3条許可取得後に詐害行為取消はできる?農地転用の豆知識
農地の所有権移転については、知事の許可が必要とされています。しかし、許可が下りた後にその移転が詐害行為に該当する場合、取り消すことができるのでしょうか?今回は、判例に基づき、この問題を解説します。
【判例 最高裁判所第三小法廷 昭和35年2月9日】
目次
事件の背景
事件は、上告人が実父Dから贈与された農地の所有権移転に関するものでした。知事の許可を得て所有権が移転した後、被上告人はこの移転が詐害行為であると主張し、取り消しを求めました。
登場人物の相関関係
上告人:実父Dから農地の贈与を受けた。
実父D:上告人に農地を贈与したが、詐害行為の疑いをかけられた。
被上告人:詐害行為として農地贈与の取り消しを求めた。
判決に至る経緯
知事の許可と詐害行為
農地法第3条では、農地の所有権の移転には知事の許可が必要とされています。しかし、知事の許可は移転の効力を完成させる行為にすぎず、詐害行為に該当する場合には取り消すことができると解されました。
(農地又は採草放牧地の権利移動の制限)
第3条農地法
- 農地又は採草放牧地について所有権を移転し、又は地上権、小作権、質権、使用貸借による権利、賃借権若しくはその他の使用及び収益を目的とする権利を設定し、若しくは移転する場合には、政令で定めるところにより、当事者が農業委員会の許可(これらの権利を取得する者(政令で定める者を除く。)がその住所のある市町村の区域の外にある農地又は採草放牧地について権利を取得する場合その他政令で定める場合には、都道府県知事の許可)を受けなければならない。(以下略)
詐害行為の認定
本件では、実父Dから上告人への農地贈与が被上告人に対する詐害行為に該当することが認定されました。詐害行為とは、債務者が債権者を害する目的で財産を処分する行為を指し、本件では被上告人がこの行為を証明しました。したがって、贈与行為が詐害行為に該当するため、知事の許可があってもその行為は取り消すことができると判断されました。
最高裁判所の判断
最高裁判所第三小法廷は、該所有権が不在地主に復帰することになったとしても、国による買収の対象となる可能性があるため、それが取消を妨げる理由にはならないとしました。さらに、詐害行為が認定された以上、贈与行為を取り消すことは妥当であると結論づけました。
まとめ
本件判例は、知事の許可があったとしても詐害行為に該当する場合には取り消すことができるという重要な判断を示しています。農地法第3条に基づく所有権移転の手続きにおいても、詐害行為に対する厳しい目が向けられることとなり、農地所有者や不動産取引に関与する者にとっては重要な判例となるでしょう。
最後に
今回は3条許可取得後に詐害行為に基づき所有権移転を取り消すことができるのについて解説しました。
最後までご覧いただき、ありがとうございます。
この記事が農地転用許可の取得を検討されている方の参考になれば幸いです。
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投稿記事 - 熊谷行政書士法務事務所 広島県広島市 (lo-kuma.com)
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