工事経歴書(経審なし)の書き方【建設業】

工事経歴書(経審なし)は建設業許可申請において必要な閲覧書類の一つです。
この記事は「架空の建設業者を想定して、実際にロールプレイ形式で申請書類を作成する」という企画の第4回目です。

今回は前回作成した申請書類の続きから作成していきます。

なお、前提条件は第1回から変化ありません。
まずは、以下の第1回の前提条件を確認してからこの記事を読み進めることを推奨します。
①:【建設業】申請書書類作成演習:①許可申請書

また、これまでのアーカイブは以下のリンクから参照できます。
閲覧書類編:閲覧書類【建設業】 アーカイブ
確認書類編:確認書類【建設業】 アーカイブ

1 工事経歴書(経審なし)の概要

工事経歴書(経審なし)の記載事項は以下の通りです。

  1. 建設業の種類
  2. 税込み、税抜きの別
  3. 注文者
  4. 元請または下請けの別
  5. JVの別
  6. 工事名
  7. 工事現場のある都道府県及び市区町村名
  8. 配置技術者の氏名、主任技術者または監理技術者の別
  9. 請負代金の別
  10. 工期(着工年月及び完成または完成予定年月)
  11. 工期(着工年月及び完成または完成予定年月)
  12. 小計額及び件数、合計額及び件数
  13. 小計額及び合計額のうち、元請工事の金額

実際のフォーマットは以下の通りです。

工事経歴書

481868.xlsx (live.com)【広島県HP】

2 工事経歴書(経審なし)の作成要領

※注意

この書式は重要なルールがあるため、細部の作成要領を記載する前に必ず先に以下のルールを確認してください。以下のルールから外れた記載をした場合はやり直しになります。

  1. 許可を受けようとする建設工事の種類ごとに1枚ずつ記入する。他種の建設工事が1枚の用紙に混在してはいけない。
  2. まず、申請日の前の事業年度に完成した工事について記載し、その後に未成工事を記載する。
  3. 各工事の記載順序は請負金額の大きい順から記載する。
  4. 工事実績がない場合は「実績なし」と記載する。
  5. 創業したばかりで決算未到達の場合は「決算未到達」と記載する。

2-1 建設工事の種類

ここには許可を受けようとする建設工事の種類を記載します。
今回の事例では「内装工事」です。

2-2 税込み、税抜きの別

ここにはどちらかに該当するものに〇を付けます。
注意すべきこととして、どちらを選んでも良いのですが、後に登場する「財務諸表」に合わせてください。
今回の事例では「税抜き」を選択します。

2-3 注文者

ここには請け負った契約ごとに契約の相手方の商号または名称を記載します。
例えば、下請け契約であればこの場合は元請会社の名前を記載します。顧客から直接請負った契約であれば顧客の名前を記載します。
ただし、注意すべきこととして、個人が特定できないように記載しなければなりません。
例えば、顧客が「A山B男」だった場合、フルネームではなく「A山」とだけ記載します。
今回の事例では下請けで1件、元請で2件(内1件は未成工事)という想定で記載します。

2-4 元請または下請の別

これは単に「元請」か「下請」のどちらかを記入するだけです。簡単ですね。

2-5 JVの別

JV(共同企業体:ジョイント・ベンチャー)とは、建設企業が単独で受注及び施工を行う通常の場合とは異なり、複数の建設企業が、一つの建設工事を受注、施工することを目的として形成する事業組織体のことを言います。
資金力・技術力・労働力などから見て、一企業では請け負うことができない大規模な工事・事業を複数の企業が協力して請け負うことを目的としています。
この欄はJVとして実施した場合のみ「JV」と記載します。
今回の事例では関係ないので何も記載しません。

2-6 工事名

ここは請負契約書の工事名等を記載します。ただし、発注者個人の氏名を特定されることの内容に注意しましょう。
今回の事例では「乙マンションのインテリア工事」「A邸インテリア工事」「B邸インテリア工事」の3件を実施したものとして記載します。

2-7 工事現場のある都道府県及び市区町村名

これは「〇〇県○○市」のように記載します。
非常に簡単ですね。特にこれ以上の解説は必要ないかと思います。

さて、一旦ここまでの情報を実際に記載すると以下のようになります。

工事経歴書

これだけで表の左半分が完成しました。
ここまでは特に難しいことは無いかと思います。
さて、次からは記載要領が少しややこしくなります。

2-8 配置技術者の氏名、主任技術者または監理技術者の別

ここは完成した工事について、現場に配置した監理技術者または主任技術者の別を記載します。未成工事の場合は記載不要です。
なお、工事の途中で配置技術者に変更があった場合は、その全員を記載する必要があります。

また、工期の全期間で当該業種の許可を保有していなかった場合は、そもそも記載不要です。
え?どういうこと?と思われた方もいると思うので解説します。
建設業許可が必要となるのは、原則として請負金額が500万円を超える場合です。
そして、配置技術者を配置することが義務付けられるのは建設業許可を保有する業者のみです。
つまり、金額500万円未満の工事は建設業許可が無くても施工できるため、配置技術者がそもそも必要無いという意味です。

今回の事例では初めて許可を取得する場合を想定しているため、何も記載しません。

2-9 請負代金の額

ここには、各工事の請負代金をそのまま記載します。
なお、記載単位が「千円」となっているため注意しましょう。
契約変更により金額が変わった場合は、変更後の金額を記載します。
また、工事の中に「PC」「法面処理」「鋼橋上部」が含まれている場合は、各業種のどれかに〇を付け、その内訳金額を記載します。
とはいえ、これは土木一式、とび・土木、鋼構造物のどれかに属する工事の場合のみ該当します。
なお、事業年度を跨いで実施中の工事については、
○○千円(当期に発生した金額)
○○〇〇千円(全体の金額)
というように行を分けて記載します。
今回の事例では該当しないため空欄とします。

2-10 工期(着工年月及び完成または完成予定年月)

ここでは左欄に実際に着工した年月(契約した日ではない)、右欄に実際に完成した年月を記載します。未成工事の場合は完成予定年月を記載します。

2-11 小計額及び件数、合計額及び件数

小計額とは、各ページごとの完成工事の件数及び合計額を記載します。
合計額とは、全工事の合計額を記載します。ページが複数枚ある場合は最終ページの合計額欄にのみ記載します。
なので、1ページで収まる場合は小計額と合計額及び各工事件数は一致します。

2-12 小計額及び合計額のうち、元請工事の金額

これは、小計額または合計額のうち、元請金額の合計を左欄に記載します。
また、そのうち「PC」「法面処理」「鋼橋上部」が含まれている場合は、その金額の合計を右欄に記載します。


さて、ここまでを実際に記載すると以下のようになります。

工事経歴書

これでようやく工事経歴書(経審なし)が完成しました。
今までの書式と比べると情報量が桁違いに多いですね。
この書式は許可の成否に直結する非常に重要なものです。窓口で誤りを指摘されてもその場で修正がしにくいものなので、しっかりと誤記がないか確認しつつ作成しましょう。

さて、勘の良い読者ならきっとこのように思われたことでしょう。
「工事経歴書(経審なし)という書式名ならば工事経歴書(経審あり)もあるのか?」と。
はい、その通りです。
ただ、工事経歴書(経審あり)は今回の想定とは関係ないのと、作成要領が異なるため、また別の機会に解説します。

今回は以上で終わります。最後までご覧いただき、ありがとうございます。
次回は「直近3年の各事業年度の工事施工金額」を作成する予定です。


この記事が建設業許可の取得を検討されている方の参考になれば幸いです。

また、この他にも有益な情報を逐次投稿しております。よろしければ他の記事もご覧ください。
投稿記事 - 熊谷行政書士法務事務所 広島県広島市 (lo-kuma.com)

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