農振地域でも非農地証明はできるのか?【広島県】
農振地域でも非農地証明はできるのでしょうか?
農振地域とは、今後10年以上にわたり農業を推進することを目的として指定された区域です。
5つある農地区分の中でも最高度の重要性で保護された区域です。極めて例外的な場合を除き、転用はできません。
なお、農地区分の細部については以下の過去記事で解説しています。気になる方は御参照ください。
農地区分とは? - 熊谷行政書士法務事務所 広島県広島市 (lo-kuma.com)
そして、非農地証明とは、既に農地とは言えなくなった土地を農地から除外する手続きです。
本来であれば農地の地目変更は4条許可をしなければできませんが、こちらは簡易的な手続きで地目変更が可能になります。
これは農地法上の根拠がある措置ではありません。行政サービスの一環として行われているものです。
では、農振地域のような保護された地域でも非農地証明が可能なのかという疑問が出てきます。
今回は、広島県内の全市町村にヒアリングを行い、その結果について取りまとめました。
なお、この調査結果は令和5年11月現在のものです。将来において運用が変更される可能性も十分にあることを御了承ください。
パターン分け
調査の結果、農振地域における非農地証明の取扱いについて以下のバターンに分類できることが分かりました。
A:可能である
B:自然潰廃(長期間の耕作放棄により原生林に回帰してしまっている状態のこと)の場合は可能である
C:不可能である
D:いずれにも分類できない
このうち、Bのパターンは人為的潰廃(無断転用後に長期間が経過し原状回復が困難になっている状態)の場合は非農地証明は難しいです。
この場合、まずは始末書等を準備したうえで事後許可を取得することが求められます。
むしろ、農地を無許可で転用することは農地法違反になるため、これが正規の方法です。
なお、始末書の概要については以下の記事で解説しております。気になる方は御参照ください。
市町村の取扱い
以下に各市町村をパターン分けした結果を列挙します。
名称 | 分類 |
広島市 | A |
呉市 | D |
竹原市 | B |
三原市 | A |
尾道市 | C |
福山市 | B |
府中市 | A |
三次市 | A |
庄原市 | A |
大竹市 | B |
東広島市 | C |
廿日市市 | B |
安芸高田市 | D |
江田島市 | B |
府中町 | C |
海田町 | C |
熊野町 | B |
坂町 | C |
安芸太田町 | A |
北広島町 | B |
大崎上島町 | B |
世羅町 | B |
神石高原町 | B |
補足
1 C判定の府中町、海田町、坂町についてはそもそも町内に農振地域が存在しないためC判定としています。
2 東広島市は非農地証明という制度自体を採用していないためC判定としています。冒頭でも述べましたが、非農地証明は法的根拠の無い行政サービスです。自治体によっては採用していない場合もあるのです。
ただ、東広島市の場合はかなり特殊で、非農地証明を採用しない代わりに以下の手順で地目変更ができます。
① 法務局で地目変更登記の申請をする
② 法務局から農業委員会へ地目の照会がされる
③ 農業委員会が現地調査を実施する
④ 現地が農地ではないと判断された場合は地目が変更される
なんと、通常とは順序が真逆なのです。(通常は4条許可または非農地証明で農地から除外した後に、法務局で地目変更登記の申請をします)
3 呉市と安芸高田市はD判定ですが、これは非農地証明と農振除外手続きを同時に申請しなければならないため分類不能としました(それは非農地証明の意味があるのか…?)
4 上記のパターンでAB判定であった市町村も、ほ場整備(公共投資で農地を整備すること)が過去にされた農地は非農地証明は困難であることが多いです。
5 非農地証明はあくまで地目を変更するだけの手続きなので、農振地域内の農地で非農地証明ができたとしても農振地域内の土地であることは変化はありません。そのため、建築物等の建築は農振地域から除外された後でなければできません。
最後に
今回は広島県内で農振地域内でも非農地証明ができる例について解説しました。
※注意すべきこととして、この調査結果はあくまでも当事務所が農地転用の研究目的で実施したものなので、実際に農振地域内の農地について非農地証明を申請する際は必ず所轄の農業委員会に相談して下さい。
今回は以上で終わります。
最後までご覧いただき、ありがとうございます。
この記事が農地転用許可の取得を検討されている方の参考になれば幸いです。
また、この他にも有益な情報を逐次投稿しております。よろしければ他の記事もご覧ください。
投稿記事 - 熊谷行政書士法務事務所 広島県広島市 (lo-kuma.com)
なお、業務に関するお問い合わせは、下記のお問い合わせフォームからいつでもどうぞ。
お問い合わせ - 熊谷行政書士法務事務所 広島県広島市 (lo-kuma.com