特定秘密の漏洩がどれだけヤバい事なのかを解説

令和6年7月12日現在、防衛省が自衛隊員218人を特定秘密保護法違反などで処分するという報道が話題になりました。
この事件は、日本の防衛と安全保障にとって大きな問題を提起しています。特定秘密が漏洩することがどれほど重大な問題であるかを考えると、その影響は計り知れません。
自衛隊員200人超を処分 特定秘密の違法運用や不正受給で 防衛省 (msn.com)

しかし、多くの方々にとっては「特定秘密って何?どうせ大したことないんでしょ?」という状況であると思われます。
結論から言うと、これは先般のKADOKAWA企業情報漏洩事件が霞んで見えるほどの国家の安全を揺るがす一大事です。

今回は、特定秘密保護法の概要とその漏洩が引き起こす危険性について詳しく解説します。

事件の概要

2024年7月12日、防衛省は自衛隊員218人を特定秘密保護法違反などの理由で処分することを発表しました。この処分は、自衛隊内部で特定秘密の違法な運用や手当の不正受給が行われていたためです。特に海上自衛隊(海自)での違反行為が顕著でした。

特定秘密保護法違反

特定秘密保護法に基づき、特定秘密を取り扱うことができるのは、適性評価を受けた者に限られます。適性評価では、個人の信用性や安全性が審査され、秘密情報を取り扱うにふさわしいかどうかが判断されます。

しかし、海自では適性評価を受けていない隊員に特定秘密を取り扱わせるという違反が常態化していました。具体的には、適性評価を受けていない隊員が艦艇の艦橋や戦闘指揮所(CIC)に入り、特定秘密にアクセスする状況が続いていました。防衛省の調査によれば、資格のない隊員が特定秘密を扱っていた例は35隻、実際に情報を取り扱わせていた例は3隻であったとされています。

手当の不正受給

さらに、海自の潜水艦救難艦に所属する隊員が「潜水手当」を不正に受給していたことも明らかになりました。この手当は、潜水業務に従事する隊員に対して支給されるものですが、実際には潜水業務を行っていない隊員が受給していたのです。不正受給の額は4300万円にのぼり、基地内の食堂などで代金を払わずに食事をする「不正喫食」も確認されました。これらの不正行為については、海自警務隊が刑事事件として立件も視野に入れて捜査を進めています。

違反の背景と調査

防衛省は、これらの違反行為についての調査を行い、適性評価を受けていない隊員に特定秘密を取り扱わせる違反が海自で45件、空自で3件、陸自で2件あったことを確認しました。また、特定秘密の文書を不適正に廃棄するなどの違反も見つかり、陸海空の自衛隊および統合幕僚監部などで計15件が発覚しました。

最も古い違反例は2018年4月にさかのぼり、違反の疑いが2件については現在も調査が続けられています。しかし、防衛省は2014年までさかのぼって確認することは困難であると説明しています。

事件の影響と防衛省の対応

今回の一連の違反行為により、自衛隊内部の管理体制や運用方法に対する信頼が大きく揺らぐこととなりました。防衛省は、これらの違反行為に対して厳正な処分を行い、再発防止に向けた対策を講じるとしています。特に、特定秘密の適正な管理と運用を徹底するための監督体制の強化が求められています。

また、海上幕僚長の酒井良氏が今回の事件の責任を取って辞任することも正式に決まりました。防衛省は、今後も特定秘密の適正な取り扱いを確保し、自衛隊員の適性評価を徹底することで、再発防止に努める方針です。

特定秘密保護法とは?

特定秘密保護法(正式名称:特定秘密の保護に関する法律)は、2013年に成立し、2014年に施行されました。この法律は、日本の安全保障に関する情報のうち、特に秘匿することが必要な情報を「特定秘密」として指定し、その取扱者の適性評価や漏洩した場合の罰則などを定めています。主な内容は以下の通りです。

  • 特定秘密の指定
    防衛、外交、特定有害活動の防止、テロリズムの防止に関する情報が対象となります。
  • 適性評価の実施
    特定秘密を取り扱う者は、適性評価を受ける必要があります。
  • 漏洩等に対する罰則
    特定秘密を漏洩した場合、最長10年の懲役が科せられます。

法律の詳細とその運用

次に、特定秘密保護法の適用範囲と運用について詳しく見ていきましょう。

特定秘密の指定基準

特定秘密として指定される情報は、防衛、外交、特定有害活動の防止、テロリズムの防止に関するものです。これらの情報は、日本の安全保障にとって極めて重要であり、漏洩すると深刻な影響を及ぼします。

適性評価の実施

特定秘密を取り扱う者は、適性評価を受ける必要があります。適性評価では、個人の信用性や適格性が審査され、特定秘密を安全に取り扱えるかどうかが判断されます。

漏洩に対する罰則

特定秘密を漏洩した場合、10年以下の懲役または1000万円以下の罰金が科せられます。過失による漏洩でも2年以下の禁錮または50万円以下の罰金が科せられます。また、特定秘密の取得行為に対しても厳しい罰則が設けられています。

特定秘密の漏洩の影響

特定秘密が漏洩することは、日本の安全保障に甚大な影響を与えます。以下にその具体的な影響を示します。

自衛隊の運用が他国に知られるリスク

特定秘密には自衛隊の運用や防衛計画が含まれます。これが漏洩すると、他国は日本の防衛態勢を把握し、効果的に攻撃を仕掛けることが可能になります。特に戦争時における部隊の配置や武器の使用方法が他国に漏れると、自衛隊の防衛力が大幅に低下し、国の安全が脅かされます。
実際のところ、これが最大の懸念事項であると断言できます。
つまり、「有事の際の自衛隊の行動シナリオが誰でも閲覧できるような杜撰な管理をされていた」ということです。

外交関係の悪化

特定秘密には外交に関する情報も含まれます。これが漏洩すると、外国との信頼関係が損なわれ、外交交渉が困難になります。また、国際社会での日本の立場が弱体化し、国益が損なわれる可能性があります。

テロ対策の阻害

特定秘密にはテロリズムの防止に関する情報も含まれます。これが漏洩すると、テロリストに対する防御策が漏れ、テロ攻撃のリスクが高まります。国民の生命と財産を守るための対策が無効化される恐れがあります。

まとめ

特定秘密保護法は、日本の安全保障を守るための重要な法律です。特定秘密が漏洩することは、自衛隊の運用や外交関係、テロ対策などに甚大な影響を与えます。最近の自衛隊員の処分事例からもわかるように、特定秘密の適正な管理と運用が求められます。今後も特定秘密保護法の厳格な適用と、適性評価の徹底が必要です。

最後に

今回は特定秘密の漏洩がどれだけヤバい事なのかについて解説しました。

今回は以上で終わります。
最後までご覧いただき、ありがとうございます。

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投稿記事 - 熊谷行政書士法務事務所 広島県広島市 (lo-kuma.com)

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