一般社団法人設立ガイド:定款作成の完全マニュアルと具体例

一般社団法人の設立には、多くの工程があります。その中でも特に重要なのが「定款の作成」です。定款は法人の基本的な運営方針や規則を明文化したもので、法人の活動の基盤となります。今回は、定款の作成における必要な要素や注意点を徹底解説し、具体例を交えて分かりやすくご紹介します。

目次

定款の作成

一般社団法人の設立において、定款の作成は最も重要なステップの一つです。定款には法人の基本的な運営方針や規則が記載され、これに基づいて法人の活動が行われます。なお、定款に記載する事項は、以下のように絶対的記載事項と相対的記載事項に分類されます。

定款の概要

絶対的記載事項

定款に必ず記載しなければならない事項は以下の通りです。

目的

法人が達成しようとする目的を明確に記載します。これは法人の活動範囲を限定する重要な要素です。

名称

法人の正式な名称を記載します。この名称は法人の同一性を示すための基本情報です。

主たる事務所の所在地

法人の主要な活動拠点の住所を記載します。具体的な所在地が示されることで、法人の活動場所が特定されます。

設立時社員の氏名または名称および住所

設立時に法人の構成員となる者の情報を記載します。これにより、設立当初のメンバーが明確になります。

社員の資格の得喪に関する規定

社員の資格取得方法や喪失条件を記載します。これにより、社員の入退会に関するルールが明確になります。

公告方法

法人の重要な情報を公開する方法を記載します。一般的には、官報やインターネット上での公開が多いです。

事業年度

法人の会計年度を記載します。事業年度の設定により、会計処理や税務申告の基準が決まります。

相対的記載事項

必ずしも記載する必要はないが、記載することで法的効力を持つ事項は以下の通りです。

理事会、監事、会計監査人等の機関を設置する場合の記載

これらの機関を設置する場合、その旨を定款に記載します。機関設置の有無が法人の内部統治に影響を与えます。

理事等の損害賠償責任を一部免除する場合の記載

理事や監事の損害賠償責任を軽減する規定を設ける場合、その内容を記載します。これにより、役員の責任軽減が可能となります。

基金を引き受ける者の募集に関する記載

基金を募集する場合、その方法や条件を定款に記載します。また、基金募集のルールを明確にすることで、資金調達が円滑に行われます。
なお、基金に関しては以下の記事で解説しています。よろしければご参照ください。
一般社団法人の安定運営を支える「基金制度」とその活用法 - 熊谷行政書士法務事務所 広島市 (lo-kuma.com)

定款に記載しても無効な事項

定款に記載しても法的に無効となる事項も存在します。以下のような事項を定款に記載することは認められません。

社員に剰余金または残余財産の分配を受ける権利を与える定め

一般社団法人は、営利を目的としないため、社員に剰余金や残余財産の分配を行うことはできません。このような定めを設けても無効となります。

法律に反する事項

法律に違反する内容を定款に記載しても、その部分は無効となります。たとえば、差別的な規定や公序良俗に反する内容などが含まれます。

その他公序良俗に反する事項

社会的に受け入れられない内容、例えば人権侵害や差別的行為を助長するような規定など、公序良俗に反する事項は無効です。

これらの事項を適切に記載することで、法人の基盤が確立され、円滑な運営が可能となります。

定款の具体例

ここでは、理事会設置型の一般社団法人の定款の具体例を示します。

一般社団法人森林動物保全協会定款


第1章 総 則

(名称)

第1条 当法人は、一般社団法人都市緑化と野生動物保護協会と称する。

(主たる事務所)

第2条 当法人は、主たる事務所を北海道札幌市〇区○○丁○○に置く。

(目的)

第3条 この法人は、都市部やその周辺地域の緑化と生態系の保全を推進し、特に都市に住む野生動物の保護を目的とする。これにより、人と自然が共生する持続可能な都市環境の実現に寄与することを目的とする。

(事業)

第4条 この法人は、前条の目的を達成するために、次の事業を行う。

  1. 都市緑化や生態系保全に関する情報収集、調査及び研究
  2. 都市部の緑化技術や野生動物保護技術の研究及び開発
  3. 都市緑化や野生動物保護に関する講習会、セミナー、シンポジウム等の開催
  4. 都市緑化や野生動物保護に関する機関誌、出版物の刊行
  5. 前各号に附帯又は関連する事業
(公告)

第5条 当法人の公告は、官報に掲載する方法による。

第2章 社 員

(入社)

第6条 当法人の目的に賛同し、入社した者を社員とする。
2 社員となるには、当法人所定の様式による申込みをし、会長の承認を得るものとする。

(経費等の負担)

第7条 社員は、当法人の目的を達成するため、それに必要な経費を支払う義務を負う。
2 社員は、社員総会において別に定める入会金及び会費を納入しなければならない。

(社員の資格喪失)

第8条 社員が次の各号の一に該当する場合には、その資格を喪失する。

  1. 退社したとき
  2. 成年被後見人又は被保佐人になったとき
  3. 死亡し、若しくは失踪宣告を受け、又は解散したとき
  4. 1年以上会費を滞納したとき
  5. 除名されたとき
  6. 総社員の同意があったとき
(退社)

第9条 社員はいつでも退社することができる。 ただし、1か月以上前に当法人に対して予告をするものとする。

(除名)

第10条 当法人の社員が、次のいずれかの事由に該当するにいたったときには、一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(以下「一般法人法」 という)第49条第2項に定める社員総会の特別決議によりその社員を除名することができる。

  1. 当法人の名誉を毀損したとき
  2. 当法人の目的に反する行為をしたとき
  3. 社員としての義務に違反したとき
(社員名簿)

第11条 当法人は、社員の氏名又は名称及び住所を記載した社員名簿を作成する。

第3章 社員総会

(社員総会)

第12条 当法人の社員総会は、定時社員総会及び臨時社員総会とし、定時社員総会は、毎事業年度の終了後3か月以内に開催し、臨時社員総会は、必要に応じて開催する。

(開催地)

第13条 社員総会は、主たる事務所の所在地において開催する。

(招集)

第14条 社員総会の招集は、理事会がこれを決定し、会長が招集する。
2 社員総会の招集通知は、会日より1週間前までに各社員に対して発する。

(決議の方法)

第15条 社員総会の決議は、法令に別段の定めがある場合を除き、総社員の議決権の過半数を有する社員が出席し、出席社員の議決権の過半数をもってこれを行う。

(議決権)

第16条 各社員は、各1個の議決権を有する。

(議長)

第17条 社員総会の議長は、会長がこれに当たる。 会長に事故があるときは、当該社員総会において議長を選出する。

(議事録)

第18条 社員総会の議事については、法令の定めるところにより議事録を作成し、社員総会の日から10年間主たる事務所に備え置く。

第4章 役員等

(役員の設置等)

第19条 当法人に、次の役員を置く。
理事 3名以上10名以内
監事 1人以上3人以下
2 理事のうち、1名を代表理事とする。
3 代表理事を会長とし、理事のうち、1人を副会長、1人を専務理事、2人以内を常務理事とすることができる。

(選任等)

第20条 理事及び監事は、社員総会の決議によって選任する。
2 会長、副会長、専務理事及び常務理事は、理事会の決議によって理事の中から定める。

(理事の職務権限)

第21条 会長は、当法人を代表し、その業務を執行する。
2 副会長は会長を補佐し、専務理事は当法人の業務を執行する。
3 常務理事は、当法人の業務を分担執行する。
4 会長、専務理事及び常務理事は、毎事業年度ごとに4か月を超える間隔で2回以上、自己の職務の執行の状況を理事会に報告しなければならない。

(監事の職務権限)

第22条 監事は、理事の職務の執行を監査し、法令で定めるところにより監査報告を作成する。
2 監事は、いつでも、理事及び使用人に対して事業の報告を求め、当法人の業務及び財産の状況の調査をすることができる。

(任期)

第23条 理事の任期は、選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時社員総会の終結の時までとし、再任を妨げない。
2 監事の任期は、選任後4年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時社員総会の終結の時までとし、再任を妨げない。
3 補欠として選任された理事又は監事の任期は、前任者の任期の満了する時までとする。
4 役員は、辞任又は任期の満了後において、定員を欠くに至った場合には、新たに選任された者が就任するまでは、その職務を行う権利義務を有する。

(解任)

第24条 役員は、社員総会の決議によって解任することができる。 ただし、監事を解任する場合は、総社員の半数以上であって、総社員の議決権の3分の2以上に当たる多数をもって行わなければならない。

(報酬等)

第25条 役員の報酬、賞与その他の職務執行の対価として当法人から受ける財産上の利益(以下「報酬等」という)は、社員総会の決議をもって定める。

(取引の制限)

第26条 理事が次に掲げる取引をしよう

とする場合は、理事会において、その取引について重要な事実を開示し、理事会の承認を得なければならない。

  1. 自己又は第三者のためにする当法人の事業の部類に属する取引
  2. 自己又は第三者のためにする当法人との取引
  3. 当法人がその理事の債務を保証することその他理事以外の者との間における当法人とその理事との利益が相反する取引

第5章 理事会

(構成)

第27条 当法人に理事会を置く。
2 理事会は、すべての理事をもって構成する。

(権限)

第28条 理事会は、次の職務を行う。

  1. 当法人の業務執行の決定
  2. 理事の職務の執行の監督
  3. 会長、副会長、専務理事及び常務理事の選定及び解職
(招集)

第29条 理事会は、会長が招集する。
2 会長が欠けたとき又は会長に事故があるときは、各理事が理事会を招集する。

(決議)

第30条 理事会の決議は、決議について特別の利害関係を有する理事を除く理事の過半数が出席し、その過半数をもって行う。
2 前項の規定に関わらず、一般法人法第96条の要件を満たしたときは、理事会の決議があったものとみなす。

(議事録)

第31条 理事会の議事については、法令で定めるところにより議事録を作成する。
2 出席した理事及び監事は、前項の議事録に署名又は記名押印する。

(理事会規則)

第32条 理事会に関する事項は、法令又はこの定款に定めるものの他、理事会において定める理事会規則による。

第6章 計 算

(事業年度)

第33条 当法人の事業年度は、毎年4月1日から翌年の3月31日までの年1期とする。

(事業計画及び収支予算)

第34条 当法人の事業計画及び収支予算については、毎事業年度開始日の前日までに会長が作成し、理事会の決議を経て社員総会の承認を受けなければならない。 これを変更する場合も同様とする。
2 前項の規定に関わらず、やむを得ない理由により予算が成立しないときは、会長は、社員総会の決議に基づき、予算成立の日まで前年度の予算に準じ収入を得又は支出することができる。
3 前項の収入支出は、新たに成立した予算の収入支出とみなす。

(事業報告及び決算)

第35条 この法人の事業報告及び決算については、毎事業年度終了後、代表理事が次の書類を作成し、監事の監査を受けた上で、理事会の承認を経て、定時社員総会に提出し、第1号の書類についてはその内容を報告し、第2号及び第3号の書類については承認を受けなければならない。

  1. 事業報告
  2. 貸借対照表
  3. 損益計算書(正味財産増減計算書)

2 前項の規定により報告され、又は承認を受けた書類の他、監査報告を主たる事務所に5年間、備え置くと共に、定款及び社員名簿を主たる事務所に備え置くものとする。

第7章 附 則

(最初の事業年度)

第36条 当法人の最初の事業年度は、当法人成立の日から令和〇年〇月〇日までとする。

(設立時の役員)

第37条 当法人の設立時の役員は、次の通りである。
設立時理事  a
設立時理事  b
設立時理事  c
設立時代表理事  d
設立時監事  e

(設立時社員の氏名及び住所)

第38条 設立時社員の氏名及び住所は、次の通りである。
北海道札幌市〇区○○丁○○  a
北海道札幌市〇区○○丁○○  b

(法令の準拠)

第39条 本定款に定めのない事項は、すべて一般法人法その他の法令に従う。
以上、一般社団法人都市緑化と野生動物保護協会設立のため、この定款を作成し、設立時社員が以下に記名押印する。
令和〇年〇月〇日
設立時社員  a  実印
設立時社員  b  実印


まとめ

一般社団法人の設立において、定款の作成は非常に重要なプロセスです。今回は、定款の基本構造や絶対的記載事項、相対的記載事項について詳しく説明しました。これらの要素を理解し、正確に定款を作成することで、法人の基盤が確立され、円滑な運営が可能となります。是非、この定款作成ガイドを参考にして、成功する法人設立を目指してください。

最後に

今回は一般社団法人設立のための定款作成について解説しました。
法人設立といえば司法書士というパブリックイメージがあると思います。しかし、定款作成に関しては行政書士の得意分野でもあります。定款作成について分からないことがあれば、専門家に相談することを推奨します。

今回は以上で終わります。
最後までご覧いただき、ありがとうございます。

この記事が法人設立や定款作成について学びたい方の参考になれば幸いです。
法務省:一般社団法人及び一般財団法人制度Q&A (moj.go.jp)

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投稿記事 - 熊谷行政書士法務事務所 広島県広島市 (lo-kuma.com)

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