不法行為による損害賠償と遅延損害金:最高裁判所の重要判決

今回は、不法行為に基づく損害賠償債務の遅延損害金を元本に組み入れることができるかについて解説します。
この判例は、被害者と加害者双方にとって大きな意味を持ち、法律の専門家や一般市民の間で注目を集めました。
【判例 最高裁判所第三小法廷 令和4年1月18日

事件の背景

本件の主な登場人物は、以下の通りです。

  • 上告人:本件の原告であり、被上告人会社の株主です。
  • 被上告人Y2:被上告人会社の代表取締役であり、新株発行を主導した人物です。
  • 被上告人会社:被上告人Y2が代表を務める会社で、事件の当事者の一つです。

事件の発端

事件のきっかけは、被上告人Y2が主導して行った新株発行(本件新株発行)です。被上告人Y2は、上告人を被上告人会社から排除する目的で2013年3月に新株発行を実施しました。この新株発行により、上告人が保有する株式の価値が大幅に低下しました。通常、新株発行は企業が新たな資本を調達するために行われます。しかし、今回は上告人を会社から排除する目的がありました。これが違法行為として問題視されました。

訴訟提起の経緯

この新株発行が行われたことにより、上告人の株式の価値が著しく低下し、結果的に上告人に損害を与えました。上告人はこれを受けて、2015年3月に被上告人Y2および被上告人会社に対して損害賠償金と遅延損害金の連帯支払いを求める訴訟を提起しました。この訴訟では、新株発行が違法であることと、これによって生じた損害について賠償を求めました。

意思表示

訴訟が開始された後、上告人は2015年6月に被上告人らに対して、遅延損害金を元本に組み入れる意思表示をしました。この意思表示は、民法405条に基づくもので、通常の利息を元本に組み入れることを認めるための特例的な措置です。上告人は、これにより損害額を増やして損害賠償の請求額を高めようとしました。

利息元本への組入れ)
第405条
利息の支払が1年分以上延滞した場合において、債権者催告をしても、債務者がその利息を支払わないときは、債権者は、これを元本に組み入れることができる。

民法

原審の判決とその内容

判決

原審では、被上告人Y2が主導した本件新株発行が違法であり、不法行為に該当するという判断が下されました。これにより、上告人の損害賠償請求は一部認められました。しかし、焦点となったのは、上告人が請求した遅延損害金を元本に組み入れることが認められるかどうかでした。

民法405条の適用の有無

民法405条は、一定の条件下で債権者が利息を元本に組み入れることを認めています。この規定の目的は、利息の支払いを延滞する債務者によって生じる債権者の損失を防ぐことです。しかし、原審は、不法行為に基づく損害賠償債務は、貸金債務とは異なり、賠償額が不確定な場合が多いことを指摘しました。そのため、遅延損害金を元本に組み入れることが不適切であると判断しました。

結論と判決の影響

最終的に、最高裁は原審の判断を支持し、不法行為に基づく損害賠償債務において遅延損害金を元本に組み入れることはできないという判決を下しました。この判決は、損害賠償請求に関する法律の適用において新たな指針を示すものであり、今後の類似ケースにおける判例として重要な影響を持ちます。この判決を通じて、裁判所は損害賠償請求の際の債権者と債務者のバランスをより慎重に考慮し、今後の訴訟においても適用される判断基準を示したと言えるでしょう。

最後に

今回は不法行為に基づく損害賠償債務の遅延損害金について解説しました。
個人的には「まあ、そりゃそうだろ…」という感想ですね。特に言うことは無いです。

今回は以上で終わります。
最後までご覧いただき、ありがとうございます。

この記事が民法について学びたい方の参考になれば幸いです。

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