収入印紙と消印の目的と手続き

今回は、契約書や受取書を作成する際に必須となる「収入印紙」と「消印」について詳しく解説します。なぜ収入印紙を貼り、消印を押す必要があるのか、具体的な手続きや法的根拠を知ることで、日々の業務において確実に対応できるようになります。

収入印紙とは何か?

収入印紙は、印紙税を納付するための証票で、契約書や受取書などの課税文書に貼付されます。切手と見間違えやすいですが、その目的は全く異なります。切手が郵便料金納付のために使用されるのに対し、収入印紙は税金納付のために使用されます。

印紙税の概要

印紙税は、金銭の授受が発生する取引や契約に伴って作成される文書(契約書、受取書など)に対して課される税金です。印紙税額は契約内容や金額により異なります。

文 書 の 種 類(物 件 名)印紙税額(1通又は1冊につき)主な非課税文書
不動産、鉱業権、無体財産権、船舶若しくは航空機又は営業の譲渡に関する契約書

地上権又は土地の賃借権の設定又は譲渡に関する契約書

消費貸借に関する契約書

運送に関する契約書
記載された契約金額が 10万円以下のもの:200円
10万円を超え50万円以下のもの:400円
50万円を超え100万円以下のもの:1,000円
100万円を超え500万円以下のもの:2,000円
500万円を超え1,000万円以下のもの:1万円
1,000万円を超え5,000万円以下のもの:2万円
5,000万円を超え1億円以下のもの:6万円
1億円を超え5億円以下のもの:10万円
5億円を超え10億円以下のもの:20万円
10億円を超え50億円以下のもの:40万円
50億円を超えるもの:60万円
契約金額の記載のないもの:200円
記載された契約金額が1万円未満のもの
請負に関する契約書記載された契約金額が100万円以下のもの:200円
100万円を超え200万円以下のもの:400円
200万円を超え300万円以下のもの:1,000円
300万円を超え500万円以下のもの:2,000円
500万円を超え1,000万円以下のもの:1万円
1,000万円を超え5,000万円以下のもの:2万円
5,000万円を超え1億円以下のもの:6万円
1億円を超え5億円以下のもの:10万円
5億円を超え10億円以下のもの:20万円
10億円を超え50億円以下のもの:40万円
50億円を超えるもの:60万円
契約金額の記載のないもの:200円
記載された契約金額が1万円未満のもの
約束手形、為替手形記載された手形金額が10万円以上100万円以下のもの:200円
100万円を超え200万円以下のもの:400円
200万円を超え300万円以下のもの:600円
300万円を超え500万円以下のもの:1,000円
500万円を超え1,000万円以下のもの:2,000円
1,000万円を超え2,000万円以下のもの:4,000円
2,000万円を超え3,000万円以下のもの:6,000円
3,000万円を超え5,000万円以下のもの:1万円
5,000万円を超え1億円以下のもの:2万円
1億円を超え2億円以下のもの:4万円
2億円を超え3億円以下のもの:6万円
3億円を超え5億円以下のもの:10万円
5億円を超え10億円以下のもの:15万円
10億円を超えるもの:20万円
記載された手形金額が10万円未満のもの、手形金額の記載のないもの、手形の複本又は謄本
株券、出資証券若しくは社債券又は投資信託、貸付信託、特定目的信託若しくは受益証券発行信託の受益証券記載された券面金額が500万円以下のもの:200円
500万円を超え1,000万円以下のもの:1,000円
1,000万円を超え5,000万円以下のもの:2,000円
5,000万円を超え1億円以下のもの:1万円
1億円を超えるもの:2万円
日本銀行その他特定の法人の作成する出資証券、譲渡が禁止されている特定の受益証券、一度要件を満たしている額面株式の株券の無効手続に伴い新たに作成する株券
合併契約書又は吸収分割契約書若しくは新設分割計画書4万円なし
定款4万円株式会社又は相互会社の定款のうち公証人法の規定により公証人の保存するもの以外のもの
※電子定款は不要
継続的取引の基本となる契約書4千円なし
預金証書、貯金証書200円信用金庫その他特定の金融機関の作成するもので記載された預入額が1万円未満のもの
倉荷証券、船荷証券、複合運送証券200円なし
保険証券200円なし
信用状200円なし
信託行為に関する契約書200円なし
債務の保証に関する契約書200円身元保証に関する契約書
金銭又は有価証券の寄託に関する契約書200円なし
債権譲渡又は債務引受けに関する契約書記載された契約金額が1万円以上のもの:200円
契約金額の記載のないもの:200円
記載された契約金額が1万円未満のもの
配当金領収証、配当金振込通知書記載された配当金額が3千円以上のもの:200円
配当金額の記載のないもの:200円
記載された配当金額が3千円未満のもの
売上代金に係る金銭又は有価証券の受取書記載された受取金額が100万円以下のもの:200円
100万円を超え200万円以下のもの:400円
200万円を超え300万円以下のもの:600円
300万円を超え500万円以下のもの:1千円
500万円を超え1千万円以下のもの:2千円
1千万円を超え2千万円以下のもの:4千円
2千万円を超え3千万円以下のもの:6千円
3千万円を超え5千万円以下のもの:1万円
5千万円を超え1億円以下のもの:2万円
1億円を超え2億円以下のもの:4万円
2億円を超え3億円以下のもの:6万円
3億円を超え5億円以下のもの:10万円
5億円を超え10億円以下のもの:15万円
10億円を超えるもの:20万円
受取金額の記載のないもの:200円
記載された受取金額が5万円未満のもの、営業に関しないもの、有価証券、預貯金証書など特定の文書に追記した受取書
預金通帳、貯金通帳、信託通帳、掛金通帳、保険料通帳1年ごとに200円信用金庫など特定の金融機関の作成する預貯金通帳、所得税が非課税となる普通預金通帳など、納税準備預金通帳
消費貸借通帳、請負通帳、有価証券の預り通帳、金銭の受取通帳などの通帳1年ごとに400円なし
判取帳1年ごとに4千円なし
印紙税法別表第一(令和6年7月現在)に基づいて作成 印紙税法

なお、士業が作成する領収書は17号文書と言われる書類であり、印紙税は非課税です。

印紙税の納税義務者

印紙税の納税義務者は、課税文書の作成者とされています。通常、取引には売り手と買い手、貸し手と借り手というように二者以上が関わります。そのため、印紙税の納税義務者は双方ということになります。例えば、領収書に関しては、金銭を受領した側が印紙税を負担するのが一般的ですが、印紙税法では納税義務者のみを定めており、実際の負担者は民法の「契約自由の原則」に従って双方の話し合いで決められます。

消印とは何か?

消印は、収入印紙の再使用を防止するために、収入印紙と文書にまたがって押印することを指します。印紙税法第8条第2項に基づき、収入印紙を消す方法として、文書の作成者または代理人、使用人その他の従業者の印章または署名によることとされています。消印には、日付印などのゴム印でも構いません。

収入印紙の貼付と消印の手続き

印紙税の納付は、契約書などの課税文書に所定額の収入印紙を貼付し、消印することによって行われます。文書に使用したハンコや日付印、署名によって印紙を消す方法が取られます。また、複数の人が共同して作成した文書に貼付した収入印紙は、その作成者のうち一人が消印すればよく、全員で行う必要はありません。

消印がないとどうなるか?

印紙を貼り付けなければならない課税文書に印紙を貼付しない場合、納税義務者である課税文書の作成者は印紙税を納付しなかったことになり、罰金として収入印紙額の3倍(自主的に申し出た場合は1.1倍)の過怠税が課されます。また、消印忘れの場合は収入印紙と同額の過怠税が課されます。

電子契約書の普及

最近は印紙税が課されない電子化された契約書を交わすケースが増えつつありますが、それでもまだ文書で交わすケースは多く、過怠税の納付も後を絶ちません。過怠税は法人税法上「損金」とはならないため、無駄な納税をしないように、印紙の貼付や消印もれがないように努めましょう。

まとめ

収入印紙と消印は、税金の適正な納付を確保するための重要な手続きです。契約書や受取書を作成する際には、収入印紙の貼付と消印を確実に行うことで、法的なトラブルを未然に防ぐことができます。印紙税法や民法の規定を正しく理解し、適切な対応を心掛けましょう。

最後に

今回は収入印紙と消印の目的について解説しました。

今回は以上で終わります。
最後までご覧いただき、ありがとうございます。

この記事が印鑑制度について学びたい方の参考になれば幸いです。

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投稿記事 - 熊谷行政書士法務事務所 広島県広島市 (lo-kuma.com)

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