償金支払契約を反故する者にも通行権はある?
囲繞地通行権は、場合によって通行者が償金を支払わなければなりません。
しかし、その支払義務を一方的に放棄する者に対しても通行権を認めなければならないのでしょうか?
今回はこの問題について解説します。
事例
Aは囲繞地を所有している。
Aは袋地の所有者からの申し出を受け、公道に至るまでの通路を開設した。
通路の開設にあたっては、当事者間で毎年6万円を支払うとの約定がなされた。ところが、袋地の所有者はこの代金を支払わない。
Aは「契約不履行により囲繞地通行権が無くなっているから通るな」と主張することはできるか?
回答:償金を支払わなくても囲繞地通行権は消滅しない
まず、民法210条に規定されている囲繞地通行権が問題となります。
(公道に至るための他の土地の通行権)
第210条民法
- 他の土地に囲まれて公道に通じない土地の所有者は、公道に至るため、その土地を囲んでいる他の土地を通行することができる。
この規定は、物理的につながっている土地相互の相隣関係を規律し、当事者の意思に関係なく、法律によって囲繞地を通行する権利を認める趣旨があります。
また、民法212条ではこの囲繞地通行権に対する「償金」の支払義務が規定されています。
(公道に至るための他の土地の通行権)
民法
第212条
第210条の規定による通行権を有する者は、その通行する他の土地の損害に対して償金を支払わなければならない。ただし、通路の開設のために生じた損害に対するものを除き、1年ごとにその償金を支払うことができる。
この償金は、通行によって生じた積極的な損害を補償するものや他人の所有地を通行することによって生じる損失を補償するものなどを含んでいます。
今回の事例では、償金の支払い義務が果たされていない状況です。しかし、囲繞地通行権が消滅するかどうかは別の問題です。
210条の趣旨や償金の性質から考えると、償金を支払わない場合でも囲繞地通行権は消滅しないという解釈が一般的です。今回の主張は認められず、Aは償金の支払いを求めるしかありません。
また、袋地を譲渡した場合には新たな所有者に償金の支払い義務が引き継がれます。逆に囲繞地の所有者が変わった場合には、袋地所有者が従前の囲繞地所有者に対する償金の前払いを主張することはできないとされています。
まとめ
この事例から分かるように、償金を支払わない場合でも囲繞地通行権は消滅しないという解釈が一般的です。
民法に基づき、囲繞地通行権を主張するためには償金の支払いが必要となる場合があります。また、土地の譲渡や所有者の変更に際しても、償金の支払い義務が引き継がれることが重要です。適切な手続きを踏むことで、土地の利用や通行権の保護を円滑に行うことができます。
最後に
今回は償金支払契約を反故する者にも通行権はあるのかについて解説しました。
今回は以上で終わります。
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投稿記事 - 熊谷行政書士法務事務所 広島県広島市 (lo-kuma.com)
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