農地の売主と転買主との間で所有権移転登記ができるか?農地法判例解説

農地の売買契約上の買主の権利を譲り受けた者が、当初の売主から直接買受けたとして許可申請をし、これに対して知事の許可があれば、所有権移転は認められるのでしょうか?
今回は、判例に基づき、この問題について解説します。
【判例 最高裁判所第三小法廷 昭和38年9月3日

事件の背景

登場人物と関係性

本件では、以下の登場人物が関与しています。

  • 上告人(A)
    農地の元所有者
  • 財産管理人(D)
    上告人の財産を管理していた者
  • 訴外人(E)
    Dから農地を購入した者
  • 被上告人(B)
    Eから農地を購入した者

時系列と紛争の経緯

  1. 昭和31年4月11日
    財産管理人Dが、上告人Aの農地を訴外人Eに売却。
  2. 昭和32年6月28日
    訴外人Eが、その農地を被上告人Bに転売。
  3. 昭和32年12月20日
    上告人Aと被上告人Bの間での売買契約について知事の許可が下りる。
  4. 裁判の開始
    上告人Aが、被上告人Bに対して農地の所有権移転の無効を主張し、裁判が開始。

最高裁の判断に至る経緯

許可申請と所有権の問題

本件の核心は、「農地の売買契約上の買主の権利を譲り受けた者が、当初の売主から直接買受けたとして許可申請をし、これに対して知事の許可があれば、所有権が移転する」という最高裁の判断です。この判断に至る経緯を詳細に見ていきます。

一審および二審の判断

一審および二審では、被上告人Bが訴外人Eから農地を購入したことに関する事実認定が行われました。その結果、被上告人Bが農地の所有権を有するとの判断が下されました。これに対して、上告人Aは以下の点で異議を唱えました。

  1. 偽造許可申請書の存在
    上告人は、許可申請書が偽造されたものであると主張しました。
  2. 許可の対象となる契約
    上告人は、知事の許可が上告人Aと被上告人Bの間の売買契約に対するものであり、訴外人Eと被上告人Bの間の売買契約に対する許可が存在しないと主張しました。

最高裁の最終判断

最高裁は以下の理由から、上告人Aの主張を退けました。

許可申請書の偽造について

最高裁は、許可申請書の偽造については裁判上の論点ではないとして退けました。

 論旨中、所論許可申請書の偽造をいう点は、原審認定にそわないことを主張するものであり、右偽造を前提として原判決の違法をいう所論は、すべて採用できない。

判決文より抜粋

許可の対象について

最高裁は、被上告人Bが訴外人Eから買主の権利を譲り受け、知事の許可を得て所有権が移転したという事実を認定しました。農地法第3条に基づき、許可申請が適正に行われていれば、所有権の移転は有効であると判断しました。

まとめ

当該判決は、農地売買における許可申請の重要性を再認識させるものでした。特に、買主の権利を譲り受けた者が適正に許可申請を行えば、所有権移転が有効であるという点が確認されました。農地売買を検討している方々にとって、法的手続きの適正性を確保することがいかに重要かを示す一例となりました。

今回の判決を通じて、農地法や民事訴訟法の理解が深まることを願います。また、農地売買に関する法的手続きを遵守することで、トラブルを未然に防ぐことができるでしょう。

最後に

今回は農地の売主と転買主との間で所有権移転登記ができるかについて解説しました。

最後までご覧いただき、ありがとうございます。
この記事が農地転用許可の取得を検討されている方の参考になれば幸いです。

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投稿記事 - 熊谷行政書士法務事務所 広島県広島市 (lo-kuma.com)

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