交通反則切符の供述書を他人名義で作成すると私文書偽造罪になる?
交通違反に伴う交通反則切符。多くの方にとって、これを受け取るのは経験したくない場面です。
しかし、交通反則切符に付随する供述書が、他人の名義で作成された場合にどのような法的影響が生じるのか、ご存じでしょうか。
今回は、このテーマに関する重要な最高裁判例を取り上げ、その法的背景と私文書偽造罪成立の経緯について解説します。
【判例 最高裁判所第二小法廷 昭和56年4月8日】
目次
事件の背景
この事件は、ある被告人が交通違反を犯した際に、交通反則切符に添付する供述書を他人の名義で作成したことから始まります。被告人は、事前に名義人である知人から了承を得ていました。しかし、名義人以外の者が供述書を作成すること自体が法律で認められない行為であることを理解していませんでした。
結果として、被告人は私文書偽造罪で起訴されました。この判例は、供述書を他人名義で作成する行為が、たとえ承諾を得ていたとしても罪に問われる可能性があることを明らかにしています。
私文書偽造罪成立のポイント
裁判所がこの行為を私文書偽造罪と判断した理由は以下の通りです。
供述書の性質
供述書は、特定の事実に基づく本人の陳述を記録する文書であり、その内容の真実性を前提としています。本人以外が作成した場合、その真実性に疑念が生じるため、供述書としての信頼性が大きく損なわれます。
法的責任
他人が名義を借りて供述書を作成することは、文書の信頼性を毀損します。さらに、供述書は公的な手続きにおいて重要な役割を果たす文書です。その改ざんや偽造は法的に重い責任を伴います。
最高裁の判断
本件では、被告人が「名義人の承諾を得ていたため違法ではない」と主張しました。しかし、裁判所はこれを退けました。理由として、供述書の作成はあくまで名義人本人によるものであるべきであり、その信頼性を揺るがす行為は犯罪として成立するという判断が示されました。
根拠法令
(私文書偽造等)
第159条行使の目的で、他人の印章若しくは署名を使用して権利、義務若しくは事実証明に関する文書若しくは図画を偽造し、又は偽造した他人の印章若しくは署名を使用して権利、義務若しくは事実証明に関する文書若しくは図画を偽造した者は、3月以上5年以下の拘禁刑に処する。
まとめ
今回の判例を通じて、交通反則切符に関連する供述書の作成において、他人の名義を使用することがいかに重大な法的問題を引き起こすかが明らかになりました。供述書は本人が自ら記述することが前提であり、それ以外の方法で作成された場合、その文書の信頼性が損なわれ、私文書偽造罪が成立する可能性があります。
一見軽微に思える行為でも、その後の手続きにおいて適切な対応を怠ると、重大な法的リスクを伴うことがあります。今回の判例を教訓に、正確な法的手続きを踏むことの重要性を再認識する必要があります。
最後に
今回は文書偽造の罪について解説しました。
今回は以上で終わります。
最後までご覧いただき、ありがとうございます。
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投稿記事 - 熊谷行政書士法務事務所 広島県広島市 (lo-kuma.com)
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