建物と建物の最低限の距離は?

建物を建てる際には、一定の法律や規定によってその配置に制約あります。
その中でも、建物と建物の間にどれだけの距離を保つべきか、という問題は重要です。
そこで今回は、建物の配置に関する規定について解説します。

民法上の規定

まず、民法によれば、建物を建てる際には境界線から50㎝以上離す必要があります。

(境界線付近の建築の制限)
第234条

  1. 建物を築造するには、境界線から50センチメートル以上の距離を保たなければならない。
民法

この50㎝の間隔は、建物の側壁や出窓等の突出部分と境界との最短距離を指しています。この規定の趣旨は、日照や通風を確保して衛生上の悪影響を避けること、隣地建物の建築や修繕に必要な空地を確保すること、そして延焼を防止することにあります。

建築基準法上の規定

一方、建築基準法では、防火地域や準防火地域内の建築物については、外壁が耐火構造のものであれば隣地境界線に接して設けることができると規定されています。

(隣地境界線に接する外壁)

第六十三条 防火地域又は準防火地域内にある建築物で、外壁が耐火構造のものについては、その外壁を隣地境界線に接して設けることができる。

建築基準法

このように、民法234条1項と建築基準法63条には矛盾が生じています。
このため、建築基準法63条と民法234条1項が抵触する場合については建築基準法63条が優先して適用されるものと一般的に解釈されています。

建築基準法上の例外規定

さらに、建築基準法では、低層住居専用地域内の建物に関しては、外壁や柱から敷地境界線までの距離について1.5mまたは1mの距離を置くべきと定められています。

(第一種低層住居専用地域等内における外壁の後退距離)

第五十四条 第一種低層住居専用地域、第二種低層住居専用地域又は田園住居地域内においては、建築物の外壁又はこれに代わる柱の面から敷地境界線までの距離(…)は、当該地域に関する都市計画において外壁の後退距離の限度が定められた場合においては、政令で定める場合を除き、当該限度以上でなければならない。

2 前項の都市計画において外壁の後退距離の限度を定める場合においては、その限度は、一・五メートル又は一メートルとする。

建築基準法

以上のように、建物と建物の間の最低限の距離に関する規定は、民法や建築基準法など複数の法律によって定められています。これらの規定を遵守することで、建物の配置に関するトラブルや安全性の確保に役立ちます。

まとめ

建物の建設には様々な規制がありますが、その中でも建物間の最低距離は特に重要です。
民法や建築基準法によって、建物と境界線の最低距離が定められています。これらの規定は日照や通風の確保、隣接地との関係の維持、そして火災などのリスク防止を目的としています。ただし、建築基準法の規定が民法と抵触する場合もあり、最高裁判所の判例では建築基準法が優先されることが明確にされています。建物の建設を考える際には、これらの法律を遵守し、適切な距離を保つことが重要です。

最後に

今回は建物と建物の最低限の距離について解説しました。

今回は以上で終わります。
最後までご覧いただき、ありがとうございます。

この記事が民法について学びたい方の参考になれば幸いです。

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投稿記事 - 熊谷行政書士法務事務所 広島県広島市 (lo-kuma.com)

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