設備設置権のケースバイケース:相手方が承諾料を要求する場合
設備設置権とは、他人の土地を通じて自身の土地に必要な設備を設置するための権利です。この権利の行使は、特に隣接する土地が異なる所有者によって所有されている場合、複雑な問題を引き起こす可能性があります。
今回は、施設設置権についての解説記事の第3弾です。
事例
甲地の所有者であるAは、自身の土地に建築物を有している。また、隣接する乙地を通じて市道の主要な配水管に接続するための給水管を設置している。
乙地はかつてBが所有していた。しかし、Bの死後、遺産分割が完了しておらず、登記名義はBのままである。
Aがリフォームを計画している中で、給水管の規模を拡大する必要が生じた。そのため、既存の給水管を更新する必要がある。Aは乙地の利用のためBの相続人と必要な協議をするため通知を送付した。
しかし、Bの相続人の一人が承諾料を求めて給水管の設置を拒否した。
Aはどのように対処すべきか?
回答:無視
令和3年の民法改正前では、土地所有者が他の土地に設備を設置しようとした場合、設備の設置を承諾することに対していわゆる承諾料を要求されるケースが存在しました。裁判例においても、高額な承諾料が要求された事例が見られます。しかし、民法改正により、設備設置使用権の法的性質が変わりました。これにより、相手方の承諾の有無にかかわらず法的効果が発生するようになりました。
この改正は、設備の設置を承諾することに対する承諾料を求められても応じる義務がないと明確にしています。つまり、本事例のAは、Bの相続人からの承諾料の求めに応じる必要はありません。
また、Bがなお承諾料を要求するのであれば、設備設置使用権の確認の訴えや妨害排除、差止の訴えを提起すべきです。
償金の支払を要する「損害」は、設備設置工事のために一時的に他の土地を使用する際に、当該土地の所有者・使用者に生じた損害については実損害であり、設備の設置により土地が継続的に使用することができなくなることによって他の土地に生じた損害については設備設置部分の使用料相当額である。事案ごとの判断ではあるが、導管などの設備を地下に設置し、地上の利用自体は制限しないケースでは、損害が認められないことがあると考えられる。他の土地の所有者等から設備の設置を承諾することに対するいわゆる承諾料を求められても、応ずる義務はない。
令和3年民法・不動産登記法改正、相続土地国庫帰属法のポイント (抜粋)
結論として
土地の有効活用を目指す土地所有者にとって、隣接地との関係は重要な法的、実務的な課題です。民法の改正は、土地利用の自由を広げ、不合理な承諾料の要求から土地所有者を保護するための重要な一歩です。事例のような状況では、法的手段を積極的に活用し、合法的な権利を主張することが求められます。
最後に
今回は設備設置権の行使において相手方が承諾料を要求する場合について解説しました。
今回は以上で終わります。
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投稿記事 - 熊谷行政書士法務事務所 広島県広島市 (lo-kuma.com)
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