農地転用の届出【広島市】

農地転用の届出は、農地転用は実施するが許可をするまでもない場合に必要な手続きです。
本来、農地を農地以外の地目に変更する場合や他人に譲渡する場合は、原則として許可申請が必要です。
しかし、例えば相続や包括遺贈及び時効取得で所有権を取得した場合は許可ではなく届出のみで可となります。
なぜなら、これらは法律上当然に権利が移転するものであり、国家の許可は必要無いのです。
ただ、農地の面積や所有者の所在は自治体ごとに掌握しておく必要があるため、届出によって通知する必要があります。
また、農地が市街化区域に所在している場合も許可ではなく届出のみで可となります。
これは、市街化区域は積極的に市街化を促進しようとする地域なので、手続きを簡易化することでより市街化を加速させる意図があるためです。

ちなみに、少し脱線しますが、許可と届出は法律上以下の違いがあります。
許可:許可権者にお伺いを立てて「やってもいいよ!」と許しを貰うこと。当然ですが、許可を貰えなければ絶対にその行為は出来ません。また、許可要件に該当しない場合は不許可になります。自動車運転免許等がこれ該当します。
届出:ただの一方的な通知です。既に発生した事実を報告するという意味合いが強いです。

さて、少し前置きが長くなりましたが、今回は農地転用の届出のうち、3条、4条、5条に関係するものについて解説していきます。

目次

相続等による所有権移転の届出(3条届出)

これは相続、包括遺贈、時効取得、会社合併等で権利を取得した場合の書式です。
各種届出の中では一番分かりやすい内容です。
前所有者の権利を引き継ぐだけなので、用途地域の別を気にする必要もありません。
ただ申請書式に従って所要の事項を記載すれば容易に作成できます。

記載事項

記載事項は以下の通りです。

  1. 申請日
  2. 許可権者
  3. 届出者の住所、国籍及び在留資格・特別永住者の別、氏名、電話番号
  4. 届け出る農地について「どのような事象」よって「何を」取得したのか
  5. 届け出る農地の所在、地番、地目、面積、利用状況
  6. 権利取得日
  7. 権利取得事由
  8. 取得した権利の種類及び内容
  9. 農業委員会による斡旋の希望の有無

フォーマット

フォーマットは以下のリンクから参照できます。

相続による所有権移転の届出
220442.doc (live.com)【広島市HP】

作成方法

申請日

ここは空欄のまま提出しましょう。

許可権者

申請地を所轄する農協委員会会長を記載します。

届出者の住所、国籍及び在留資格・特別永住者の別、氏名、電話番号

届出者の住所は住民票に記載されている通り一字の差異無く転記します。
なお、法人の場合は登記簿に記載されている通りに記載して下さい。
また、所有者が複数人いる場合はその全員分の情報及び各人の持分も記載しましょう。

届け出る農地について「どのような事象」よって「何を」取得したのか

ここはいわゆる主文と呼ばれる個所です。

【下記農地(採草放牧地)について、「    」により「     」を取得したので、農地法第3条の3第1項の規定により届け出ます。】

上記の文書「 」の部分に必要な事項を記載します。相続によって所有権を取得したなら、「相続」と「所有権」が入ります。

届け出る農地の所在、地番、地目、面積、利用状況

ここに記載する項目は少し煩雑です。
以下、項目別に解説します。

土地の所在

ここには対象の農地の住所を記載します。
不動産登記簿に記載されている通りに、一字の差異無く転記して下さい。

地番

ここも不動産登記簿に記載されている通りに、一字の差異無く転記して下さい。

地目

ここには不動産登記簿上の地目と現状の地目を記載します。
登記簿上は畑でも、現状が宅地であったりする場合があるための処置です。

面積(㎡)

ここも登記簿上の面積を転記します。

その他の注意点

・余白部分には「以下余白」と記載します
・書ききれない場合は別紙を添付し「別紙の通り」と記載します。

権利取得日

ここは相続であれば被相続人が死去した年月日を記載します。
注意すべき事項として、時効取得の場合は占有開始時の年月日になります。

権利取得事由

ここには前所有者の住所及び氏名を記載し、次に取得した理由を記載します。

取得した権利の種類及び内容

ここには権利の種類(所有権等)と耕作の状況(現に耕作をしているか、使用収益権を設定しているか)を記載します。

農業委員会による斡旋の希望の有無

相続等によって農地の所有権を取得した場合、相続人が農業に関係しない職業である場合は手に余る場合も考えられます。
そのような場合は、希望すれば農業委員会が農地を欲しがっている人を斡旋してくれます。
希望する場合は「希望する」、しない場合は「無し」と記載しましょう。

市街化区域内の農地の地目変更の届出(4条届出)

これは市街化区域内の農地を宅地等に変更する場合の書式です。
前提として、市街化区域に該当するかを農地ナビで確認しましょう。
ただし、このサイトは官営ではないため、必ずしも最新の情報であるとは限りません。
最終的には役所の農政課等に相談することを推奨します。
eMAFF農地ナビ - 条件から探す

記載事項

記載事項は以下の通りです。

  1. 申請日
  2. 許可権者
  3. 届出者の住所、氏名、電話番号
  4. 届け出る農地の所在、地番、地目、面積、耕作者、転用計画、転用により生じる付近の農地への影響への防除措置

フォーマット

フォーマットは以下のリンクから参照できます。

第4条の届出書
220437.xls (live.com)【広島市HP】

作成方法

申請日

ここは空欄のまま提出しましょう。

許可権者

申請地を所轄する農協委員会会長を記載します。

届出者の住所、氏名、電話番号

届出者の住所は住民票に記載されている通り一字の差異無く転記します。
なお、法人の場合は登記簿に記載されている通りに記載して下さい。

届け出る農地の所在、地番、地目、面積、耕作者、転用計画、転用により生じる付近の農地への影響への防除措置

ここに記載する項目は少し煩雑です。
以下、項目別に解説します。

土地の所在

ここには対象の農地の住所を記載します。
不動産登記簿に記載されている通りに、一字の差異無く転記して下さい。

地番

ここも不動産登記簿に記載されている通りに、一字の差異無く転記して下さい。

地目

ここには不動産登記簿上の地目と現状の地目を記載します。
登記簿上は畑でも、現状が宅地であったりする場合があるための処置です。

面積(㎡)

ここも登記簿上の面積を転記します。

耕作者の氏名住所

ここはほぼ現所有者の氏名住所になるかと思います。
ただし、現状が休耕地であれば記載は不要です。

転用計画

ここには以下の3点を記載します。

転用の目的

ここには転用後の地目を記載します。

転用の目的に係る事業又は施設の概要

ここは転用後に構築される建造物等の緒元を詳細に記載します。
例:階数、棟数、木造か鉄筋か、各階の面積及び延べ面積

転用の時期

ここには工事着工予定日と完了予定日を記載します。

転用により生じる付近の農地への影響への防除措置

届出の場合は防除措置計画書は原則として必要ありませんが、自治体によっては提出を求められることがあります。

市街化区域内の農地の地目変更及び所有権移転等の届出(5条届出)

これは市街化区域内の農地を宅地等に変更し、かつ所有権移転等する場合の書式です。
前提として、市街化区域に該当するかを農地ナビで確認しましょう。
ただし、このサイトは官営ではないため、必ずしも最新の情報であるとは限りません。
最終的には役所の農政課等に相談することを推奨します。
eMAFF農地ナビ - 条件から探す

記載事項

記載事項は以下の通りです。

  1. 申請日
  2. 許可権者
  3. 譲受人及び譲渡人の住所、氏名、電話番号
  4. 届け出る農地の所在、地番、地目、面積、耕作者、転用計画、契約内容、転用により生じる付近の農地への影響への防除措置

フォーマット

フォーマットは以下のリンクから参照できます。

第5条の届出書
220439.xls (live.com)【広島市HP】

作成方法

申請日

ここは空欄のまま提出しましょう。

許可権者

申請地を所轄する農協委員会会長を記載します。

譲受人及び譲渡人の住所、氏名、電話番号

届出者の住所は住民票に記載されている通り一字の差異無く転記します。
なお、法人の場合は登記簿に記載されている通りに記載して下さい。
また、複数人いる時は全員分の情報及び持分を記載します。

届け出る農地の所在、地番、地目、面積、耕作者、転用計画、契約内容、転用により生じる付近の農地への影響への防除措置

ここに記載する項目は少し煩雑です。
以下、項目別に解説します。

土地の所在

ここには対象の農地の住所を記載します。
不動産登記簿に記載されている通りに、一字の差異無く転記して下さい。

地番

ここも不動産登記簿に記載されている通りに、一字の差異無く転記して下さい。

地目

ここには不動産登記簿上の地目と現状の地目を記載します。
登記簿上は畑でも、現状が宅地であったりする場合があるための処置です。

面積(㎡)

ここも登記簿上の面積を転記します。

耕作者の氏名住所

ここはほぼ現所有者の氏名住所になるかと思います。
ただし、現状が休耕地であれば記載は不要です。

転用計画

ここには以下の3点を記載します。

転用の目的

ここには転用後の地目を記載します。

転用の目的に係る事業又は施設の概要

ここは転用後に構築される建造物等の緒元を詳細に記載します。
例:階数、棟数、木造か鉄筋か、各階の面積及び延べ面積

転用の時期

ここには工事着工予定日と完了予定日を記載します。

契約内容

ここには権利移転または権利設定しようとする契約の内容を記載します。
また、所有権以外の使用貸借権の場合は存続期間も含めて記載します。

転用により生じる付近の農地への影響への防除措置

届出の場合は防除措置計画書は原則として必要ありませんが、自治体によっては提出を求められることがあります。

最後に

農地法3条、4条、5条の届出書は記載事項はあっさりしています。しかし、許認可申請に慣れた方でなければ難しく感じるでしょう。
自分だけで作成するのが困難であれば、行政書士やハウスメーカーと相談してみましょう。

今回は以上で終わります。
最後までご覧いただき、ありがとうございます。

この記事が農地転用許可の取得を検討されている方の参考になれば幸いです。

また、この他にも有益な情報を逐次投稿しております。よろしければ他の記事もご覧ください。
投稿記事 - 熊谷行政書士法務事務所 広島県広島市 (lo-kuma.com)

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