農地転用の許可が不要なケースとは?

農地を住宅や店舗、駐車場として利用したい場合、通常は「農地転用許可」が必要です。しかし、すべての農地に許可が必要なわけではありません。
実は例外として「市街化区域内の農地」であれば、許可を受けずに転用が可能になるケースがあります。
本記事では、行政書士として農地転用業務を数多く手がけてきた視点から、「農地転用許可が不要な場合」について詳しく解説します。


農地転用とは?

農地転用とは、田や畑などの農地を、住宅や商業施設、駐車場などの用途に変更することを指します。
農地法では原則として、農地を転用するには都道府県知事または農林水産大臣の許可が必要とされています。

農地の転用の制限)
第4条

  1. 農地を農地以外のものにする者は、政令で定めるところにより、都道府県知事の許可(4ヘクタールを超える場合には、農林水産大臣の許可)を受けなければならない。ただし、次の各号のいずれかに該当する場合は、この限りでない。

農地法第4条 - Wikibooks (意訳)


この許可制度は、農地を守るために設けられた重要なルールです。

しかし、いくつかの例外があり、許可が不要な場合も存在します。その代表的な例が「市街化区域内の農地」を転用するケースです。


許可が不要なケースとは?

農地法第5条第1項但書には、市街化区域内にある農地を転用する際には、届出のみで足りる旨が規定されています。
この場合、「農地転用許可」は不要となり、届出だけで転用が可能です。

届出制が適用されるのは以下の要件を満たすときです。

  • 転用予定地が都市計画法に基づく「市街化区域」内にあること
  • 登記簿上の地目が「田」「畑」であること
  • 使用目的が農地以外であること(住宅、倉庫、駐車場など)

この届出は市町村経由で都道府県知事に提出する形になります。審査は形式的で、書類不備がなければ通常10日ほどで受理証が交付されます。


市街化区域とは?

市街化区域とは、都市計画法に基づき「今後10年以内に優先的かつ計画的に市街化を図る区域」として指定された地域を指します。
都市の発展を目的としたエリアであり、インフラ整備や開発が積極的に進められる地域です。

対照的に「市街化調整区域」は、自然環境の保護や農地の確保を目的とした区域であり、建物の建築や農地転用には非常に厳しい制限が課されています。
このように、市街化区域と市街化調整区域とでは、農地転用における対応が大きく異なります。


市街化区域かどうかを確認する方法

転用したい土地が市街化区域にあるかどうかを知るには、以下の方法があります:

  1. 役所に問い合わせる
     お住まいの市町村の都市計画課や農業委員会に電話・窓口で確認可能です。
     地番が分かれば電話だけでも判定してもらえることがあります。
  2. 都市計画図を閲覧する
     市町村のホームページに「用途地域図」や「都市計画図」が公開されている場合があります。
  3. 民間サイトを活用する
     MapExpert(https://www.mapexpert.net/)などで全国の都市計画区分を簡易的に確認可能です。
     ただし、民間サイトなので最終確認は必ず役所で行いましょう。

許可と届出の違い

比較項目許可(農地法第5条)届出(市街化区域内)
手続内容事前の審査・許可取得が必要書類提出のみ
審査期間数週間〜数ヶ月約10日程度
不許可リスクありほぼなし(形式審査のみ)
難易度

農地転用許可には、地元の農業委員会や農業振興地域制度との調整など、複雑な要素が絡みます。
一方、市街化区域での届出は、基本的に書類の確認のみで完了します。


実務経験に基づくアドバイス

熊谷行政書士法務事務所では、広島市内を中心に数多くの農地転用手続をお手伝いしてきました。
たとえば、広島市南区で住宅建設を目的とした転用を行った際は、市街化区域であったため届出のみで完了し、10日後には受理証が発行されました。
許可申請に比べて事務的負担が少なく、着工までの期間を大幅に短縮することができました。


まとめ

  • 農地を農地以外に利用するには原則「農地転用許可」が必要
  • ただし、「市街化区域内の農地」の場合、許可不要で届出のみで転用可能
  • 許可申請と比べて手続きが簡単で早く、リスクも少ない
  • ただし、無届出で転用することはできず、必ず届出が必要
  • 転用地が市街化区域内かどうかは、役所で確認するのが確実

最後に

今回は農地転用届出について解説しました。

今回は以上で終わります。
最後までご覧いただき、ありがとうございます。

この記事が農地転用許可の取得を検討されている方の参考になれば幸いです。

また、この他にも有益な情報を逐次投稿しております。よろしければ他の記事もご覧ください。
投稿記事 - 熊谷行政書士法務事務所 広島県広島市 (lo-kuma.com)

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