法人の重要事項変更についての完全ガイド
法人運営において、会社の商号や本店所在地の変更、役員の変更など、法人の重要事項に変更が生じた場合、迅速かつ適切な対応が求められます。今回は、特に株式会社、合同会社、NPO法人、一般社団法人における重要事項の変更手続きについて、具体的な手順や必要書類、罰則規定などを詳しく解説します。これを読めば、重要事項の変更登記に関する手続きが理解できるでしょう。
株式会社の変更登記
登記の意義と必要性
株式会社の登記は、会社の情報を公示する重要な役割を果たしています。したがって、登記事項は常に最新の情報に保たれている必要があります。例えば、商号(社名)、目的、本店(住所)、取締役(代表取締役)の変更があった場合には、変更登記を行わなければなりません。登記の申請は、変更が生じた日から2週間以内に本店所在地で行う必要があり、この期間を過ぎると100万円以下の過料が課されることがあります。
役員の変更登記
任期満了による変更
取締役などの役員には任期があり、通常、任期は選任後2年以内に終了する事業年度の定時株主総会までです。ただし、非公開会社であれば10年まで延長することが可能です。任期が満了した際には、新しい取締役を選任する必要があり、通常は再任(重任)となります。再任があった場合はその旨を登記しなければなりません。
必要書類
- 登記申請書
- 資本金が1億円を超える会社は3万円、1億円以下の会社は1万円の登録免許税
- 株主総会議事録
- 委任状(代理人による申請の場合)
- 取締役の就任承諾書
本店移転登記
同一法務局管轄内での移転
同じ法務局の管轄区域内で本店を移転する場合、定款の変更を必要としない場合があります。この場合、移転先と移転日を決定し、実際に本店を移転した後に登記を申請します。
他の法務局管轄区域への移転
他の法務局の管轄区域に本店を移転する場合、株主総会で定款変更の決議を行い、取締役が移転先と移転日を決議します。この場合、旧本店所在地を管轄する法務局と新本店を管轄する法務局の両方に対して登記申請を行います。
必要書類
- 登記申請書
- 本店移転に関する事項を決定したことを証する書面
商号変更登記
商号を変更した場合、以下の書類などが必要です。
- 登記申請書
- 商号変更登記の登録免許税3万円
- 株主総会議事録
- 委任状(代理人による申請の場合)
- 代表取締役の印鑑(改印)届書(改印する場合)
合同会社の変更登記
合同会社は人を重視する人的会社であり、全社員の同意に基づいて定款が定められています。したがって、定款を変更する場合も、全社員の同意が必要です。
変更の対象となる事項
- 名称
- 事業目的
- 本店の住所
- 社員の住所
これらの事項に変更が生じた場合、定款の変更と登記の変更手続きが必要です。
必要書類
- 登記申請書
- 社員の加入時には出資に係る払込または給付があったことを証する書面
- 退社時には死亡届、戸籍謄本、除名を証する書面
NPO法人の変更登記
NPO法人においても、定款に記載している内容を変更する場合には手続きが必要です。
軽微な変更事項
軽微な変更事項は、届け出のみで認証申請は不要です。それ以外の変更事項については、認証申請が必要です。
変更手続き
社員総会を招集し、定款に定めた議決数で変更事項を決議します。その後、軽微な変更事項については届出を行い、それ以外の変更事項については認証申請を行います。
必要書類
- 役員変更等の届出書
- 新たに役員が選任された場合の就任承諾書
- 定款変更の認証書
- 総会の議事録
- 最新の定款
一般社団法人の変更登記
役員の変更登記
一般社団法人では、通常、代表理事・理事は2年ごと、監事は4年ごとに選任されます。変更登記に必要な書類は以下の通りです。
- 登記申請書
- 「登記すべき事項」を記録したCD-R
- 定款(理事会設置の場合は不要)
- 社員総会議事録
- 理事会議事録(代表理事選定の場合)
- 役員の就任承諾書
- 登録免許税1万円
事業目的変更の変更登記
事業目的を変更する場合は定款の変更も伴い、特別決議を経る必要があります。必要な書類は以下の通りです。
- 変更登記申請書
- 「登記すべき事項」を記録したCD-R
- 社員総会議事録
- 登録免許税3万円
法人のおもな変更登記の登録免許税
以下に、法人のおもな変更登記の登録免許税を表形式で示します。
法人(組合) | 区分 | 登記の事由 | 登録免許税 |
---|---|---|---|
株式会社 | カ | 役員の変更 | 1件につき3万円(資本金の額が1億円以下の会社は1万円) |
株式会社 | ヲ | 本店移転 | 1か所につき3万円(管轄外への移転は2か所となるため6万円) |
株式会社 | ネ | 商号の変更 | 1件につき3万円 |
株式会社 | ネ | 目的の変更 | 1件につき3万円 |
株式会社 | カ | 代表取締役の住所変更 | 1件につき3万円(資本金の額が1億円以下の会社は1万円) |
合同会社 | カ | 社員の変更 | 1件につき1万円 |
合同会社 | ヲ | 本店移転 | 1か所につき3万円(管轄外への移転は2か所となるため6万円) |
合同会社 | ネ | 目的の変更 | 1件につき3万円 |
合同会社 | ネ | 商号の変更 | 1件につき3万円 |
合同会社 | カ | 代表社員の住所変更 | 1件につき1万円 |
合資会社 | カ | 社員の変更 | 1件につき1万円 |
合名会社 | カ | 社員の変更 | 1件につき1万円 |
NPO法人 | - | 役員の変更 | 不要 |
NPO法人 | - | 事務所所在地の変更 | 不要 |
NPO法人 | - | 名称の変更 | 不要 |
NPO法人 | - | 目的の変更 | 不要 |
一般社団法人 | カ | 役員の変更 | 1件につき1万円 |
一般社団法人 | ネ | 目的の変更 | 1件につき3万円 |
一般財団法人 | カ | 役員の変更 | 1件につき1万円 |
一般財団法人 | ネ | 目的の変更 | 1件につき3万円 |
有限責任事業組合 | ネ | 目的の変更 | 1件につき3万円 |
有限責任事業組合 | ニ | 組合員の変更 | 1件につき1万円 |
※ 「区分」とは、登録免許税法別表第1第24号の区分を指します。
登録免許税法別表第1第24号では、法人の変更登記に関する区分が定められています。これに基づいて、適用される登録免許税の額が決まります。
※ 登記の事由が複数でも、区分が同じ場合はその区分に応じた登録免許税を納付します(合算の必要はない)。区分が異なる場合は、それぞれの区分に応じた登録免許税を合算した額を納付します。
例えば、商号変更と目的変更を同時に行った場合、それぞれの事由が「ネ」に該当するため、登録免許税は3万円のみとなります。合算する必要はありません。
【例1】株式会社において、商号変更と目的変更を一度に行った場合、区分が両方とも「ネ」なので、登録免許税は3万円となります。
【例2】株式会社において、商号変更と役員の変更を一度に行った場合、商号変更は「ネ」、役員の変更は「カ」に該当するため、3万円(ネ)+3万円(又は1万円)(カ)=6万円(又は4万円)となります。
※ 特定非営利活動法人(NPO法人)については、登録免許税はかかりません。
NPO法人に関しては、法人の変更登記に対する登録免許税は免除されています。これは特定非営利活動法人の公益性を考慮した特例措置です。
まとめ
法人の重要事項変更は、迅速かつ適切に対応することで法人運営をスムーズに進めることができます。本記事で紹介した手続きや必要書類を参考に、適切な変更登記を行いましょう。特に、期限内に手続きを行わないと過料が課される可能性があるため、注意が必要です。この記事が、これから法人の重要事項変更を行う際の一助となれば幸いです。
最後に
今回は法人の重要事項変更について解説しました。
今回は以上で終わります。
最後までご覧いただき、ありがとうございます。
この記事が法人設立について学びたい方の参考になれば幸いです。
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投稿記事 - 熊谷行政書士法務事務所 広島県広島市 (lo-kuma.com)
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