【道路占用許可?】福岡にバナナおじさん登場?

今回はまた面白いニュースを見つけたため紹介&解説します。

なお、今回の記事は自分の個人的な主観が大いに反映されているため、正確性は100%です。

福岡県久留米市の市道の中央分離帯に勝手にバナナを植樹したとして、とある男性が市から伐採を求められています。

ニュース画像を見ると、中央分離帯に青々とモンキーバナナが実っているシュールな画像が見られます。
近隣の住民は「かわいくていいじゃん(呑気)」という反応のようです。
確かに見た目は美しいので景況が良くなっていることは否定できません。
しかし、道路を使用するドライバーからすると良いことばかりではありません。
そう、「バナナが視界を封じるから伐採して欲しい」と市民から苦情が寄せられたのです。
役所の職員も「はぁ?中央分離帯にバナナ?何言ってるの?」と困惑したと思います。
このバナナは近隣住民の男性が無許可で植樹したものだったからです。行政が植樹したものではないのです。


なぜ?福岡県久留米市の中央分離帯にバナナ! 「市に許可なく」植えた人は(2023年10月3日掲載)|FBS NEWS NNN (ntv.co.jp)

バナナを植樹した男性の言い分は?

当然ですが、役所は勝手に植樹した男性(以下、バナナおじさんと呼称)に対し伐採を要請します。
しかし、何故かバナナおじさんはこれを断固拒否しているため問題となっています。

FNNがバナナおじさんにインタビューをした映像を要約すると以下のようになります。

Q:なぜバナナを植樹した?
A:中央分離帯がゴミの不法投棄で汚かった。バナナで“緑”にすれば良いと思った(意味不明)

Q:市に許可は取ったのか?
A:取ってませんよ(威風堂々)

Q:なぜ市の伐採要求に従わないのか?
A:毎日自分が手入れしている。交通の邪魔にはなっていない(唯我独尊)

自分も映像を何回か視聴しましたが、結局なぜバナナを植樹したのかについては最後まで理解できませんでした。

今後の行政側の対応は

今後、予想できる行政側の対応を考察します。
まず、バナナおじさんに対し伐採するように行政指導をし、従わないのなら代執行で強行撤去することができます。
そして、その後に強制撤去の費用を全額バナナおじさんに請求することもできます。
また、道路を不法占有しているのですから、当然に違法です。
バナナおじさんを直接的に検挙することも考えられます。
どの道、バナナおじさんに勝算はほぼ無いでしょう。

バナナおじさんはどう処置すべきだったのか?

さて、上記のことから今回は勝機の薄いバナナおじさんですが、法律的な観点から、どのように対処すれば許されたのかについて考察します。

案① ちゃんと道路使用・占用許可を事前に取る

正攻法でバナナおじさんが勝つにはこれが最強の手段です。
事前に警察と役所の両方から許可を取っていれば、少なくとも伐採を命ぜられることはまずありません。
あったとしても占有物管理者として枝葉の除去を命ぜられるくらいでしょう。

ただし、この方法には致命的な欠陥があります。
それは、「道路占用許可が認められるわけがない」ということです。
まず、このバナナはバナナおじさんの所有物なので、街路樹(公共用物)ではありません。
自分の所有物を市の土地に勝手に植樹しようということなので、道路占用許可はまず下りないでしょう。
電線工事でもなければ交通標識看板の設置でもなく、ただの観葉植物を植えるためにあなたの土地を使わせろと言われて許可する者はいません。
これに対して、道路使用許可が下りる可能性は全くのゼロではないと思います。
「映画のロケでバナナを植樹するシーンを撮りたい」と言えば筋は通ります。
ただし、この場合は撮影後に植樹したバナナは撤去して原状回復させなければいけません。
道路使用許可は、一時的な作業の許可であるため、半永久に形が残るものを設置し続けることを許可するものではないからです。
結論として、結局はバナナを撤去しなくてはならないためバナナおじさんに勝算はなさそうです。

案② 市の土地を時効取得する

市の土地を個人が時効取得することなんてできるのかという点ですが、結論から言えば可能です。
読者の皆様が親の顔より見慣れたであろう超有名判例「最判昭51.12.24」では、公共用財産でも時効取得が可能であると判決されています。
平穏公然と20年間以上にわたり土地を占有して時効取得してしまえば、土地ごとバナナおじさんの所有物となります。
この場合はバナナおじさんの完全勝利と言えるでしょう。
なお「最判昭51.12.24」は以下のリンクから参照できます。
裁判例結果詳細 | 裁判所 - Courts in Japan

しかし、この方法も致命的な欠陥があります。
それは、「明らかに長期間放置されて公共用に適さなくなったものでなければ時効取得できない」という点です。
「最判昭51.12.24」は、登記上は市の水路であったが実際は個人の農地として使用されており、実質的に行政側もそれを知りつつ放置していたような事案です。
今回の事案は場所が現在進行形で使用されている道路なので、長期間放置されているとは判断できません。
結論として、これもバナナおじさんに勝算は薄いでしょう。

案③ 市にバナナを寄付する

行政は市民から「寄付受け」として寄付を受け付けることができます。
この寄付の制度を活用し「このバナナを街路樹にしてくれ」ということは可能です。
上記2案に比べると、この案はかなり現実的かつ平和的です。

しかし、この案も致命的な欠陥があります。
それは、「寄付者は寄付した物の使い道までは指定できない」ということです。
バナナを寄付すること自体は可能です。
ただ、それをどのように使用するかは受け取った行政の計画に一任されます。
「俺の家の前に植樹しろ」とは指定できません。
ましてや、今回の事案は高木など本来あってはならない中央分離帯が舞台です。
結論として、これもバナナおじさんに勝算は薄いでしょう。

結論:どう足掻いてもバナナおじさんの負け

残念ながら、中央分離帯を緑にしたかったというバナナおじさんの壮大な野望はいかなる手段を講じても叶いそうにありません。
現実は無情なものです。

結論として、道路の不法占用は違法です。絶対にやめましょう。

今回は以上で終わります。
この記事が現代社会に疲れたあなたのささやかな娯楽になれば幸いです。


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投稿記事 - 熊谷行政書士法務事務所 広島県広島市 (lo-kuma.com)

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