塀の設置の費用負担は?隣地とのトラブル防止
隣家との境界線に関する塀の設置は、民法によって厳格に規定されています。
しかし、事前に適切な協議を行い、円満な関係を保ったまま問題を解決できることもあります。
今回は、塀の設置に関する費用負担や注意すべき点について解説します。
※今回は令和3年度行政書士試験受験者にとってはトラウマをフラッシュバックさせてしまうかもしれません。心当たりがある方はブラウザバックして下さい。
目次
民法による規定
民法では、塀の設置費用は隣人と平等に負担すると規定されています。(224条)
ただし、この規定は隣家との間で特に合意が成立していない場合に限ります。すなわち、隣家と合意があれば、設置費用の負担が均等でなくても、その合意に従います。
土地内訳に応じた設置方法
設置する塀の形状や設置方法は、土地内訳に応じて異なります。
境界線上に設置する場合は、隣地にまたがることになるため、設置に隣人の同意が必要です。
一方で、自己の土地内に収まる場合は、隣人との協議は不要です。
ただし、これは設置する塀が隣人の日照や通風、眺望を害しない場合に限ります。
塀の修繕費用について
塀の修繕費用も、設置費用と同じように考えることができます。
つまり、隣人と均等に負担した場合は、修繕費用も均等になります。
また、高価な塀を設置した場合は、設置に余分にかかった費用を負担した者が、余分にかかる修繕費用も負担すべきとされます。
塀に関する事故の責任
民法では、土地上に設置された塀を「土地工作物」と位置づけ、その責任を占有者や所有者に負わせています。
そのため、塀に欠陥がある場合、その欠陥によって他人に損害が生じた際には、塀の占有者や所有者が損害賠償の義務を負うことになります。
第717条
民法
1 土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない。
2 前項の規定は、竹木の栽植又は支持に瑕疵がある場合について準用する。
3 前二項の場合において、損害の原因について他にその責任を負う者があるときは、占有者又は所有者は、その者に対して求償権を行使することができる。
この717条1項については、令和3年度の行政書士試験第46問(記述式)で直球で出題されました。そのため、見たことがある方も多いかと思います。
こんな鬼畜級のマニアック条文が試験で出されたら、一瞬で頭が真っ白になりますね……トラウマが蘇ってしまった方は申し訳ありません。
もし、塀を共同して設置した場合は、塀は共有物となるため、隣地の所有者も損害賠償の責任を負います。
ただし、一度賠償が行われれば、相手方の賠償責任は消滅し、残る方が別の者に請求をすることが可能です。
土留め工事をした場合の費用負担
土留工事の費用負担について 境界線が傾斜している場合、塀の設置に先立ち、土留工事(斜面の土砂崩れを防ぐ工事)が必要になります。
この工事費用の負担は、状況に応じて異なります。
斜面を所有している方は、自分の敷地内であるため、自由に工事を行うことができます。
その場合、隣地の所有者に工事費用を請求することはできません。
一方で、斜面の所有者でない方は、基本的に工事を行うことはできません。が、自己所有地に危険が及ぶ場合は、斜面の所有者に対して工事を請求することができます。
この場合、工事費用は斜面の所有者が負担します。
最後に
今回は隣地との塀の設置に関わる費用負担ついて解説しました。
今回は以上で終わります。
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投稿記事 - 熊谷行政書士法務事務所 広島県広島市 (lo-kuma.com)
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