住所変更登記の義務化について

住所変更登記の義務化とは、令和8年4月1日から開始される施策であり、従来は不動産の所有者が住所変更をしてもその登記をすることは任意でしたが、これを明確に義務化するというものです。
前回の記事で相続登記の義務化について解説しましたが、とうとう住変登記まで義務化します。
所在不明土地問題解決のためとはいえ、少し国民負担が増えてしまうのでは?と感じる方もいらっしゃるでしょう。
そこで今回は、法務省の難解な資料を読み解き、住所変更登記の義務化について解説します。

住所変更登記の義務化の概要

住所変更登記の懈怠には罰則がある

この住所変更登記を正当な理由なく懈怠した場合は、5万円以下の過料が科されます。
【新法第164条第2項】
相続登記義務の懈怠の過料が10万円以下なので比較すると低廉です。
なお、この場合の正当な理由は、現在は公開されていません。
今後、具体的な類型について通達をもって明確化される予定です。

申請期限

登記の申請期限は所有権の登記名義人の住所変更から2年以内です。
相続登記の義務の3年以内と比較すると期限が短縮されています。
これは自己が住所変更したことを知らないという事態があり得ないためでしょう。
【新法第76条の5】
また、当然ですが義務の対象者は所有権の登記名義人です。
抵当権や地上権の登記名義人は含まれません。

登記官が職権登記してくれる方法もある

転勤等で住所を転々としがちな人にとって、この義務は非常な負担になるでしょう。
そのため、必要な手続きを踏めば登記官が当該登記を※職権登記で済ませてくれます。
※職権登記:申請するまでもない明白な事実を登記官が自動的に登記してくれること。仮登記を本登記にした後の仮登記の抹消等が該当します。もちろん無料です。

以下、必要な手続きについて解説します。

自然人の場合

  1. 所有権の登記名義人があらかじめ法務局に対して氏名・住所・生年月日等の検索用情報を提供する
  2. 法務局が提供された検索用情報に基づき定期的に住基ネットに照会する
  3. 照会の結果、当該名義人の住所変更があった場合は本人の同意を得た上で登記官が変更登記をする

本人の同意が必要な理由は、登記義務者がDV被害者等で個人情報を保護する必要がある場合に考慮しているものと考えられます。

法人の場合

  1. 法務省内のシステム間連携により、法人の住所等に変更が生じたときは、商業・法人登記のシステムから不動産登記のシステムにその変更情報が通知される
  2. 通知された情報をもとに登記官が住所変更登記をする

自然人、法人ともに職権登記がされた場合は、登記義務は履行されたものとされます。
すなわち、登記が義務化されるというより登記が全自動化されるといった方が適切です。
非常に良心的なシステムですね。

注意すべきこと

会社法人番号の登記義務化

現行法では法人が登記名義人となる場合、会社法人番号の申請は任意でした。
しかし、改正法では、ある不動産について法人が所有権の登記名義人として記録されているのかを厳格に特定することが求められます。
そのため、所有権の登記名義人が法人である場合、会社法人等番号を登記しなければなりません。
【新法第73条の2第1項第1号】

施行日(令和8年4月1日)以前に住所変更があった場合も登記義務がある

これも相続登記の義務化と同様に遡及効があります。
ただし、本人が住所変更をしたことを知らない事態はあり得ません。
そのため、施行日以前に住所変更があった場合、施行日から直ちに登記義務の履行期間が起算されます。
【新法附則第5条第7項】

最後に

今回は不動産の住所変更登記の義務化について解説しました。
法務省の発出する資料は非常に難解で、専門知識の無い方では読解が難しいと言われています。
しかし、筆者のような浅学菲才の者でも根気よく読み込めば必ず理解できます。
今回の記事は以下の法務省のHPに掲載された文書を要約したものです。興味がある方は参照してみて下さい。
【参考資料:令和3年民法・不動産登記法改正、相続土地国庫帰属法のポイント】
なお、所在不明土地問題と相続登記の義務化については以下の記事で解説しています。よろしければこちらもご参照ください。

相続登記の義務化とは?

相続登記の義務化とは、令和6年4月1日から開始される新制度であり、従来は任意であった不動産の相続に伴う所有権移転登記を義務化するというものです。今回は法務省の…



今回は以上で終わります。
最後までご覧いただき、ありがとうございます。

この記事が住所変更登記の義務化について学びたいと考えていた方の参考になれば幸いです。

また、この他にも有益な情報を逐次投稿しております。よろしければ他の記事もご覧ください。
投稿記事 - 熊谷行政書士法務事務所 広島県広島市 (lo-kuma.com)

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【参考文献:不動産所有者の住所変更等の登記の義務化は2026年4月1日から | RSM汐留パートナーズ司法書士法人 (shiodome.co.jp)001401146.pdf (moj.go.jp)

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