国土利用計画法の届出制度を徹底解説:土地取引の重要ポイント
土地取引に関する法律や制度について御存じでしょうか?
特に、大規模な土地取引の際に避けて通れないのが「国土利用計画法の届出制度」です。この制度は、土地の適正な利用を促進し、無秩序な開発を防ぐために設けられています。しかし、どのような場合に届出が必要なのか、具体的にどのような手続きが求められるのかについては、あまり知られていません。今回は、国土利用計画法の届出制度について、詳しく解説していきます。
目次
- 1 国土利用計画法の届出制度とは?
- 2 国土利用計画法に関するQ&A
- 2.1 Q1. 届出書はいつ頃提出すればよいか?
- 2.2 Q2. 届出土地が2市町以上にまたがる場合、どうすればよいか?
- 2.3 Q3. 公簿面積で契約した土地(例:1,960㎡)が、実測すれば面積要件を超える場合、届出は必要か?
- 2.4 Q4. 市街化区域と市街化調整区域にまたがる土地(計4,900㎡)を購入した場合、届出は必要か?
- 2.5 Q5. 相続や贈与により土地に関する権利を取得した場合には、届出は必要か?
- 2.6 Q6. 信託受益権取引の譲渡については届出が必要か?
- 2.7 Q7. 借地契約については届出が必要か?
- 2.8 Q8. 「一団の土地」とはどのような土地を指すのか?
- 2.9 Q9. 一団の土地を購入するために、5人の地権者と個別に契約を行った場合、届出は1件にまとめてよいか?
- 2.10 Q10. 以前届出を行った土地の隣地500㎡を取得した場合、届出の対象になるか?
- 2.11 単独での購入の場合
- 2.12 Q11. 道路を挟んで隣接する2か所の土地を取得し、同一事業計画のもとに利用する場合、届出は必要か?
- 2.13 Q12. 既に所有している土地の隣接地で、基準面積未満の土地を取得した場合、届出は必要か?
- 2.14 Q13. 届出を要しない場合とは、どのような場合か?
- 2.15 Q14.届出をしなかった場合、罰則は?
- 3 一団の土地の判断基準
- 4 まとめ
- 5 最後に
国土利用計画法の届出制度とは?
国土利用計画法は、土地の適正な利用と保全を目的として制定された法律です。この法律には、土地取引に関する規定が含まれており、一定規模以上の土地取引を行う際には、契約後2週間以内に届出を行うことが義務付けられています。
1. 届出が必要な土地取引の条件
国土利用計画法の届出制度が適用される条件は、取引の面積によって異なります。以下に、具体的な基準を示します。
- 都市計画区域内の市街化区域
2,000㎡以上 - 都市計画区域内の市街化調整区域
5,000㎡以上 - 都市計画区域外
10,000㎡以上
これにより、取引を行う土地が上記の条件を満たす場合には、届出が必要となります。契約の金額に関係なく、面積が基準を超えるかどうかがポイントです。
2. 届出のタイミングと手続き
届出書は、契約(予約を含む)締結日から2週間以内に提出する必要があります。もし届出期間の最終日が土日祝日等に当たる場合は、原則としてその前後の開庁日が提出期限となります。
また、停止条件付き契約や解除条件付き契約、予約契約であっても、契約締結日を基準に2週間以内に届出が必要です。これは、土地の取引において不確定な要素があったとしても、契約が成立した時点で速やかに届出を行うことが求められているためです。
国土利用計画法に関するQ&A
Q1. 届出書はいつ頃提出すればよいか?
契約締結日から2週間以内に提出する必要があります。例えば、契約日が5月1日であれば、5月15日が提出期限となります。もしこの日が休日であれば、基本的に次の開庁日が提出期限です。ただし、細部は所轄の許可行政庁に問い合わせる必要があります。
Q2. 届出土地が2市町以上にまたがる場合、どうすればよいか?
この場合、それぞれの市町に届出を行う必要があります。届出書には、土地が複数の市町にまたがっている旨を記載する欄があります。確実に記載することを留意しましょう。
Q3. 公簿面積で契約した土地(例:1,960㎡)が、実測すれば面積要件を超える場合、届出は必要か?
原則として届出は不要です。公簿面積で契約した場合、届出時点での面積の根拠が公簿面積となります。実測で2,000㎡を超えたとしても、契約時点での公簿面積が基準となります。
ただし、この部分は自治体が定める条例等により扱いが異なります。対象の自治体に事前に確認する必要があります。
Q4. 市街化区域と市街化調整区域にまたがる土地(計4,900㎡)を購入した場合、届出は必要か?
区域が複数にまたがる場合、どちらか一方の区域で基準面積を超えるかで判断します。具体的には、面積要件の小さい方の基準を適用するためです。
例えば、購入する土地が市街化区域1,900㎡、市街化調整区域3,000㎡の計4,900㎡にまたがっているとします。このケースでは、市街化区域の基準面積である1,000㎡を超えています。よって、合計面積が市街化区域の基準を満たしているため、届出が必要となります。
この適用基準により、都市計画区域内での土地取引が広範囲にわたって監視され、適正な土地利用が確保される仕組みになっています。土地の利用目的や計画によっては、区域の区分が異なることで生じる特別な規制や条件にも注意を払う必要があります。
Q5. 相続や贈与により土地に関する権利を取得した場合には、届出は必要か?
相続や贈与は対価の授受を伴わないため、届出は不要です。
Q6. 信託受益権取引の譲渡については届出が必要か?
最終的に受益権者に土地の所有権が帰属する可能性がある信託ならば、届出が必要です。
Q7. 借地契約については届出が必要か?
借地契約時に権利金などの一時金の支払いがある場合には届出が必要です。ただし、敷金や保証金のように後で返還されるものや地代として支払われるものは不要です。
Q8. 「一団の土地」とはどのような土地を指すのか?
定義と解説
「一団の土地」とは、土地利用上、現に一体の土地を形成している土地や、隣接する土地などで一体利用が可能な土地を指します。この概念は、土地の利用形態や取得の計画に基づいて判断されます。
現に一体の土地を形成している場合
現に一体の土地を形成とは、物理的に一つの塊として利用される土地を意味します。例えば、複数の地番に分かれている土地でも、実際には一つの農場や工場として機能している場合が該当します。
隣接地など一体利用が可能な場合
隣接地など一体利用が可能な土地とは、物理的には分かれているが、利用方法や計画によって一体として利用される土地を指します。例えば、道路を挟んで隣接する土地が一つの工場用地として利用される場合がこれに当たります。
一連の計画のもとに取得する場合
一連の計画のもとに取得する土地とは、複数の土地を段階的に取得し、最終的に一体として利用する計画がある場合を指します。この場合、取得する各土地が面積要件未満であっても、合計面積が基準を超える場合はそれぞれの取得時に届出が必要となります。
例えば、年度をまたいで隣接する複数の土地を購入し、全体として一つの開発計画に組み込む場合、その合計面積が基準面積を超えれば、「一団の土地」として届出が必要です。また、異なる所有者から個別に土地を購入した場合でも、これが一連の計画の一部として行われるならば、一団の土地と認識されます。
Q9. 一団の土地を購入するために、5人の地権者と個別に契約を行った場合、届出は1件にまとめてよいか?
個別契約の場合
一団の土地を形成するために複数の地権者と個別に契約を行う場合、それぞれの契約について個別に届出が必要となります。具体的には、各契約ごとに届出書を作成し、契約締結日から2週間以内に提出する義務があります。このため、5人の地権者とそれぞれ別々に契約を交わした場合には、5件の届出が必要となります。
連名契約の場合
一方、5人の地権者が共同で1つの契約書に署名する連名契約を行った場合には、届出は1件にまとめることが可能です。この場合、契約書自体が一つであり、契約日も一つに統一されているため、まとめて届出を行うことが認められます。
契約日が異なる場合
もし個別契約の契約日が異なる場合、各契約日から2週間以内に届出が必要です。この点も注意が必要で、届出の期限を過ぎると罰則が適用される可能性があります。
Q10. 以前届出を行った土地の隣地500㎡を取得した場合、届出の対象になるか?
買い進みの意思がある場合
当初から土地を拡張する意思があり、一連の計画の下で隣接地を取得する場合、合計面積が届出の基準面積を超えるときには、新たに取得した500㎡の土地も含めて届出が必要です。これは、計画的に土地を購入する場合、その全体の面積が届出要件を満たすかどうかが基準となるためです。例えば、既に取得した土地が700㎡であった場合、新たに取得する500㎡を加えると合計1,200㎡となり、市街化区域の基準面積1,000㎡を超えるため、届出が必要となります。
単独での購入の場合
一方、偶然隣接地を購入する場合や、計画的な拡張ではなく単独での購入である場合は、新たに取得した土地が基準面積未満であれば届出は不要です。例えば、既に所有している土地が500㎡で、新たに取得する500㎡が単独の取引であれば合計1,000㎡となります。この場合、市街化区域の基準面積1,000㎡に達しているため、届出が必要となります。
Q11. 道路を挟んで隣接する2か所の土地を取得し、同一事業計画のもとに利用する場合、届出は必要か?
横断歩道や架橋がある、容易に行き来ができる等、土地利用上一体としての利用が可能と認められるものについては、道路・小河川等により分断されている場合でも「一団の土地」となります。そのため、届出が必要です。
Q12. 既に所有している土地の隣接地で、基準面積未満の土地を取得した場合、届出は必要か?
一連の計画による継続的な買収であれば、届出が必要です。たまたま単独に隣接地を購入する場合は、届出は不要です。
Q13. 届出を要しない場合とは、どのような場合か?
届出が不要な場合は以下の通りです。
- 農地法第3条第1項の許可を要する場合
- 民事調停法による調停に基づく場合
- 民事訴訟法による和解に基づく場合
- 民事再生法、会社更生法等の規定に基づく手続きにおいて裁判所の許可を得て行われる場合
- 当事者の一方または双方が国等である場合
- 滞納処分、強制執行、担保権の実行としての競売等の場合
Q14.届出をしなかった場合、罰則は?
6カ月以下の懲役または100万円以下の罰金が科せられるおそれがあります。
第四十七条 次の各号の一に該当する者は、六月以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。
一 第二十三条第一項又は第二十九条第一項の規定に違反して、届出をしなかつた者
二 第二十七条の四第一項(第二十七条の七第一項において準用する場合を含む。)の規定に違反して、届出をしないで土地売買等の契約を締結した者
三 第二十三条第一項、第二十七条の四第一項(第二十七条の七第一項において準用する場合を含む。)又は第二十九条第一項の規定による届出について、虚偽の届出をした者
国土利用計画法
一団の土地の判断基準
幅員の考慮
道路の幅員が狭い場合、例えば小規模な道路や小道であれば、容易に行き来が可能と見なされます。そのため、一体的な土地利用が可能と認められる場合があります。
横断歩道や架橋の有無
土地の間に横断歩道や架橋が設置されている場合、歩行者や車両の行き来が容易であり、一体的に利用できると判断されることが多いです。物理的な分断が少なくなるため、一体利用が可能と見なされやすくなります。
現地の状況
現地の具体的な状況、例えば両土地が同じフェンスや塀で囲まれている場合、一体として利用される前提であると認識されます。実際にどのように土地が使用されているか、あるいは今後どのように使用される予定かが含まれます。
利用計画
取得した土地が同一の事業計画のもとで利用される場合、その計画が一体的な土地利用を目的としているかどうかが判断基準となります。例えば、両土地を一つの施設やプロジェクトの敷地として利用する計画が明確であれば、「一団の土地」として扱われる可能性が高いです。
具体的な例
例えば、ある事業者が道路を挟んで2か所の土地を購入し、そこに大規模なショッピングセンターを建設する計画があるとします。この場合、ショッピングセンターの駐車場が両方の土地にまたがって設置され、施設自体も連結しているとすれば、一体的な土地利用と認められるでしょう。
まとめ
国土利用計画法の届出制度は、土地の適正な利用と保全を図るための重要な仕組みです。特に、大規模な土地取引を行う際には、この制度の理解と適切な対応が求められます。届出が必要な場合、契約締結日から2週間以内に手続きを行いましょう。また、届出が不要な場合でも、関連する法律や規定を十分に理解しておくことが重要です。この記事を参考にして、土地取引における適正な手続きを確実に行いましょう。
最後に
今回は国土利用計画法の届出について解説しました。
今回は以上で終わります。
最後までご覧いただき、ありがとうございます。
この記事が不動産関係について学びたい方の参考になれば幸いです。
土地・不動産・建設業:土地取引規制制度 - 国土交通省 (mlit.go.jp)
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投稿記事 - 熊谷行政書士法務事務所 広島県広島市 (lo-kuma.com)
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