ドローン飛行許可の最新法令!取得方法の概要を解説
ドローン飛行許可の最新法令では、2024年6月の運用解釈の改正を契機に、飛行許可申請の判断基準が明確化され、操縦者の資格制度や飛行許可の要件に関する運用が見直されました。本記事では、ドローン初心者の方に向けて、最新の法令に基づく飛行許可の取得方法や注意点を解説します。
目次
ドローンとは?基本的な定義と用途
ドローン(無人航空機)とは、航空法で定義された「人が搭乗しない航空機」のことを指します。リモート操作や自動制御によって飛行し、空撮、農業、測量、災害対応など多岐にわたる用途で活用されています。
飛行許可が必要なケース
許可が必要な場合は、飛行空域と飛行方法で許可申請と承認申請に分かれます。しかし、これらは承認を受けなければ飛行ができないという点でほぼ同一であるため以下の解説では便宜上、許可で統一します。
以下の9種のうち、どれか1つでも当てはまるのであれば、飛行許可申請が必要です。
また、当てはまらなくても継続的に業務でドローンを飛ばす可能性があるのであれば、事前に飛行許可を取得することを推奨します。
空港などの周辺の空域
空港やヘリポートの周辺は、他の航空機と衝突事故が発生する可能性があるため許可申請が必要です。
空域の具体的な調べ方は国土地理院地図で「空港等の周辺空域(航空局)」を選択すると、黄緑色で表示されます。この黄緑色で表示されていない場所は、許可申請が必要な空港等はありません。黄緑色の範囲でも、許可申請が不要な場合があるので注意が必要です。

空港やヘリポートごとに、それぞれ許可申請が必要な高度が決まっています。大きな空港では「高さ制限回答システム」というものがあります。国土地理院地図と同じようにインターネットで検索して住所を入力すると、許可申請が必要な標高が分かります。
小さな空港やヘリポートの場合は直接問い合わせして許可申請が必要なのかどうかを確認しましょう。
地表または水面から150m以上の空域
この高さも人が乗っている衝突事故が発生する可能性があるため、許可申請が必要です。
この150m以上というのは、「標高(海抜)」ではなく、 「地表または水面」から150mです。
人口集中地区(DID地区)内の空域
人口密集地域では、ドローンの機能障害が発生した場合、墜落による人や物との接触のリスクが高ります。飛行許可申請が不可欠です。実際、この人口密集地域内での許可取得は、ほぼ全ての利用者によって行われています。
この地域は一般的にDID(Densely Inhabited District)地区とも称されています。
具体的な空域の調査手法は、国土地理院地図内で「人口集中地区(総務省統計局)」を選択することで、赤でハイライト表示されます。
人口密集地区の定義や定期的な見直しに関する詳細はあるものの、許可申請においては、国土地理院地図の赤く表示されたエリアが人口密集地区であると把握していれば基本的に問題ありません。周囲に人がいない場合であっても、自身の土地でドローンを運航する場合でも、人口密集地区内であれば許可申請が必要です。ドローンを運航する可能性がある場合は、事前に許可を取得するよう努めましょう。
夜間飛行
夜間の飛行においては、日没から日の出までの期間は、ドローンの位置や姿勢だけでなく、周囲の障害物などの把握が難しくなり、危険が増加します。ドローンの適切な操作が難しくなり、墜落や機体の見失いの可能性が高まります。
夜間の運航時間に関する具体的な情報は国立天文台で詳細が発表されています。、これらの詳細な時間帯を覚えていても、実用的な情報となることは限られています。
夜間にドローンを運航する可能性があれば、事前に許可を取得しておくことが重要です。
中国メーカーのDJIのドローン等、許可申請数の多い製品には、飛行中の向きを示すLEDライトが搭載されています。夜間は、これらのLEDライトを頼りにドローンを見失わないように運航します。
基本的に前方が「赤色」、後方が「緑色」であり、これを覚えておくことが重要です。
目視外でのドローンの運航
「目視」とは、運航者が直接ドローンを肉眼で確認することを指します。
コンタクトレンズやメガネの使用は問題ありません。しかし、双眼鏡やドローンのカメラ映像をモニターで確認しながら運航する場合、目視ではなくなり、許可申請が必要です。
モニターを見ながら操縦する場合
目視が難しい状況では、周囲の状況や障害物の把握が難しく、運航が危険であるためです。モニターを見ながら操縦する場合も、運航者は目視外と見なされます。
ゴーグルを使用して運航するFPV(ファーストパーソンビュー)飛行も目視外に含まれ、これにはDJIから発売されているFPV対応のドローンも存在します。FPV飛行は自身がドローンになったかのような一人称視点での体験を提供します。しかし、これに慣れるまでには時間がかかる場合もあります。
人や物件から30m以上の距離を保てない状況での飛行
ドローンの運用において、人や物件から30m以上の適切な距離を保持することが求められています。この30mの距離を確保できない場合は、許可を取得する必要があります。
ここでいう「人」は第三者を指し、「物件」は他者が所有または管理している建物や自動車などを指します。また、「第三者」とは、ドローンの飛行に直接的または間接的に関与しておらず、身元が特定されていない個人を指します。
なお、自然に存在する木や雑草などは物件に含まれません。物件として見落としやすいものには、電柱、電線、信号機、街灯などが挙げられます。
人や物件が無い場所でも注意は必要
人口密集地域でもなく、第三者が近くにいないという理由で許可なしに飛ばしても問題がないと考える人もいるかもしれませんが、常に確認を怠らないようにしましょう。
もし、第三者や第三者が管理する物件が近くにない場合は、特に許可は必要ありません。しかし、それでも無許可での飛行は慎重に行うべきです。落下事故やドローンが関係者に接触する事態は避けなければならないため、安全な飛行を心掛けてください。どこで第三者や物件の近くでドローンを飛ばすことになるかは予測が難しいものです。業務でドローンを使用する場合は事前に許可を得るべきです。
許可申請は、人口密集地域内での飛行と同様に、多くの場合、ドローンの運用者にとって当然の慣習となっています。
イベント上空での飛行
多くの人が集まるイベントが開催される場所の上空では、ドローンが落下した場合に被害が大きくなる可能性が高くなります。飛行を行うには許可申請が必要です。
具体的には、そのイベントが「特定の日時と場所に不特定多数(数十人以上)の人が集まるものかどうか」を、主催者の意図や他の要因と総合的に判断します。夏祭りや屋外コンサートが具体的な例となるでしょう。
人混みや信号待ちのような自然発生的な状況はイベントには含まれません。第三者が特定されている場合もイベントには該当しません。
不特定多数とは
イベントで言及される不特定多数は、「多数の第三者」と同様に、ドローンの飛行に直接または間接的に関与していない身元が特定されていない人々を指します。許可申請時には、ドローンを飛ばす高さに応じた立入禁止区域の設定が原則となります。また、風速や速度にも許可が制限されます。イベント上空での許可申請は難易度が高く、飛行時の制約も多いです。そのため、業務で使用される場合は飛行許可が不要な軽量な機体を選択したり、イベント会場から離れた場所からの飛行が行われることもあります。
危険物の輸送
危険物の輸送許可は、バッテリー、ガス、燃料、農薬、火薬などを輸送する際に必要です。
墜落した場合の損害が大きい可能性があるためです。バッテリーや燃料を含むドローンの必要な物資は危険物に該当しません。イベント上空での飛行許可申請と同様に、比較的申請件数が少ないカテゴリーです。具体的な例として、農業で農薬散布を行う場合は許可が必要です。ドローンが危険物を輸送するには、漏れ防止の構造と材質を備えたタンクが条件とされます。例えば、農薬散布ドローンは、農薬が外部に漏れないような構造と十分な強度のタンクを備えているため、これをそのまま使用することができます。
物件の投下
ドローンから物件を投下する場合、地上にいる人や物に危害を及ぼす可能性があり、ドローン自体がバランスを崩す可能性があるため、許可申請が必要です。
物件としては液体や霧状のものも含まれます。農薬の散布も含まれ、水をまく際も投下の許可が必要です。宅配などで物を地面に置く場合は投下しないため、許可申請は不要です。この許可に関する申請はごくわずかで、実際に申請が必要なケースは稀です。
運搬物の落下防止は必須
物件を投下するドローンは、運搬している物が落下しない構造である必要があります。例えば、農薬散布の際に農薬の散布量が調整できなかったり、散布装置の制御が効かなくなり農薬が漏れてしまった場合は深刻な問題となります。危険物の輸送と同じく、物件投下に関する許可申請も農薬散布での事例が多いです。今後は農薬散布以外の用途でも様々な事例が出てくるでしょう。現在、ドローンの運航者のほぼ全てが飛行許可を取得しています。
例外規定
上記で解説した許可を要する場合にも例外があります。
十分な強度を有する紐等(30m以下)で係留し、飛行可能な範囲内への第三者の立入管理等の措置を講じてドローン等を飛行させる場合は、以下のケースで許可・承認が不要となりました。
- 物件投下
- 人口密集地上空における飛行
- 夜間飛行
- 目視外飛行
- 第三者から30m以内の飛行
2024年の改正ポイント
2024年6月10日、国土交通省は「無人航空機に係る規制の運用における解釈について」を改正しました。主な変更点は以下の通りです。
風速の確認が高度ごとに必要に
従来は地上の風速のみを確認すれば良かったところ、改正後は飛行経路上の各高度帯における風向・風速の変動を確認することが求められています。これにより、より安全な飛行が可能となります。
緊急用務空域の明確化
災害時などに指定される「緊急用務空域」では、ドローンの飛行が原則禁止されます。これにより、有人機の安全確保が図られます。
ドローンの登録義務化
2022年6月20日より、100g以上の無人航空機は国土交通省への登録が義務化されました。登録は「ドローン情報基盤システム(DIPS 2.0)」を通じて行います。
飛行許可の申請方法
飛行許可の申請は、DIPS 2.0を通じてオンラインで行います。申請には、飛行計画、操縦者情報、機体情報、安全対策などの詳細な情報が必要です。審査には通常10開庁日以上を要するため、余裕を持って申請しましょう。
操縦者の技能証明制度(国家資格)
2022年12月から、ドローンの操縦者に対する国家資格制度が開始されました。「一等無人航空機操縦士」と「二等無人航空機操縦士」の2種類があり、飛行の内容や用途に応じて取得が推奨されます。資格の有効期間は3年間で、更新には講習の受講が必要です。
無許可飛行のリスクと罰則
許可が必要な飛行を無許可で行った場合、最大50万円の罰金が科される可能性があります。さらに、事故や損害が発生した場合は、損害賠償請求の対象となることもあります。法令遵守と安全対策の徹底が求められます。
安全な飛行のためのポイント
- 飛行前の機体点検とバッテリー確認
- 飛行計画の策定と周囲の安全確認
- 気象条件(風速・降雨など)の確認
- 緊急時の対応手順の準備
これらのポイントを守ることで、安全かつ合法的なドローン飛行が可能となります。
最後に
今回はドローン飛行許可の概要について解説しました。
なお、この記事は令和7年現在の法令に基づいて執筆されていることを御了承下さい。
今回は以上で終わります。
最後までご覧いただき、ありがとうございます。
この記事がドローン飛行許可の取得を検討されている方の参考になれば幸いです。
また、この他にも有益な情報を逐次投稿しております。よろしければ他の記事もご覧くだ さい。
投稿記事 - 熊谷行政書士法務事務所 広島県広島市 (lo-kuma.com)
なお、業務に関するお問い合わせは、下記のお問い合わせ方法からいつでもどうぞ。
お問い合わせ - 熊谷行政書士法務事務所 広島県広島市 (lo-kuma.com)