設備設置権のケースバイケース:相手方が所在不明の場合
設備設置権とは、他人の土地を通じて自身の土地に必要な設備を設置するための権利です。この権利の行使は、特に隣接する土地が異なる所有者によって所有されている場合、複雑な問題を引き起こす可能性があります。
今回は、施設設置権についての解説記事の第2弾です。
目次
事例
甲地の所有者であるAは、自身の土地に建築物を有している。また、隣接する乙地を通じて市道の主要な配水管に接続するための給水管を設置している。
乙地はかつてBが所有していた。しかし、Bの死後、遺産分割が完了しておらず、登記名義はBのままである。
Aがリフォームを計画している中で、給水管の規模を拡大する必要が生じた。そのため、既存の給水管を更新する必要がある。Aは乙地の利用のためBの相続人と必要な協議をしたいと考えている。
しかし、Bの相続人がいずれも所在不明である。
Aはどのように対処すべきか?
回答:まずは公示による意思表示を検討すべき
設備設置権の行使にはいくつかのステップが必要ですが、特に相手方が不特定または所在不明の場合、法的手続きがさらに重要になります。
事前の通知
所有者不明であっても、可能な限り通知を行う必要があります。公示による意思表示を通じて、法的手続きの透明性を保つことが求められます。公示による意思表示は相手方に対して強制的に意思の到達がなされる強行的手段です。どうしても連絡が取れない相手に対する最終手段だと考えてください。
(公示による意思表示)
第98条民法
- 意思表示は、表意者が相手方を知ることができず、又はその所在を知ることができないときは、公示の方法によってすることができる。
訴訟提起によらない設備設置権の行使
空き地であり、使用されていない土地については、裁判を経ることなく設備の設置が許されることがあります。この場合、Aは訴訟を提起せずに給水管の更新工事を進めることができます。
事後の通知
仮に後日Bの相続人が現れた場合、設備設置権については事後通知が不要ですが、隣地使用権の観点からは通知が必要になることがあります。これは、後の紛争を避けるために重要なステップです。
(継続的給付を受けるための設備の設置権等)
民法
第213条の2
第1項の規定による権利を有する者は、同項の規定により他の土地に設備を設置し、又は他人が所有する設備を使用するために当該他の土地又は当該他人が所有する設備がある土地を使用することができる。この場合においては、第209条第1項ただし書及び第2項から第4項までの規定を準用する。
(隣地の使用請求)
第209条民法
- 土地の所有者は、次に掲げる目的のため必要な範囲内で、隣地を使用することができる。ただし、住家については、その居住者の承諾がなければ、立ち入ることはできない。
- 境界又はその付近における障壁、建物その他の工作物の築造、収去又は修繕
- 境界標の調査又は境界に関する測量
- 第233条第3項の規定による枝の切取り
この事例を通じて、設備設置権の適切な行使方法と、相手方の所在が不明の場合における注意点を理解することができます。土地利用の際は、法的な側面を正しく理解し、適切な手続きを踏むことが不可欠です。
まとめ
設備設置権の行使は、他人の土地を通じて自己の土地に必要な設備を設置する際の重要な権利です。特に所有者不明の土地を利用する場合には、公示による事前通知、訴訟を避けた設置の可能性、そして事後の通知の適切な管理が求められます。今回紹介した事例を参考に、法的な紛争を避け、円滑な設備設置を実現するための基本的な手順を理解していただければと思います。土地の利用においては、法律の枠組みを正しく理解し、適法な手続きを踏むことで、将来的なトラブルを防ぐことができます。
最後に
今回は設備設置権の行使において相手方が所在不明の場合について解説しました。
今回は以上で終わります。
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投稿記事 - 熊谷行政書士法務事務所 広島県広島市 (lo-kuma.com)
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