経営経験確認資料の集め方【建設業】

経営経験確認資料は建設業許可申請で必要な確認資料の一つです。
この資料は準備するのが大変なので、早めに準備に取り掛かることが重要です。

※この記事は「架空の建設業者を想定して、実際にロールプレイ形式で申請書類を作成する」という企画の第24回目です。
あまりにもタイトルが冗長になってきたため改称しました。
なお、前提条件は第1回から変化ありません。
まずは、以下の第1回の前提条件を確認してからこの記事を読み進めることを推奨します。
①:【建設業】申請書書類作成演習:①許可申請書

また、これまでのアーカイブは以下のリンクから参照できます。
閲覧書類編:閲覧書類【建設業】 アーカイブ
確認書類編:確認書類【建設業】 アーカイブ

目次

1 必要となる場合

新規、業種追加、般特新規、追加更新の場合に必要となります。
ただし、常勤役員等に変更がなく、かつ経験を従前の申請書等で確認できる場合は、業種追加、般特新規、法人成り新規に限り省略可能です。

2 経営業務確認資料の目的

経営業務の管理責任者(以下、経管と呼称)はただの従業員ではありません。
何らかの役員クラスの職域にいる人間のみが経営業務経験があるものとして認められます。
そのため、公的資料等で役員等の経験を証明します。
経営経験確認資料の収集作業では、こちらの方がメインの資料になります。

3 経営業務経験の証明のための資料

規則第7条第1号イ(1)に該当する場合

経管が個人事業主で5年以上の経験がある場合

これは一人親方で既に5年以上建設業関係の仕事をしている人が経管になる場合です。
必要な書類は以下の通りです。

  1. 建設業許可通知書の写し
  2. 所得税の確定申告書の写し(職業欄に建設業の記載があるもの)
  3. 契約書または注文書の写し(建設工事であることが分かるもの)
  4. 2か3が提出できない場合は発注証明書

建設業許可通知書の写しは更新、業種追加、般特新規、追加更新の場合に提出することになります。
新規の場合は当然ですが許可通知書は無いので2~4のどれかを経験年数分準備します。
なお、広島県の場合は必要年数5年の場合は直近の1、3、5年分を各1件ずつ準備すれば証明できます。
※ここでいう直近とは年度計算ではなく経験期間の末日から起算した直近年数です。
また、2~4は組み合わせて提出することが出来ます。

経管が法人の常勤役員で5年以上の経験がある場合

これは上記の個人事業主の場合と確認資料はほぼ同じです。
ただ、上記の「所得税の確定申告書」の部分を「法人税の確定申告書」に読み替えればいいだけです。
それ以外は全く同じです。

経管が個人の支配人で5年以上の経験がある場合

これも上記の個人事業主の場合と確認資料はほぼ同じです。
ただ、「支配人登記の登記事項証明書」を追加すればいいだけです。
それ以外は全く同じです。

経管が支店長または営業所長の経験で5年以上の経験がある場合

建設業法上の営業所長(支店長)の経験の場合

1 建設業許可申請書のうち、以下の書類
・営業所一覧表(新規または更新)
・令3条使用人一覧表
2 変更届出書のうち、令3条使用人一覧表
上記1と2の必要期間分の準備が必要です。

建設業法上の営業所以外の営業所長(支店長)の経験の場合

「建設業法上の営業所以外の営業所」が分かりにくい表現なので解説します。
要するに「許可を取得していないが、建設業を営んでいる」営業所です。請負代金500万円以下の軽微な工事専門の営業所のことですね。間違っても不動産業などの兼業部門の営業所のことを指しているのではありません。

この場合、必要書類は契約書と注文書の写しのみです。

規則第7条第1号イ(2)に該当する場合

経管が執行役員で5年以上の経験がある場合

これに関しては、広島県では必要資料が公開されていないため言及しません。ご容赦願います。
細部の理由については「経営業務管理責任者の法7条1号ロの要件について 」で解説しています。

規則第7条第1号イ(3)に該当する場合

経管が副支店長または副営業所長で6年以上の経験がある場合

この要件は認められる条件が非常に限定されています。
なぜなら、基本的に経管の経験は役員等の経験を前提としているため、補佐者としての経験は例外的な場合のみに認められているからです。経営経験確認資料の収集作業では最も厳しい条件です。
以下、各パターン別に具体例を記載しておりますので参考にしてください。

個人規模に近いの法人の場合

具体例

小規模会社の経管が死亡し、役員である子など補佐経験を認めなければ廃業してしまう等の特例的な救済が必要な場合

必要書類
  1. 戸籍謄本
  2. 使用者の申立書(補佐の職務内容を具体的に記載する)
  3. 組織図
  4. 建設業に関して以下のいずれか
    (1)建設業許可通知書の写し
    (2)所得税の確定申告書の写し
    (3)契約書または注文書の写し
    (4)上記(1)または(2)が提出できない場合は発注証明書
    なお、(1)のみによる場合は6年分、(2)~(4)の場合は直近1、3、5、6年分が必要です。

中規模の法人の場合

具体例

中規模会社の経管が死亡し、その会社の部長等を役員とする等、補佐経験を重視し経管と同様の経験を厳格に求める場合

必要書類
  1. 使用者の申立書(補佐の職務内容を具体的に記載する)
  2. 組織図
  3. 取締役会議事録+登記事項証明書(必要年数分)、または当時の役員の過半数の申立書+登記事項証明書(必要年数分)
  4. 建設業に関して以下のいずれか
    (1)建設業許可通知書の写し
    (2)所得税の確定申告書の写し
    (3)契約書または注文書の写し
    (4)上記(1)または(2)が提出できない場合は発注証明書
    なお、(1)のみによる場合は6年分、(2)~(4)の場合は直近1、3、5、6年分が必要です。

個人事業主が死亡し、補佐者が承継する場合

具体例

個人事業主が死亡し補佐者が継承する等、補佐経験を認めなければ廃業してしまうため特例的な救済が必要な場合

必要書類
  1. 本人の申立書(補佐の職務内容を具体的に記載する)
  2. 戸籍謄本
  3. 建設業に関して以下のいずれか
    (1)建設業許可通知書の写し
    (2)所得税の確定申告書の写し
    (3)契約書または注文書の写し
    (4)上記(1)または(2)が提出できない場合は発注証明書
    なお、(1)のみによる場合は6年分、(2)~(4)の場合は直近1、3、5、6年分が必要です。

個人事業主が死亡し、補佐者が承継する場合

具体例

健全な事業主から独立して子が事業を開始する場合など、補佐経験を重視し経管と同様の経験を厳格に求める場合

必要書類
  1. 使用者の申立書(補佐の職務内容を具体的に記載する)
  2. 戸籍謄本
  3. 所得税の確定申告書(事業専従者欄に記載があるもの)の写し
  4. 上記3が提出できない場合、理由を記載した申立書及び以下のいずれか
    (1)建設業許可通知書の写し
    (2)契約書または注文書の写し(建設業であることが確認できるもの)
    (3)上記(1)または(2)が提出できない場合は所定様式の発注証明書
    なお、(1)のみによる場合は6年分、(2)~(3)の場合は直近1、3、5、6年分が必要です。

役員等の経験:規則第7条第1号ロ(1)に該当する場合

さて、ここからは役員+補佐人の最低2人以上で許可を取得する場合です。
必要資料は更に増加します。

建設業に関わる役員経験の場合

法人の役員等

登記事項証明書(建設業であることが分かるもの、必要年数分)

個人事業主

所得税の確定申告書(建設業であることが分かる事業所得申告書、必要年数分)

建設業に関わる役員に次ぐ職制上の地位の経験の場合

これは取締役を直接補佐していた部長等が該当します。ただし、財務管理・労務管理・業務運営を担当した経験に限定されます。
必要資料は以下の通りです。

  1. 使用者の申立書
  2. 組織図
  3. 業務分掌規程等の担当した業務内容が分かるもの
  4. 人事発令書(経験した期間が分かるもの)

役員等の経験:規則第7条第1号ロ(2)に該当する場合

建設業に関わる役員経験の場合

法人の役員等

登記事項証明書(建設業であることが分かるもの、必要年数分)

個人事業主

所得税の確定申告書(建設業であることが分かる事業所得申告書、必要年数分)

建設業以外に関わる役員経験の場合

法人の役員等

登記事項証明書(必要年数分)

個人事業主

所得税の確定申告書(事業所得)

補佐人の経験:規則第7条第1号ロ(1)(2)に該当する場合

常勤役員等を直接補佐する者であることの証明資料

  1. 組織図(申請時点)
  2. 業務分掌規程(申請時点)

当該建設業者での経験であることの証明資料

  1. 組織図(経験期間分)
  2. 業務分掌規程(経験した期間分で業務内容が確認できるもの)
  3. 雇用期間が確認できる公的資料
    例:健康保険被保険者証(法人名と資格取得年月日が確認できるもの)+直近の社会保険標準報酬決定通知書の写し

社会保険標準報酬決定通知書とは以下のような書類です。

経営経験確認資料

 また、健康保険被保険者証も個人情報保護のため記号、番号、枝番、保険者番号については黒塗り等で視認できないようにして提出してください。

最後に

経営経験確認資料の収集が大変な理由が何となくご理解いただけたのではないでしょうか。経営経験確認資料の収集は建設業許可の取得において極めてウェイトの大きい作業です。可能な限り早期に準備に着手しましょう。
そして、これから許可を取得することがある場合は、経営経験確認資料をいつでも準備できるように上記の資料については5~6年分は処分せずに保管するようにしましょう。

今回は以上で終わります。
最後までご覧いただき、ありがとうございます。

次回は、常勤性の確認資料を解説する予定です。

この記事が建設業許可の取得を検討されている方の参考になれば幸いです。

また、この他にも有益な情報を逐次投稿しております。よろしければ他の記事もご覧ください。
投稿記事 - 熊谷行政書士法務事務所 広島県広島市 (lo-kuma.com)

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