株式会社設立の第一歩:定款の記載事項を徹底解説
株式会社の設立は、多くの企業家やビジネスマンにとって重要なステップです。しかし、設立手続きの中でも特に重要なのが「定款」の作成です。定款は会社の基本的なルールや運営方法を定めるもので、これがなければ会社の設立は成り立ちません。今回は、定款の絶対的記載事項を中心に、どのように記載すべきかについて詳しく解説します。
目次
定款の役割と記載事項
株式会社の設立は、まず発起人による定款の作成から始まります。発起人とは、会社設立の企画者として定款に署名した人を指します。定款には絶対的記載事項、相対的記載事項、任意的記載事項の3種類があります。
絶対的記載事項
絶対的記載事項とは、定款に必ず記載しなければならない事項であり、これを欠くと定款全体が無効になります。具体的には以下の6つです。
1. 会社の目的
会社の目的は、出資を検討する者にとって重要な判断材料です。目的は営利性があり、明確かつ具体的に記載する必要があります。将来行う可能性のある事業も含めて記載すると、後々の変更手続きを省けます。
2. 会社の商号
商号は、会社の名前のことです。「株式会社」を商号に含める必要があります。また、不正な目的で他の会社と誤認される恐れのある商号を使用すると、使用差止請求を受ける可能性がありますので、注意が必要です。
3. 本店の所在地
本店の所在地は、市区町村名までの記載と、具体的な住所まで記載する方法があります。後者の場合、同じ市区町村内で移転する際にも定款変更が必要になるため、前者の方が将来的な手間を省ける場合があります。
4. 設立時の出資額又はその最低額
設立時に発起人が払い込む出資額のことです。この額が資本金になります。設立時の資本金は、会社の信用力や運営資金に直結するため、慎重に設定しましょう。
5. 発起人の氏名・住所
発起人の名前と住所を明記する必要があります。なお、発起人は会社設立の企画者として責任を負います。
6. 発行可能株式総数
将来、会社が発行できる株式の上限を定めます。これは絶対的記載事項ではありませんが、記載しておくことが望ましいです。
定款作成後の手続き
定款作成後は、発起人全員が署名または記名押印を行い、公証人の認証を受ける必要があります。認証を受けた定款は、会社設立のための重要な添付書類として使用されます。定款を電子公証する場合は、電子署名が必要です。
注意点
定款の絶対的記載事項が欠けると、定款自体が無効になります。また、目的や本店の所在地については、将来の変更を見越して記載方法を工夫することが重要です。
実際の定款作成例
株式会社A商事 定款
第1章 総則
(商号)
第1条 当会社は、株式会社A商事と称する。
(目的)
第2条 当会社は、次の事業を行うことを目的とする。
- 不動産の売買、賃貸、仲介及び管理
- 宅地建物取引業
- 建設業
- 産業廃棄物収集運搬業
- 電気工事業
(本店の所在地)
第3条 当会社は、本店を東京都新宿区に置く。
(公告の方法)
第4条 当会社の公告は、官報に掲載する方法により行う。
第2章 株式
(発行可能株式総数)
第5条 当会社が発行することができる株式の総数は、1000株とする。
(株券の不発行)
第6条 当会社の株式については、株券を発行しない。
(株式の譲渡制限)
第7条 当会社の発行する株式は、すべて譲渡制限株式とし、これを譲渡によって取得するには、株主総会の承認を要する。
(相続人等に対する株式の売渡請求)
第8条 当会社は、相続その他の一般承継により当会社の株式を取得した者に対し、当該株式を当会社に売り渡すことを請求することができる。
(名義書換)
第9条 株式取得者が株主名簿記載事項を株主名簿に記載又は記録することを請求するには、当会社所定の書式による請求書に、その取得した株式の株主として株主名簿に記載又は記録された者又はその相続人その他の一般承継人及び株式取得者が署名又は記名押印し共同して請求しなければならない。ただし、会社法施行規則22条1項各号に定める場合には、株式取得者が単独で請求することができる。
(質権の登録及び信託財産の表示)
第10条 当会社の株式について質権の登録又は信託財産の表示を請求するには、当会社所定の書式による請求書に当事者が署名又は記名押印し、共同して請求しなければならない。その登録又は表示の抹消についても同様とする。
(手数料)
第11条 前2条に定める請求をする場合には、当会社所定の手数料を支払わなければならない。
(株主の住所等の届出)
第12条 株主及び登録質権者又はその法定代理人若しくは代表者は、当会社の所定の書式により、その氏名・住所及び印鑑を当会社に届け出なければならない。これらを変更した場合も同様とする。
2 当会社に提出する書類には、前項により届け出た印鑑を用いなければならない。
(基準日)
第13条 当会社は、毎年3月末日の最終の株主名簿に記載又は記録された議決権を有する株主をもって、その事業年度に関する定時株主総会において権利を行使することのできる株主とする。
2 前項の他、株主又は質権者として権利を行使すべき者を確定するために必要があるときは、取締役の過半数の決定をもって臨時に基準日を定めることができる。ただし、この場合には、その日を2週間前までに公告するものとする。
第3章 株主総会
(招集及び招集権者)
第14条 当会社の定時株主総会は、毎事業年度の末日から3か月以内に招集し、臨時株主総会は、随時必要に応じて招集する。
2 株主総会は、法令に別段の定めがある場合を除く他、取締役社長がこれを招集する。社長に事故若しくは支障があるときは、あらかじめ定めた順位により他の取締役がこれを招集する。株主総会を招集するには、会日より3日前までに、議決権を有する各株主に対して招集通知を発するものとする。ただし、総株主の同意があるときはこの限りではない。
(議長)
第15条 株主総会の議長は、社長がこれに当たる。社長に事故若しくは支障があるときは、他の取締役が議長になり、取締役全員に事故があるときは、総会において出席株主のうちから議長を選出する。
(決議の方法)
第16条 株主総会の普通決議は、法令又は定款に別段の定めがある場合を除き、出席した議決権を行使できる株主の議決権の過半数をもって行う。
(議決権の代理行使)
第17条 株主は、代理人によって議決権を行使することができる。この場合には、総会ごとに代理権を証する書面を提出しなければならない。
2 前項の代理人は、当会社の議決権を有する株主に限るものとし、かつ、2人以上の代理人を選任することはできない。
(総会議事録)
第18条 株主総会における議事の経過の要領及びその結果並びにその他法令に定める事項は、議事録に記載又は記録し、議長及び出席した取締役がこれに署名若しくは記名押印又は電子署名をし、10年間本店に備え置く。
第4章 取締役
(取締役の員数)
第19条 当会社には、取締役3名以内を置く。
(取締役の選任)
第20条 当会社の取締役は、株主総会において、議決権を行使することができる株主の議決権の3分の1以上に当たる株式を有する株主が出席し、その議決権の過半数の決議によって選任する。
2 前項の選任については、累積投票の方法によらない。
(取締役の資格)
第21条 当会社の取締役は、当会社の株主の中から選任する。ただし、必要があるときは、株主以外の者から選任することを妨げない。
(取締役の任期)
第22条 取締役の任期は、選任後2年以内に終了する最終の事業年度に関する定時株主総会の終結時までとする。
2 補欠又は増員により就任した取締役の任期は、前任者又は他の在任取締役の任期の残存期間と同一とする。
(代表取締役及び社長)
第23条 当会社に取締役を複数名置く場合には、取締役の互選により代表取締役1名を定め、代表取締役をもって社長とする。
2 当会社に置く取締役が1名の場合には、その取締役を社長とする。
3 社長は当会社を代表する。
第5章 計算
(事業年度)
第24条 当会社の事業年度は、毎年4月1日から翌年3月末日までの年1期とする。
(剰余金の配当)
第25条 剰余金の配当は、毎事業年度末日現在の最終の株主名簿に記載又は記録された株主及び登録質権者に対して支払う。
(配当金の除斥期間)
第26条 剰余金の配当が、支払いの提供をした日から3年を経過しても受領されないときは、当会社は、その支払いの義務を免れるものとする。
第6章 附則
(設立に際して発行する株式)
第27条 当会社の設立時発行株式の数は200株とし、その発行する価額は1株につき金1万5000円とする。
(設立に際して出資される財産の価額又はその最低額及び資本金)
第28条 当会社の設立に際して出資される財産の価額は金300万円とする。
2 当会社の設立時資本金は金300万円とする。
(最初の事業年度)
第29条 当会社の最初の事業年度は、当会社成立の日から平成26年3月末日までとする。
(設立時取締役)
第30条 当会社の設立時取締役は、次の通りとする。
設立時取締役
A
B
C
(発起人の氏名、住所、割当を受ける株式数及びその払込金額)
第31条 発起人の氏名、住所、発起人が割り当てを受ける株式数及びその払込金額は、次の通りである。
住所 北海道札幌市〇区○○ A 普通株式 80株 金120万円
住所 北海道札幌市〇区○○ B 普通株式 60株 金90万円
住所 北海道札幌市〇区○○ C 普通株式 60株 金90万円
(法令の準拠)
第32条 本定款に定めのない事項は、すべて会社法その他の法令に従う。
以上、株式会社A商事を設立するため、この定款を作成し、発起人が次に記名押印する。
平成25年11月27日
発起人
住所 北海道札幌市〇区○○ 実印 A (個人)
住所 北海道札幌市〇区○○ 実印 B (個人)
住所 北海道札幌市〇区○○ 実印 C (個人)
まとめ
このように、実際の記載例を見てみると、そこまで難解ではないことがわかりますね。
定款は株式会社設立の基礎となる重要な書類です。絶対的記載事項を正確に記載し、将来の運営に支障が出ないように注意することが大切です。これらの基本を押さえておくことで、スムーズな株式会社設立が可能となります。
最後に
今回は定款の記載事項について解説しました。
今回は以上で終わります。
最後までご覧いただき、ありがとうございます。
この記事が法人設立について学びたい方の参考になれば幸いです。
【参考:法務省:株式会社の設立手続(発起設立)について (moj.go.jp)】
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投稿記事 - 熊谷行政書士法務事務所 広島県広島市 (lo-kuma.com)
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