通謀虚偽表示による不動産競売と所有権問題

善意で購入した不動産が突然所有権を巡って争われることになったらどう感じますか?
このような事態が実際に起こり、裁判で争われたケースがあります。今回は、判例をもとに、その背景と裁判所の判断について詳しく解説します。
【判例 最高裁判所第三小法廷 昭和44年5月27日

事件の背景と登場人物

登場人物と相関関係

  1. 甲(原告)
    乙の承諾を得て、乙名義で不動産を競落。
  2. 乙(被告)
    甲の代理で不動産を名義取得。
  3. 丙(善意の第三者)
    乙から不動産を購入した。

甲と乙は、通謀虚偽表示を行い、丙はその事実を知らずに不動産を購入しました。

紛争の経緯

競落と名義取得

最初に、甲(原告)は乙(被告)の承諾を得て、不動産を乙の名義で競落しました。競落とは、競売において物件を落札することを意味します。この段階では、甲は乙との間で通謀しており、虚偽の意思表示を行って乙名義で不動産を取得したことになります。

売買と譲渡

次に、乙はこの不動産を丙(善意の第三者)に売却しました。丙は、乙が正当な所有者であると信じて、善意で不動産を購入しました。丙は、乙から不動産を譲り受けた際、乙が所有権を持っていると信じていたため、この取引は丙にとって正当なものでした。

訴訟の発端

最終的に、甲は登記の欠缺を理由に、丙の所有権の主張を否定しようとしました。甲は、乙との間で行った通謀虚偽表示を根拠に、丙に対してその不動産の所有権を主張できないと主張しました。

裁判所の判断

虚偽表示と善意の第三者

民法第94条第1項では、通謀虚偽表示を無効としています。また、第2項では、その無効を善意の第三者に対抗することができないとしています。本件では、甲と乙の間の虚偽表示が問題となりましたが、丙がその外形を信頼して不動産を購入したため、丙の権利が保護されるべきとされました。

虚偽表示
第94条

  1. 相手方と通じてした虚偽の意思表示は、無効とする。
  2. 前項の規定による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない。
民法

民法第94条第2項の適用

裁判所は、甲が乙との間で行った虚偽表示について、丙がその外形を信頼して取引に入った場合には、甲は丙に対して所有権の取得を否定することはできないとしました。これは、虚偽表示の外形を信頼した第三者の権利を保護するためです。

判決の核心部分

本件判決の核心部分は、「甲が乙の承諾のもとに乙名義で不動産を競落し、丙が善意で乙からこれを譲り受けた場合においては、甲は、丙に対して、登記の欠缺を主張して右不動産の所有権の取得を否定することはできない」という判断です。裁判所は、甲と乙の通謀虚偽表示に基づく外形を信頼した丙の権利を優先的に保護しました。

まとめ

本件判決は、不動産競売における通謀虚偽表示と善意の第三者保護についての重要な判例です。裁判所は、外形を信頼した第三者の権利を保護するために、虚偽表示を行った者がその外形を除去しない間に第三者が取引に入った場合、登記の欠缺を主張することはできないと判断しました。この判決は、不動産取引の安全を確保するための重要な指針となります。
本件から学ぶべき教訓は、虚偽表示による外形を利用した取引において、善意の第三者の権利がいかに重視されるかという点です。不動産取引においては、信頼できる情報に基づいて行動し、虚偽表示のリスクを回避することが重要です。

最後に

今回は通謀虚偽表示による不動産競売と所有権問題について解説しました。

今回は以上で終わります。
最後までご覧いただき、ありがとうございます。

この記事が民法について学びたい方の参考になれば幸いです。

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投稿記事 - 熊谷行政書士法務事務所 広島県広島市 (lo-kuma.com)

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