筆界特定手続きとは何か?境界確定のための制度
不動産関係の仕事をしていると、境界に関する問題に直面することがあります。
今回は、土地の境界を明確にするための筆界特定手続きの概要について解説します。
筆界特定手続きの概要
土地の境界は、私人間で協議することなく、公の手続きを経て決定されなければなりません。
従来は裁判所で行われる境界確定訴訟を通じて決着がつけられていましたが、訴訟手続きは時間と費用がかかります。
このため、迅速かつ適正な境界確定の方法が必要とされていました。ここで、筆界特定手続きが新たに創設されました。
筆界とは何か?
筆界とは公法上の境界を意味し、国が定めた境界のことです。
また、筆界特定の手続きとは、裁判所を利用せず、登記官が行う簡易かつ迅速な手続きのことです。
不動産登記法においては以下のように定められています。
第123条(定義)
不動産登記法
1 筆界
表題登記がある一筆の土地(以下単に「一筆の土地」という。)とこれに隣接する他の土地(表題登記がない土地を含む。以下同じ。)との間において、当該一筆の土地が登記された時にその境を構成するものとされた二以上の点及びこれらを結ぶ直線をいう。
2 筆界特定
一筆の土地及びこれに隣接する他の土地について、この章の定めるところにより、筆界の現地における位置を特定すること(その位置を特定することができないときは、その位置の範囲を特定すること)をいう。
登記官の権限は?
すべての登記官が筆界特定登記官の権限を持っているわけではなく、特定を行う登記官は「筆界特定登記官」として指定されます。
指定は、問題の土地の所在地を管轄する法務局又は地方法務局の長によって行われます。特定手続きの目的は、紛争の早期解決にあり、そのため、法務局又は地方法務局の長は手続処理の標準的期間を定めて公表しなければなりません。
筆界は公法上の境界であり、詳細な事実調査と専門的な知識・経験が必要です。
このため、法務局の長などが指名する筆界調査委員が登場します。筆界特定登記官の補佐をするための委員であり、筆界特定手続きに必要な情報や専門知識を提供します。
なお、筆界調査委員については後に詳細に解説します。
筆界特定手続き:土地境界線の迅速かつ公正な特定方法
筆界特定手続きは、土地の境界線を公的な手続きを経て特定する制度です。従来の境界確定訴訟に比べ、手続が簡略化されていることが特徴で、筆界特定登記官によって行われます。以下は、手続きの流れを示す一連のステップです。
申請
まず、紛争が発生した土地の所有者が、所管の法務局や地方法務局に対し筆界特定登記官に申請を行います。
この申請には、対象土地の位置や関連情報を提出する必要があり、この際に所定の手数料が発生します。
申請に不備があると
申請された情報が正確かつ完全であるかを、筆界特定登記官が審査します。
不備があれば補足情報を求め、適切に修正を行います。登記官の審査に合格した場合、申請は正式に受理されます。
関係人への通知
筆界特定は関係人全体に関わるものであり、公告等を通じて関係人に通知されます。
これには、隣接地の所有者や利害関係人が含まれ、彼らの意見や情報も筆界特定の一部となります。特に、対象地の所有権登記名義人には個別に通知が行われ、その意見や情報も筆界特定の判断材料となります。
筆界調査委員とは
筆界調査委員は、土地の境界を特定する過程で重要な役割を果たす専門家のグループです。
彼らは、弁護士、土地家屋調査士などの土地関連の専門知識を有し、公式に任命された専門家集団です。彼らの役割は、筆界特定の判断に専門的な知識を提供し、土地の特性や地形などに関する専門知識を用いて、特定作業を助けることです。また、彼らは筆界特定登記官に対して意見を述べることができ、土地の境界を特定するための土地の特性や条件などに関する詳細な情報を提供することができます。
資料の収集
筆界特定のための詳細な資料を集める過程では、関係人の意見や証言が重視されます。特に、筆界調査委員による証言は、筆界特定登記官の判断に影響を与えます。
資料の収集プロセスは、従来の境界確定訴訟における法廷証拠の提出とは異なり、筆界特定の裁判所への委託はなく、主に筆界特定登記官と関係者が協力して行います。関係者から提出される資料は、土地の所有者や利害関係人によって異なりますが、典型的なものには次のものが含まれます。
- 土地の地形図や測量図
- 隣接地の所有者からの証言や意見書
- 筆界調査委員による専門的な分析や提言
これらの資料は、筆界特定の正確さと公正さを確保するために欠かせません。筆界特定登記官は、資料を総合的に評価し、専門的な分析や評価を行った後、最終的な筆界特定の決定を下します。
筆界の特定
以上の手続が終了した後、筆界特定登記官は筆界調査委員の意見を聴き、総合的に考慮し、筆界を特定します。特定の結果は公告され、関係人に通知されることになります。
このように、筆界特定手続きは境界線の特定を確実に行うための効率的な手法であり、所有者や関係人が公正な判断を得られるようになっています。
筆界特定手続きの申請書の書き方
ここでは、筆界特定手続きの申請書の書き方について詳しく見ていきましょう。
なお、筆界特定申請書のビジュアルは以下の通りです。
【画像出典:筆界特定申請書 書式:法務局 (moj.go.jp)】
申請の趣旨
申請書の最初には、申請の趣旨を明確に記載します。
具体的な土地の範囲や筆界の特定を求める理由を述べます。
申請人及び代理人の表示
申請人の情報と代理人がいる場合は、代理人の情報も記載します。
専門家が代理人の場合は、その資格も明記しましょう。
筆界特定添付書類等の表示
必要な添付書類を確認し、不足がないかチェックします。
特に、代理権限証書や相続証明書などが必要です。
対象土地及び対象土地に係る所有権登記名義人等の表示
対象となる土地とその所有者の情報を記載します。
土地の所在地や所有者の氏名、住所などを明確にします。
関係土地及び関係土地に係る所有権登記名義人等の表示
筆界特定に関連する他の土地や関係者の情報を記載します。
全ての関係土地を列挙する必要はありませんが、関係性を明確にします。
筆界特定を必要とする理由
申請の背景や理由を詳細に記載します。
過去の経緯や問題点を説明し、筆界特定の必要性を主張します。
対象土地及び関係土地の状況
対象土地と関係土地の現状を明確に説明します。
図面や写真を活用して、わかりやすく示します。
筆界についての申請人の主張及び根拠
申請人の主張や根拠を示します。
なぜその土地が特定されるべきだと考えるのか、その根拠を説明します。
関係人の主張
関係者からの主張があれば、それに対応します。
関係人の意見や主張を記載し、公平な判断を求めます。
筆界確定訴訟の有無
筆界確定訴訟の有無を明確に記載します。
訴訟が進行中の場合は、その状況も説明します。
申請情報と併せて提供する意見又は資料
申請に関連する意見や資料を提供します。
追加の情報や補足資料を添付し、申請の根拠を強化します。
手数料印紙はり付け欄
申請手数料に関する情報を記載します。
手数料の納付方法や金額について明確に示します。
申請手数料仮納付額
手数料の仮納付額を記載します。
手数料の一部を仮に納付し、不足分を後日支払う場合に使用します。
最後に
今回は筆界特定手続きの概要ついて解説しました。
今回は以上で終わります。
最後までご覧いただき、ありがとうございます。
この記事が不動産関係について学びたい方の参考になれば幸いです。
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投稿記事 - 熊谷行政書士法務事務所 広島県広島市 (lo-kuma.com)
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