兵庫県個人情報開示事件:審査請求の対象行政庁を誤った場合
審査請求をする場合、適切な対象行政庁に申請をしなければなりません。
この判例は、行政手続において正確な審査請求を行うことの重要性を示すものです。この事件では、審査請求を行う際に相手方な行政庁を誤ったことが問題となりました。正確な行政庁に対して手続きを取ることが、訴訟の成否に大きく関わることが明らかになった判例と言えます。
【判例 最高裁判所第二小法廷 令和3年1月22日】
目次
事件の背景
この事件は、兵庫県の病院事業に関する個人情報の開示を巡るものでした。被上告人、病院事業の管理者、兵庫県知事の3者が関わっています。それぞれの行動や立場について、以下に時系列で解説します。
開示請求
被上告人は、叔父の診療記録を確認するために、兵庫県の個人情報保護条例に基づいて情報開示を求めました。開示請求先として、兵庫県の病院事業を管理する者(管理者)を指名し、彼が持つ権限で開示してもらえることを期待していました。
管理者の不作為
病院事業の管理者は、開示請求に対し被上告人が叔父の任意後見人であることを理由に、情報開示を拒否しました。管理者は、任意後見人である被上告人に開示請求権がないと判断し、適切な対応をせずに情報開示の処分を行いませんでした。この行動は「不作為」として問題視されました。
対象行政庁を知事とした審査請求
被上告人は、病院事業の管理者が情報開示に応じなかったことに不満を抱きました。そして、上位機関である兵庫県知事を対象行政庁として管理者の不作為につき審査請求を行いました。しかし、知事はこの審査請求に対して裁決を行わず、最終的には病院事業の管理者が再び審査請求を却下する裁決を行いました。
この経緯は、被上告人にとって複雑で理不尽なものでした。結果として、被上告人は知事と管理者の行為に対する裁判を起こすに至りました。
争点
請求1(裁決取消請求)
この請求は、被上告人が管理者が行った裁決を違法と主張し、その裁決の取消を求めたものです。具体的には、管理者が権限のない者でありながら裁決を下したことを問題視しています。被上告人は、管理者には情報開示に関する裁定権限がないと主張し、そのため管理者による裁決は違法であると主張しました。
請求2(知事の不作為違法確認請求)
この請求では、被上告人が知事の不作為が違法であると主張し、違法性の確認を求めました。具体的には、知事が被上告人が提起した審査請求に対して適切な対応をせず、不作為を犯したと主張しました。
請求3(義務付け請求)
この請求では、被上告人が知事に対し、審査請求を認容する裁決をすることを求めました。具体的には、知事に対し、審査請求に対する裁決を行う義務があると主張しています。被上告人は、知事が審査請求に適切に応じることが求められると考えており、その義務を認めさせることを目的としていました。
請求4(慰謝料請求)
最後の請求は、被上告人が管理者の不作為により精神的苦痛を被ったとして、国家賠償法に基づく慰謝料の支払いを求めたものです。被上告人は、管理者の不作為が直接的な精神的苦痛を引き起こしたと主張しています。
判決のポイント
被告の代表者を誤って提起された訴え
地方公営企業法の規定により、病院事業の管理者は事業執行の代表権を持ちます。しかし、知事はその代表権を持ちません。被上告人が知事を被告として提訴したことは、法的に不適法でした。この不備は補正不能と判断されました。裁判所は被告として知事を認めず、訴訟を進めることができないとの結論を下しました。
審査請求の対象行政庁を誤った審査請求
行政不服審査法によれば、病院事業管理者の不作為の審査請求は管理者に行うべきです。しかし、被上告人は誤って知事を審査請求の対象としました。知事はこの件において、審査請求に対する応答義務を負っていません。従って知事に対する審査請求は不適法であり、その不備は補正できないとされました。審査請求の対象行政庁を間違えている以上、当然の処置と言えるでしょう。
結論
裁判所は、原判決を破棄、第1審判決が適法であるとし被上告人の控訴を棄却しました。
まとめ
この裁判は、行政手続における正確な判断の重要性を強調しています。特に、適切な審査請求の対象行政庁は適切な行政庁を特定することが重要です。法的手続においては、相手方の特定や請求内容の明確さが訴訟結果に直接影響します。
最後に
今回は審査請求の対象行政庁を間違えた場合の判例について解説しました。
今回は以上で終わります。
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投稿記事 - 熊谷行政書士法務事務所 広島県広島市 (lo-kuma.com)
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