所有者不明の土地を耕作する方法
目次
所有者不明の土地が増加する背景
近年、所有者不明の土地が全国的に増加しており、その総面積は令和7年現在で九州に匹敵するという報道もあります。この問題は、相続手続きが行われていなかったり、所有者と連絡が取れなくなったりすることが主な原因です。
あなたの身近にも、所有者不明の土地が存在しているかもしれません。例えば、隣接する田畑が放置されており、水利条件や日当たりが良いにもかかわらず、誰も管理していないというケースです。このような土地を有効活用することで、耕作が可能となり、荒地化や害獣被害を防ぐことができます。
今回は、所有者不明の土地を耕作するための二つの方法について解説します。
方法1:不在者財産管理人の選任
不在者財産管理制度とは
所有者が不在であり、その財産が適切に管理されていない場合、民法第25条に基づき、家庭裁判所が不在者財産管理人を選任することが考えられます。
(不在者の財産の管理)
第25条
この制度を利用することで、隣接する田畑の放置により被害を受ける「利害関係人」として、あなたが家庭裁判所に不在者財産管理人の選任を申し立てることが可能です。
具体的な手続き
- 利害関係人として申立て
- 所有者不明の土地の影響を受けていることを証明する。
- 土地が放置されていることで発生している害獣被害や荒廃の状況を明示する。
- 裁判所による管理人の選任
- 家庭裁判所は通常、弁護士を不在者財産管理人として選任する。
- 管理人との契約
- 選任された管理人に対し、土地を借りて耕作することを提案する。
- 貸借契約を結ぶことで、正式に耕作が可能になる。
費用について
裁判所の手続きには費用が発生しますが、耕作によって一定の収入が見込める場合、その収益を管理費用に充てることも可能です。
方法2:事務管理として耕作する
事務管理制度とは
民法には「事務管理」という概念があり、所有者の同意が得られない場合でも、一定の条件を満たせば他人の財産を管理することが認められています。
(事務管理)
第697条
- 義務なく他人のために事務の管理を始めた者(以下この章において「管理者」という。)は、その事務の性質に従い、最も本人の利益に適合する方法によって、その事務の管理(以下「事務管理」という。)をしなければならない。
- 管理者は、本人の意思を知っているとき、又はこれを推知することができるときは、その意思に従って事務管理をしなければならない。
この制度を利用し、あなたが所有者不明の土地を事務管理の範囲内で耕作する方法が考えられます。
具体的な手続き
- 地域住民の同意を得る
- 地元の農業委員会や自治体と協議し、耕作の必要性を説明する。
- 近隣住民の要望として、耕作の正当性を確立する。
- 耕作開始の通知をする
- 所有者が判明した場合に備え、耕作を開始する旨を公告する。
- 公示による通知(地元の掲示板や役所への届出)を行う。
- 耕作の継続と維持管理
- 所有者が現れた場合、賃貸借契約を結ぶ。
- 耕作の記録を残し、管理の正当性を確保する。
事務管理の注意点
事務管理は所有者の同意を得ないまま行う行為であるため、慎重に対応する必要があります。特に以下の点に注意してください。
- 所有者が後から現れた場合の対応
- 耕作の経緯や地域の同意を説明し、正当性を主張する。
- できるだけ円満に土地利用の合意を形成する。
- 法的トラブルのリスク
- 事前に弁護士に相談し、リスクを把握しておく。
- 近隣住民の支持を得ることで、トラブルを最小限にする。
- 事務管理は本人又はその相続人若しくは法定代理人が管理をすることができるまで事務管理を継続しなければならないため、一度始めると勝手に辞めることはできない。
まとめ
所有者不明の土地を耕作するための方法として、
- 不在者財産管理人を選任する方法
- 家庭裁判所に申し立て、管理人を通じて土地を借りる。
- 公式な手続きのため、法的安定性が高い。
- 事務管理として耕作する方法
- 地域住民の同意を得て、自主的に管理する。
- 法的リスクがあるため、慎重な対応が必要。
それぞれの方法にはメリット・デメリットがありますが、状況に応じて適切な方法を選択することが重要です。土地の有効活用と地域の環境維持のために、ぜひ正しい手続きを踏んで進めてください。
最後に
今回は所有者不明の農地を耕作する方法について解説しました。
今回は以上で終わります。
最後までご覧いただき、ありがとうございます。
この記事が農地に関する法律問題について学びたい方の参考になれば幸いです。
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投稿記事 - 熊谷行政書士法務事務所 広島県広島市 (lo-kuma.com)
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