スプリンクラー設置基準とその重要性について
火災が発生した際に、人命と財産を守るために欠かせない設備の一つがスプリンクラーです。スプリンクラーは、自動的に火災を感知し、水を散布することで火災を初期段階で消火する重要な役割を果たします。しかし、スプリンクラーの設置基準やその種類については、詳細に理解している人は少ないでしょう。
今回は、スプリンクラーの基本的な仕組みから、設置基準、法律の条文、さらに共同住宅における設置基準までを詳しく解説します。
目次
スプリンクラーの基本的な仕組みと種類
スプリンクラーとは、火災時に自動的に水を散布して消火を行う装置です。初期消火に特に効果的であり、火災が発生した際の被害を最小限に抑えることができます。スプリンクラーは、大きく分けて開放型と閉鎖型の2種類があります。
閉鎖型スプリンクラー
閉鎖型のスプリンクラーは、常に水の出口が閉じられており、火災時に感熱体が作動することで散水が始まります。以下の3つのタイプがあります。
- 湿式スプリンクラー
スプリンクラーヘッドまで水が充満しており、火災時に即座に散水が開始されます。最も一般的に使用されるタイプです。 - 乾式スプリンクラー
配管内に空気が充満しており、ヘッドが開放されるとまず空気が放出され、その後に水が散水されます。寒冷地で凍結防止のために使用されます。 - 予作動式スプリンクラー
圧縮空気を充填し、火災感知機が火災を感知してから水を送る方式です。コンピュータ室など、水による被害が大きい場所に使用されます。
開放型スプリンクラー
開放型のスプリンクラーは、水の出口が常に開いており、火災感知器と連動して散水が開始されます。劇場や舞台など、天井が高い場所に適しています。
スプリンクラーの設置基準
スプリンクラーの設置が必要かどうかは、建物の用途、延べ面積、階数などによって決まります。以下に、代表的な設置基準を示します。
建物の用途による設置基準
劇場や集会場
劇場や集会場では、以下の条件を満たす場合にスプリンクラーの設置が義務付けられています。
- 地階、無窓階、4階から10階までの階で床面積が1000m²以上
- 11階以上の階では床面積に関わらず設置義務
キャバレーや性風俗店
- 延べ面積が6000m²以上の場合に設置義務
病院
- 延べ面積が3000m²以上の場合に設置義務
特定共同住宅
- 11階以上の住戸に設置義務
法令の条文による根拠
スプリンクラーの設置基準は、消防法施行令別表第1(6)項ロに基づいています。平成27年4月から、延べ面積に関わらずスプリンクラーの設置義務が課せられるようになりました。
緩和規定
建物によっては、スプリンクラーの設置が不要になる場合があります。以下にその条件を示します。
スプリンクラー設置が不要な場合
- 水噴霧、不活性ガス、ハロゲン化物などの消火設備が有効な部分
- 10階以下にある防火設備が設けられている場所
- 耐火構造の床や壁で区画されたスプリンクラー代替区画
- パッケージ型自動消火設備が設置された場合
スプリンクラーヘッド設置が不要な場所
- 浴室、便所、階段、エレベーターの機械室など、火災の危険性が低い場所
- 通信機器室、電子計算機室、手術室など水による被害が大きい場所
代替区画とは
代替区画とは、耐火構造とすることでスプリンクラーの設置が不要となる区画です。以下の条件を満たす場合に適用されます。
- 区画の大きさが11階以上で100m²以下、10階以下で200m²以下
- 壁や天井の内装が難燃材料で作られている
- 開口部の面積が合計8m²以下
共同住宅用スプリンクラー設置基準
共同住宅におけるスプリンクラー設置基準は以下の通りです。
特定共同住宅用スプリンクラー設置基準
特定共同住宅等 福祉施設等 指定福祉施設等の種類 | 地階除く階数が5以下 | 地階除く階数が10以下 | 地階除く階数が11以上 |
---|---|---|---|
二方向避難型 | なし | なし | 設置 |
開放型 | なし | なし | 原則設置 11~14階に内装制限がある場合は15回以上に設置義務あり |
二方向避難・開放型 | なし | なし | 原則設置 11~14階に内装制限がある場合は15回以上に免除可能 |
その他 | なし | なし | 設置 |
スプリンクラー設置基準
防火対象物 | 床面積の延べ面積 | 地階、無窓階の床面積 | 4~10階の床面積 | 地上階11以上 | 11階以上の階 |
---|---|---|---|---|---|
劇場等 集会場等 | 平屋建て以外の床面積の合計が6000m²以上 | 1000m²以上(舞台部300㎡以上) | 1500m²以上(舞台部500㎡以上) | 設置 | 設置 |
キャバレー等 遊技場等 風俗関連 カラオケボックス等 | 平屋建て以外の床面積の合計が6000m²以上 | 1000m²以上 | 1000m²以上 | 設置 | 設置 |
料理店等 飲食店 | 平屋建て以外の床面積の合計が3000m²以上 | 1000m²以上 | 1500m²以上 | 設置 | 設置 |
百貨店等 | 平屋建て以外の床面積の合計が3000m²以上 | 1000m²以上 | 1000m²以上 | 設置 | 設置 |
旅館等 | 平屋建て以外の床面積の合計が6000m²以上 | 1000m²以上 | 1500m²以上 | 設置 | 設置 |
寄宿舎等 | なし | なし | なし | なし | 設置 |
病院等のうち、以下のものに該当する場合 1.診療科名中に特定診療科名を有するもの。 2.療養病床又は一般病床に規定する一般病床を有するもの。 3.四人以上の患者を入院させるための施設を有するもの。 4.患者を入院させるための施設を有する診療所又は入所施設を有する助産所 | 平屋建て以外の床面積の合計が3000m²以上 | 1000㎡以上 | 1500㎡以上 | 設置 | 設置 |
病院等 | 平屋建て以外の床面積の合計が6000m²以上 | 1000㎡以上 | 1500㎡以上 | 設置 | 設置 |
福祉施設 | 原則設置 ただし、救護施設、障害児入所施設、障害者支援施設、障碍者の短期入所施設、障碍者の共同生活援助を行う施設については「介助が無ければ避難できないものとして省令で定める者を主として入所させる」施設に該当するか、延べ面積275㎡以上でなければ設置義務なし | 1000㎡以上 | 1500㎡以上 | 設置 | 設置 |
福祉デイサービス等 幼稚園等 | 平屋建て以外の床面積の合計が6000m²以上 | 1000m²以上 | 1500m²以上 | 設置 | 設置 |
小学校等 図書館等 | なし | なし | なし | なし | 設置 |
蒸気浴場 熱気浴場等 | 平屋建て以外の床面積の合計が6000m²以上 | 1000m²以上 | 1500m²以上 | 設置 | 設置 |
公衆浴場等 停車場・発着場 神社等 工場等 映画スタジオ等 駐車場等 格納庫 | なし | なし | なし | なし | 設置 |
倉庫 | 天井10m超 延べ面積700㎡以上ラック式倉庫 | 天井10m超 延べ面積700㎡以上ラック式倉庫 | 天井10m超 延べ面積700㎡以上ラック式倉庫 | 天井10m超 延べ面積700㎡以上ラック式倉庫 | 設置 |
事業場 | なし | なし | なし | なし | 設置 |
以下の施設の複合用途防火対象物 劇場等 集会場等 キャバレー等 遊技場等 風俗関連 カラオケボックス等 料理店等 飲食店 百貨店等 旅館等 病院等 福祉施設福祉デイサービス等 幼稚園等 蒸気浴場 熱気浴場等 | 用途部分3000㎡以上 | 用途部分1000㎡以上 | 用途部分1500㎡以上 | 設置 | 設置 |
その他の複合用途防火対象物 | なし | なし | なし | なし | 設置 |
地下街 | 1000㎡以上 | なし | なし | なし | 設置 |
準地下街 | 原則延べ面積1000㎡ | なし | なし | なし | 設置 |
重要美術品 | なし | なし | なし | なし | 設置 |
アーケード 市町村指定山林 総務省指定舟車 | なし | なし | なし | なし | なし |
政令上の指定可燃物 | 規程数量1000倍以上の貯蔵または取扱い | 規程数量1000倍以上の貯蔵または取扱い | 規程数量1000倍以上の貯蔵または取扱い | 規程数量1000倍以上の貯蔵または取扱い | 規程数量1000倍以上の貯蔵または取扱い |
まとめ
スプリンクラーは、火災時に迅速かつ効果的に初期消火を行うための重要な設備です。その設置基準は、建物の用途や規模、階数によって異なりますが、法令に基づいて厳格に定められています。特に共同住宅や病院など、多くの人が利用する建物では、スプリンクラーの設置が義務付けられている場合が多いです。建物の安全性を高めるために、スプリンクラーの設置基準を正しく理解し、適切に設置することが求められます。
最後に
今回はスプリンクラー設置基準について解説しました。
今回は以上で終わります。
最後までご覧いただき、ありがとうございます。
この記事が消防法について学びたい方の参考になれば幸いです。
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