農地を相続する場合の注意

農地を相続する場合は注意が必要です。
特に、相続人が複数人いる場合は気を付けてください。
なぜなら、安易に法定相続分による相続をしてしまうと後に面倒なことになるからです。
早計に決断することなく、まずは相続と農地法の専門家に相談することを推奨します。
今回は、農地を相続する場合の注意すべきことを解説します。

農地を相続する場合の注意点に悩む農家

農地を相続する場合の注意すべきこと

相続した以上は何らかの形で耕作に従事しなければならない

例えば、父が農業従事者、母は既に他界、子が2人兄弟の家庭を想定してみましょう。
兄弟は2人とも結婚し、それぞれ会社員として勤務しているものとします。農業の経験はほとんどありません。
このような場合に父が他界し、兄弟が農地を相続するとします。
相続による農地の所有権移転なので、3条許可は不要です。届出のみで簡単に手続きは完了します。
しかし、「親の残してくれた財産だから、今は使わないけど一応は保有しておこう」という感覚で相続すると後々で面倒なことになります。
農地法は、農地の所有者を現に農業をしている者または確実に今後農業に従事する者に限定しています。
老後の楽しみのために今から農地を所有したいという投機目的では農地は所有できません。
また、農業委員会は定期的に農地の巡回を行っています。明らかに耕作していないと判断された場合は指導される可能性もあります。

相続するかしないかは3カ月以内に決断が必要

上記の例であれば、兄弟のどちらかが会社を辞めて専業農家になるか、会社員を続けながら兼業農家に従事できれば何の問題もありません。
しかし、会社の地位や家庭事情もあるため、そのような決断を出すのは難しいでしょう。
ただ、相続するか相続放棄するかは相続開始から3カ月以内に確定しなければなりません。
3カ月という期間は極めて短いです。葬儀の準備等を加味すると一瞬で過ぎ去っていしまいます。決断は早急にしなければなりません。
また、令和5年4月から相続土地国庫帰属制度が始まりました。
ですが、これも少なからずお金の掛かる手続きです。選択には慎重な判断が必要です。
どうすればよいのか分からない場合は、司法書士や農地転用を専門とする行政書士に相談してみましょう。

農地は保有しているだけでも固定資産税がかかる

固定資産税は不動産を所有する全ての人が納付しなければならない税金です。
たとえ、使わない土地であっても所有していれば固定資産税は払わなければなりません。
農地の固定資産税は宅地と比べると安いのですが、それでも1000㎡あたり数千円から数万円は掛かります。
さらに、三大都市圏内の市街化区域内の農地であれば、宅地と同じ課税額となり数十万円は掛かります。
hoyuu_zeisei.pdf (maff.go.jp)(資料出典:農林水産省HP)
このような事実があるため、確実に自身が農業に従事することが無いのであれば安易に相続をすべきではないのです。

法定相続分で相続した後は基本的に許可を受けなければ譲渡できない

一度法定相続分で相続した後は、譲渡等をするには3条許可が必要です。
ただし、以下の場合のみ許可は不要となります。

  1. 自己の持分の放棄
    ただし、この場合は放棄した持分は共有者であるもう一方の相続人にしか継承させることは出来ません。
  2. 共同相続人間の持分の譲渡
    共同相続人間での譲渡のみ許可が不要になります。第三者に譲渡することは出来ません。
  3. 遺産分割
    法定相続分で相続した後にも遺産分割は可能です。この場合は相続開始時に遡って効果が発生します。当然ですが、相続の割合を仕切りなおす効果しかないため第三者に譲渡はできません。この手続きはかなり難しいため、司法書士に依頼する場合がほとんどだと思われます。相当な出費を覚悟しなければなりません。

このように、安易に法定相続分での相続をしてしまうと後々に面倒なことになり易いのです。

相続した後の対策

では、使用しない農地を相続してしまった場合はどうすることが望ましいのでしょうか。
代表的な解決策は、以下の3つになります。

農業委員会に農地が欲しい人を斡旋してもらう

農業委員会では農地の有効活用を促進するため、使用しない農地の斡旋をしている場合があります。
この制度を利用すれば、農業をしたい人に確実に農地を譲渡または貸借することが可能です。

農地中間管理機構に農地を買い取ってもらうか借りてもらう

農地中間管理機構とは、耕作しなくなった人と農地が欲しい人をマッチングさせる団体です。
この組織は農地の集約を目的としているため、買取を請求することも可能です。
農地中間管理機構:農林水産省 (maff.go.jp)

農地を借りたい人と直接に賃貸借契約を結ぶ

もし身近に営農希望者や農地の拡大を計画している農家の方がいるのならば、直接賃貸借契約を締結することも有効です。
農地は貸借権または使用貸借権を設定することが出来ます。この場合は3条許可に該当します。
賃借権は賃料の請求ができますが、貸主が農地の修繕の義務を負います。
使用貸借権は賃料を請求できませんが、農地の修繕の義務を負いません。
どちらを設定しても問題ありませんが、一般的には貸借権を設定する場合が多いかと思います。

最後に

今回は農地を相続する場合の注意すべきことついて解説しました。
農地法はあらゆる法律の中でも極めて難解な法律であると言われています。
相続財産の中に農地が含まれている場合は、農地専門の司法書士や行政書士と相談することを推奨します。

今回は以上で終わります。
最後までご覧いただき、ありがとうございます。

この記事が農地転用許可の取得を検討されている方の参考になれば幸いです。

また、この他にも有益な情報を逐次投稿しております。よろしければ他の記事もご覧ください。
投稿記事 - 熊谷行政書士法務事務所 広島県広島市 (lo-kuma.com)

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