲り受けた金融機関)です。上告人は、昭和61年11月19日にA信用組合に対して100万円を自動継続特約付きの定期預金として預け入れました。契約内容は以下の通りです。
- 利息:年4.23%
- 期間:1年
- 満期日:昭和62年11月19日
契約内容と特約
本件預金契約には満期日が到来すると同じ期間で自動継続する特約が付されていました。この特約により、預金者は満期日までに継続を停止する旨を申し出ない限り、自動的に契約が継続されます。また、継続の回数は10回を限度とすることが定められていました。
事件の経緯
A信用組合は平成12年12月11日に破綻し、被上告人がその事業を譲り受けました。同時に、本件預金契約に係る債務も承継しました。上告人は平成15年6月25日に被上告人に対し、本件預金の払戻しを請求しました。しかし、被上告人は応じませんでした。そのため、上告人は平成15年8月26日に訴えを提起し、被上告人は第1審第1回口頭弁論期日において消滅時効を援用しました。
裁判に至るまでの紛争過程
第1審および原審の判断
第1審及び原審では、上告人の請求は認められませんでした。原審は、自動継続定期預金の払戻請求権の消滅時効は初回満期日から進行すると判断し、その10年後に消滅時効が完成していると認定しました。この判断に基づき、上告人の請求は棄却されました。
最高裁判所の判断
自動継続特約の解釈
最高裁判所は、原審の判断を覆しました。自動継続定期預金契約における自動継続特約は、満期日において払戻請求がされない限り、何らの行為を要さずに自動的に更新されるものです。これにより、満期日が到来しても、新たな満期日が設定されるまで払戻請求権の行使には法律上の障害があるとしました。
消滅時効の進行
自動継続定期預金契約における消滅時効は、自動継続の取扱いがされることのなくなった満期日が到来した時から進行すると解するのが相当であると判断しました。つまり、本件では継続回数が10回に達した後の満期日が最終的な満期日となります。そのため、その時点から消滅時効が進行します。
裁判所の結論
判決の結果
以上の理由から、最高裁判所は原判決を破棄し、第1審判決を取り消しました。そして、上告人の請求を認容し被上告人に対して約142万円の支払いを命じました。また、訴訟の総費用は被上告人の負担とされました。
まとめ
本判決は、自動継続特約付き定期預金契約における預金払戻請求権の消滅時効の進行について重要な判断を示しています。預金者は、満期日が自動的に更新されることを理解し、適切な時期に払戻しの申し出が必要です。また、金融機関にも契約の内容と消滅時効の進行についての明確な理解が求められます。この判決を通じ、自動継続特約付き定期預金の契約内容と法律的な影響について、より深い理解が得られるでしょう。
最後に
今回は定期預金契約の消滅時効について解説しました。
今回は以上で終わります。
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投稿記事 - 熊谷行政書士法務事務所 広島県広島市 (lo-kuma.com)
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