境界付近で工事をする場合の制限
境界付近での工事は、時として隣人とのトラブルの原因になることがあります。
今回は、境界付近の掘削制限について解説します。
境界付近の掘削の制限
民法237条1項では、井戸や用水だめ、下水だめ、肥料だめなどを掘る際には、境界線から2m以上の距離を保つ必要があります。また、池や穴蔵、し尿だめを掘る際には、境界線から1m以上の距離を保つことが求められます。
(境界線付近の掘削の制限)
第237条民法
- 井戸、用水だめ、下水だめ又は肥料だめを掘るには境界線から2メートル以上、池、穴蔵又はし尿だめを掘るには境界線から1メートル以上の距離を保たなければならない。
- 導水管を埋め、又は溝若しくは堀を掘るには、境界線からその深さの2分の1以上の距離を保たなければならない。ただし、1メートルを超えることを要しない。
この規定の趣旨は、衛生上の問題ではなく、掘削による土砂崩壊や水や汚液の漏出を防ぐことにあります。
また、民法237条2項では、導水管を埋めたり溝を掘ったりする場合も同様に、境界線から一定の距離を保つよう規定されています。この場合、深さの2分の1以上の距離を保つ必要があります。しかし、距離が1mを超える必要はありません。
裁判例においては、し尿浄化槽や改良式便所などの施設について、それらの構造や設備、使用目的、危険の程度などを考慮し、肥料だめやし尿だめとみなすかどうかが争われています。
境界付近での掘削工事の注意義務
さらに、民法238条では境界線付近での工事に際しては注意義務が定められています。
(境界線付近の掘削に関する注意義務)
民法
第238条
境界線の付近において前条の工事をするときは、土砂の崩壊又は水若しくは汚液の漏出を防ぐため必要な注意をしなければならない。
この規定は、単なる距離制限だけでは隣地の保護が不十分であるため設けられています。工事者は、必要な注意を怠らないようにする責任があります。しかし、土砂崩壊などに関しては妨害排除請求権や損害賠償の追求が可能です。そのため、民法238条が裁判規範として機能する場面は限られるとされています。
以上が、境界付近の掘削制限に関する民法の規定と裁判例についての概要です。掘削工事を行う際には、これらの規定に十分な注意を払うことが重要です。
まとめ
境界付近での工事は、周辺の土地所有者との関係を含めて慎重に行う必要があります。
民法の規定に基づき、掘削の際には十分な距離を保ち、隣地への影響を最小限に抑えることが求められます。また、境界線付近での工事に際しては、土砂崩壊や漏出などのリスクに対する注意義務も重要です。掘削工事を行う際には、法的な規定を遵守し、周囲とのトラブルを未然に防ぐためにも慎重な計画と対応が必要です。
最後に
今回は境界付近で工事をする場合の制限について解説しました。
今回は以上で終わります。
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投稿記事 - 熊谷行政書士法務事務所 広島県広島市 (lo-kuma.com)
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