ハロゲン化物消火設備の重要性と設置基準
火災が発生した際、迅速に火を抑えるための消火設備は非常に重要です。特に、ハロゲン化物消火設備はその独自の特性から、多くの施設で使用されています。しかし、この設備について詳しく知っている人は少ないかもしれません。今回は、ハロゲン化物消火設備の基本的な特徴から設置基準、種類や消火剤の種類、起動方法に至るまでを詳しく解説します。
目次
ハロゲン化物とは
ハロゲン化物とは、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素などの化合物のことを指します。これらの物質は沸点が低く、低い温度でも沸騰して気体になります。この気体は不燃性で、空気よりも重いという特徴があります。液状化しているハロゲン化物を炎に対して放射すると、すぐに気化して重い気体となり酸素を遮断し、燃焼の連鎖反応を中断します。これにより炎を鎮火することができます。
しかし、ハロゲン化物はオゾン層を破壊するフロンガスの一種でもあり、その使用には規制がかけられています。
設置基準
全域放出方式と局所放出方式
ハロゲン化物消火設備には全域放出方式と局所放出方式があります。全域放出方式は防護区画内全体にハロゲン化物を放出して消火を行う方式で、局所放出方式は直接に消火剤を放出することで消火を行う方式です。
噴射ヘッドの設置
消火設備の噴射ヘッドは、標準放射量で当該防護対象物の火災を有効に消火できるように、必要な個数を設置する必要があります。また、移動式のハロゲン化物消火設備のホース接続口は、すべての防護対象物について、水平距離が20m以下となるように設置しなければなりません。
ハロゲン化物消火剤容器の設置
ハロゲン化物消火剤容器に貯蔵する消火剤の量は、防護対象物の火災を有効に消火することができる量以上でなければなりません。消火剤容器と加圧用容器は点検に便利であり、火災時の延焼のおそれと衝撃による損傷のおそれが低く、温度の変化が少ない箇所に設置する必要があります。
非常電源の設置
全域放出方式か局所放出方式のハロゲン化物消火設備には、非常電源を設置しなければなりません。
消火設備の種類
ハロゲン化物消火設備には、移動式と固定式があります。固定式はさらに全域放出方式と局所放出方式に分けることができます。移動式は消火剤貯蔵容器とホースリールを固定し、ホースとホースノズルを移動させて消火を行います。一方、固定式はすべての機器を固定し、火災時に煙が充満する場所に設置されます。
全域放出方式
防護区画内全体にハロゲン化物を放出して酸素濃度を低下させることで消火を行います。
局所放出方式
防護対象物に直接消火剤を放出して消火を行います。
消火剤について
ハロゲン化物には毒性があります。そのため、ハロゲン化物消火剤として使用できるのは、以下の3種類です。
- ハロン1301 (ブロモトリフルオロメタン)
- ハロン1211 (ブロモクロロジフルオロメタン)
- ハロン2402 (ジブロモテトラフルオロエタン)
この中でも最も使用されているのはハロン1301です。通常、ハロゲン化合物を加熱すると毒ガスが発生しますが、ハロン1301は加熱しても毒ガスを発生しません。
ハロゲン化物消火剤に代わって、代替ハロン消火剤が用いられることもあります。以下に代替ハロン消火剤の例を挙げます。
- HFC-23 (トリフルオロメタン)
- HFC-227ea (ヘプタフルオロプロパン)
- IG-541 (イナージェン)
- IG-100 (窒素ガス)
- IG-55 (アルゴナイト)
起動方法
ハロゲン化物消火設備の起動方法には手動式と自動式の2種類があります。
手動式
手動式の起動装置は、入口付近など区画内を見渡せる場所に設置します。これにより、起動した人の退避が容易になります。また、操作部は床から0.8mから1.5m以内の箇所に設置します。
自動式
自動式の起動装置は火災報知機と連動させます。区画内の異なる2つの感知器が両方作動した場合に、ハロゲン化物消火設備が起動するように設定します。原則として、手動が不適当な場所でのみ自動式を用いることができます。
ハロゲン化物消火設備設置基準
対象部門 | 設置基準 |
---|---|
自動車の修理・整備に使用されている部分の床面積 | 地階・2階以上:200m²以上 1階:500m²以上 |
駐車に使われている部分 | 地階・2階以上:200m²以上 1階:500m²以上 屋上:300m²以上 |
昇降機つき駐車施設 | 収容車両数が10台以上 |
発電機・変圧器など電気設備がある部分の床面積 | 200m²以上 |
鍛造場、ボイラー室など多量の火気を使う部分の床面積 | 200m²以上 |
通信機器室の床面積 | 500m²以上 |
危険物政令別表第4で定める指定可燃物 | 指定量の1000倍以上を貯蔵または取り扱う場合 |
まとめ
ハロゲン化物消火設備はその特性から非常に有効な消火手段となりますが、その使用には規制があり、適切な設置基準を遵守することが求められます。設備の種類や消火剤の選択、起動方法などを理解し、適切に管理することが重要です。特にハロゲン化物の毒性や環境への影響を考慮し、最新の規制や代替消火剤についても把握しておくことが求められます。火災から人命と財産を守るために、ハロゲン化物消火設備の正しい知識と設置基準の遵守が不可欠です。
根拠となる法令は「消防法施行規則」などの関連法令に基づいています。詳細な設置基準や規制については、各地の消防署や専門家に相談することをおすすめします。
最後に
今回はハロゲン化物消火設備について解説しました。
今回は以上で終わります。
最後までご覧いただき、ありがとうございます。
この記事が消防法について学びたい方の参考になれば幸いです。
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