5条許可より3条許可が難しいのはなぜ?

5条許可より3条許可の方が難しいのはなぜか?
農地転用をするうえで、こういった疑問を持った方もいるのではないでしょうか。
5条許可とは、農地を農地以外にし、第三者に権利移転・権利設定する場合の許可です。
3条許可とは、農地を農地のまま第三者に権利移転または権利設定する場合の許可です。
この二つの決定的な違いは、農地が消滅するか持続するかにあります。
農地法の目的は、農地の管理をして国内の食物自給率を維持管理することです。農地が消滅する5条許可の方が申請の難易度が高いほうが妥当なように感じます。
しかし、現実は5条許可よりも3条許可の方が申請書の記載項目が多く、難しい構造になっています。
両者の記載項目を対比すると以下のようになります。

3条許可と5条許可の対比

農地法第3条申請書の書き方【広島市】 - 熊谷行政書士法務事務所 広島県広島市 (lo-kuma.com)
農地法第5条申請書の書き方【広島市】 - 熊谷行政書士法務事務所 広島県広島市 (lo-kuma.com)

明らかに3条許可の方が記載項目が多いですね。
少し不可解に感じる方も多いでしょう。
そこで、今回はなぜ5条許可よりも3条許可の方が難しいのかについて解説しました。

結論:3条許可は次の耕作者のオーディションを兼ねているから

まず結論を述べると、3条許可は譲受人の耕作能力等を総合的に判断するオーディションの場のような機能があるからです。
先述した通り、農地法の目的は農地の管理をして国内の食物自給率を維持管理することです。
そのため、譲受人が耕作者としての適性があるのかを判断する必要があります。
ここでいう耕作者としての適性を判断する要素が、資金力、国籍及び在留資格、農業に従事可能な人数、保有する農業機械、耕作する作物の種類、過去の転用違反の有無等です。
これらの要素が取得する農地の面積に比して過小な場合は耕作能力不足と判断されます。
たとえば、東京ドーム級の面積の農地を取得しようとする者がいたとします。
しかし、農業に従事可能な人数が2~3名、農業機械ゼロ、過去に転用違反で指導を受けたことがある状態ではどうでしょうか。
どう考えても耕作能力のキャパシティオーバーです。まともな営農は望めません。結果的に農地の潰廃を及ぼすことは目に見えています。
また、過去に転用違反をしているので農業委員会の信用も薄いでしょう。
なので、このような場合は許可の取得は難しいと言えるでしょう。

国籍の記載について

また、令和5年9月1日の規則改正により、譲受人の国籍も記載項目になっています。国籍の記載は3条許可のみの特性です。
なお、譲受人が法人の場合、役員、理事等、5%株主の全員の国籍を記載する必要があります。
なぜ国籍が必要なのかと思う方も多いと思います。
これは長期継続して営農が可能であること、在留資格に「経営」が含まれていることを確認するためであると解釈されています。
【根拠法令:農地法施行規則第11条6項

このように、3条許可は譲受人の詳細な情報まで判断されるので、審査が厳しいのです。

5条許可が比較的に簡単な理由

では、農地が消滅してしまう5条許可申請が比較的容易なっているのは何故でしょうか。
3条許可の審査が厳しくなるのは仕方ないとしても、5条許可が簡単になる理由までは説明ができません。
これには、農地法には農地の保護以外にもう一つの目的があるからです。
それは、「適正な都市開発を進めたい」という狙いです。
かつて、最初の農地転用許可基準が制定されたのは昭和34年(1959年)でした。東京タワーが完成する前年です。
この時代の日本は経済発展を優先するあまり、過剰な都市開発が行われていました。
そのため、無計画な農地転用が多く、都市の虫食い化が起きてしまうことがありました。
確かに、経済が発展するうえで工業の発展や都市部の拡大は必須です。
そこで、ある程度は農地の保護も維持しつつ、市街地の拡大も図る必要があります。市街地の中心部に農地が所在していると、効率的な経済活動に支障をきたすことは明らかです。
そのため、適正な都市開発を促進する目的達成のため、転用のハードル自体はそこまで高く設定されていないのです。

転用後は農地法の適用除外となる

また、農地を農地以外のものに変更する場合、変更後の土地は農地法の適用が除外されます。
そのため、許可にあたって譲受人の詳細な情報までは審査する必要が薄いと言えます。
とはいえ、当然ですが全く審査されないわけではありません。
譲受人が転用を行わずに放置すると、無駄に農地を潰廃させることになってしまいます。
なので、譲受人が確実に許可後に転用すること、過去に転用違反をしていないこと等が審査されます。
また、許可取得後も工事の着手、工事の途中経過の状況、工事完了の報告を求められることがあります。
これは、しっかりと計画通りに転用を行っているのかを自治体が把握するために必要なのです。

最後に

今回は5条許可よりも3条許可のほうが難しく設定されている理由について解説しました。
農地法は非常に複雑な法律です。深く理解するためには立法趣旨までも理解する必要があります。

今回は以上で終わります。
最後までご覧いただき、ありがとうございます。

この記事が農地転用許可の取得を検討されている方の参考になれば幸いです。

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