おからは廃棄物?それとも食品?おから裁判とは?

廃棄物に関わる判例の一つとして、通称「おから裁判(最高裁判所平成11年3月10日第二小法廷決定)」というものがあります。
この裁判は廃棄物と有価物の区分の基準を明らかにした判例として有名です。

※この記事は前回の記事「【産業廃棄物】廃棄物と有価物の違いについて 」の後続論点です。

事件の概要

昔、とある業者(X社)が豆腐製造会社から処理料金を受領しておからを引き取り、飼料等に加工していました。
しかし、このX社は当時産業廃棄物処理業者の免許を持っていなかったのです。
X社は無許可で廃棄物を処理していたとして起訴されました。

裁判では「おからは廃棄物なのか有価物なのか」主たる論点として争われました。
そして最高裁が出した結論は「おからは廃棄物である」という内容でした。

この判決が廃棄物と有価物の基準となった

結論だけを聞くと何だか理不尽な判決なような気もします。
おからという物は食品であり、栄養も豊富です。スーパーでも普通に売っている物です。
一概に「おから=廃棄物」と断ずるのは腑に落ちないという方も多いでしょう。
そう思われた方は、その通りです。
この判決は一般的におからは廃棄物だと断ずるものではありません。
判決では、廃棄物か有価物かの判断は以下の基準によって判断されるとされています。

【判旨】
右の産業廃棄物について定めた廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令(平成5年政令第385号による改正前のもの)2条4号にいう「不要物」とは、自ら利用し又は他人に有償で譲渡することができないために事業者にとって不要になった物をいい、これに該当するか否かは、その物の性状、排出の状況、通常の取扱い形態、取引価値の有無及び事業者の意思等を総合的に勘案して決するのが相当である。

最高裁判所平成11年3月10日第二小法廷決定

全てのおからが廃棄物であるというわけではない

上記の判断基準は現在でも廃棄物と有価物を判定する際の基準となっています。
さて、判旨は更に以下のように続いています。

【判旨】
おからは、豆腐製造業者によって大量に排出されているが、非常に腐敗しやすく、本件当時、食用などとして有償で取り引きされて利用されるわずかな量を除き、大部分は、無償で牧畜業者等に引き渡され、あるいは、有料で廃棄物処理業者にその処理が委託されており、被告人は、豆腐製造業者から収集、運搬して処分していた本件おからについて処理料金を徴していたというのであるから、本件おからが同号にいう「不要物」に当たり、前記法律二条四項にいう「産業廃棄物」に該当するとした原判断は、正当である。

最高裁判所平成11年3月10日第二小法廷決定

以上から、同じ物でも食品として有償で販売しているもの有価物であり、処理料金を受領して処理をするのであれば不要物ということができます。
つまり、物そのものの特性ではなく、取引の形態も含めて考慮されるということです。
何とも曖昧な基準ですが、この基準は現在でも適用されています。

最後に

今回はおからが廃棄物か食品かについて争われた判例について解説しました。
廃棄物と有価物の区別は際どい問題です。そのため、自治体によって判断が分かれる場合があります。
もし判断に迷う場合があれば、行政に相談してみましょう。

今回は以上で終わります。
最後までご覧いただき、ありがとうございます。

この記事が産廃業について学びたいと考えていた方の参考になれば幸いです。

また、この他にも有益な情報を逐次投稿しております。よろしければ他の記事もご覧ください。
投稿記事 - 熊谷行政書士法務事務所 広島県広島市 (lo-kuma.com)

なお、業務に関するお問い合わせは、下記のお問い合わせフォームからいつでもどうぞ。
お問い合わせ - 熊谷行政書士法務事務所 広島県広島市 (lo-kuma.com)


Follow me!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です