土地改良区の除外手続について【体験記】
今回は農地転用に必要な手続きの一つである土地改良区除外について、自分の体験記を交えて解説します。
今後、農地転用を実施する方のご参考になれば幸いです。
目次
土地改良区とは?
土地改良区とは、土地改良事業を実施するため設立された農家の方々の団体です。
名前に「区」と付くため場所を示しているように感じますが、あくまで組織のことを指しています。
土地改良区は農業用水の確保や農業用水路の整備等を行っています。土地改良区内に農地を所有している人は自動的に組合員になり、費用を負担しています。ただし、現在は費用の徴収が形骸化している場合もあり、自己の農地が土地改良区に属しているのか分からないケースもあります。
また、土地改良区内の農地を転用する場合は、その農地を土地改良区から除外する手続きが必要になります。
土地改良とは | 全国水土里ネット(全国土地改良事業団体連合会) (inakajin.or.jp)
どうやって対象地が土地改良区に指定されているのかを調べる?
大抵の場合、農地の所有者が自己の農地が土地改良区指定されているかを知っています。
しかし、稀に当事者が失念または誤認している場合もあります。
確実に土地改良区の指定を調べるためには、自治体の農業委員会に対象地農地の地番を通知して調べてもらう必要があります。農業委員会には農地台帳が備え付けられているため、確実に判明します。
自分は例え当事者から土地改良区に指定されていないと伺っていても、万一のことがあってはいけないため必ず農業委員会に確認を取るようにしています。
なお、この調査に手数料等は必要ありません。また、大抵の場合は電話やメールで対応してくれます。
土地改良区の除外手続の方法
土地改良区の区長から意見書を貰う
まずは土地改良区の各担当区長に連絡を取り、意見書を書いてもらわなければなりません。
この担当区長の連絡先は農業委員会ではなく各自治体の土地改良区の本部に問い合わせます。
土地改良区の担当区長と連絡先を教えてもらった後は、担当区長と調整をし、現地偵察の日時を決定します。
現地偵察?と思われるかと思いますが、基本的には土地改良区を除外して問題無いかを現地の状況を見て判断していただくことになりますので、こればかりは直接現地に行かなければいけません。リモートでは決してできない作業の一つです。
ただし、これは担当区長の性格にもよります。
厳格な性格の方であれば、同じような場所でも毎回必ず現地偵察を実施される方もいます。自分の体験ではAとBの隣接する2筆の農地を時期を分けて転用する場合でも、2回とも現地偵察を求められた場合があります。
また、全ての担当区域が頭に入っているので偵察の必要は無いと豪語し、偵察をせずにいきなり意見書を書いてくださる担当区長もいらっしゃいました。
担当区長の意見書をもらう
現地偵察が終わった後、担当区長から意見書を書いていただきます。
「当該地域は土地改良区から除外しても問題ないと思料する」という内容の文書です。最後に署名捺印をいただけば完了です。
これは各自治体に定型書式があるため、事前に用意しておきましょう。
土地改良区本部に担当区長の意見書等を提出する
次に、担当区長の意見を含む申請書類一式を提出しに行きます。
申請書類の定型は各自治体により異なりますので事前に確認しておきましょう。
また、添付書類として必要なものは概ね以下の通りです。
- 土地登記簿
- 公図
- 位置図
- 転用後の建築物等の設計図
上記の土地登記簿については、オンラインで取得した物でも可とする場合と、法務局で取得したものでなければならない場合があります。事前に確認しましょう。
なお、ここまでくれば実質的に土地改良区除外手続は完了したようなものです。
土地改良区の意見書を受領する
土地改良区本部に申請書類を提出してから3~4日程度で土地改良区の意見書が完成しますので、受領しに行きます。
この際、手数料として6000円程度が必要になりますので準備しておきましょう。
あとは土地改良区の意見書の原本を農地転用の申請書類の添付書類として農業委員会に提出することが可能です。
土地改良区の除外はどのタイミングで実施する?
土地改良区除外は農地転用許可申請書を農業委員会に提出するまでに全て完了していなければなりません。
これは農地転用の許可要件に土地改良区除外が含まれているからです。
そのため、提出日までに土地改良区の意見書を用意できなければ受理してもらえない可能性が高いです。もし仮に受理をしてもらえたところで、書類不備により許可が降りないことは明白です。
また、申請対象地が農振地域に含まれている場合、農振地域除外申請の要件に土地改良区除外は含まれていないため、土地改良区除外を先に行う必要はありません。
自分がこれまでに実施してきた感想
自分は今までに何件か土地改良区除外申請を含む農地転用を実施してきました。
正直な感想を述べると、かなりの根気と労力が必要です。
1件の申請で必ず現地に2回以上は足を運ぶ必要があります。近隣であれば容易ですが、遠方であればそれなりの労力となります。
また、機動力の確保は必至です。土地改良区に指定されている区域は山間部の傾向が多いです。そのため、公共交通機関が都市部ほど発達していない場合があります。最低でも自動車がいつでも自由に使用できる環境でなければ、自分で実施することは難しいかと思います。
このように、自分で完結することが難しいと思われる方は、農地転用を専門とする行政書士に相談されることを推奨いたします。
まとめ
土地改良区除外手続きは、農地転用において重要な事前手続きです。
土地改良区指定の確認や担当区長との連絡、現地偵察、意見書の取得、申請書類の提出など、手続きの細かなステップを踏む必要があります。特に、土地改良区除外は農地転用の許可申請書を提出する前に完了していなければならないことに留意しましょう。地域の規定や手続きによって異なる点もありますので、事前に確認と準備を行うことが大切です。
最後に
農地転用は根気が必要です。
もし一人では対処しきれないと感じたならば、無理せず農地転用を専門とする行政書士に相談しましょう。
今回は以上で終わります。
最後までご覧いただき、ありがとうございます。
この記事が農地転用許可の取得を検討されている方の参考になれば幸いです。
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投稿記事 - 熊谷行政書士法務事務所 広島県広島市 (lo-kuma.com)
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