職務上請求書は書類作成業務以外にも使用できる?

士業は、伝家の宝刀とも言える職務上請求権を有しています。
(ここでいう士業とは弁護士、公認会計士、不動産鑑定士、司法書士、行政書士、社会保険労務士、海事代理士、土地家屋調査士の8士業を指しています)
このため、業務上で必要があれば職務上請求書を使用して他人の戸籍等を取得することが可能です。
この件については以前も記事で解説しているため今回は省略します。
家系図作成業務で職務上請求書を使用できる?行政書士法の解釈 - 熊谷行政書士法務事務所 広島県広島市 (lo-kuma.com)

しかし、ここで一つ疑問が生じます。
行政書士の法定独占業務は行政書士法1条2項に記載された書類作成ですが、これらの書類作成に関する相談業務等を実施することができます。
このように、厳密には書類作成ではないが、それに準ずる業務であれば職務上請求書を使用できるのでしょうか?
今回はこの問題について解説します。

結論:できない

はい、できません。
絶対に無理です。

なぜなら、職務上請求書は行政書士の法定独占業務の範囲内でなければ使用できないからです。
つまり、以下の3種類の書類作成を行う場合のみ使用できます。

  1. 官公署に提出する書類
  2. 権利義務に関する書類
  3. 権事実証明に関する書類

上記以外の理由で職務上請求書を使用した場合は濫用となります。
まあ、長年この業界にいらっしゃる先生であれば「何を今さら」という内容です。

しかし、実はこの問題に関しては今まで法令上や日行連公式発表で明確に言及されたことはありませんでした。ただ慣習上、書類作成を伴わない業務では使用できないという不文律に従っていただけです。

それが、令和6年3月15日に発表された日行連発簡文書により明言がなされました。

日行連発第1607号

以下、文面をそのまま記載します。

このように、内容としては普通の注意喚起です。個人情報を欲しがる悪徳業者に職務上請求書の使用を依頼されても相手にするなという至極真当な内容です。
しかし、今回の本題はそこではありません。
第2段落の「職務上請求書は、行政書士業務である書類の作成に必要な場合にのみ使用することができるものであり、書類の作成を伴わず、戸籍謄本、住民票の写し等の取得のみを目的として使用することはできません。」という部分が重要です。
このように、法定独占業務に直接的に関連する場合であっても書類作成を伴わない場合は職務上請求書を使用できないことが明言されたのです。

まとめ

結局のところ、行政書士の職務上請求書の使用は法定独占業務の書類作成に限られます。書類作成を伴わない業務では、いかなる場合も職務上請求書を使用することは許されません。日行連の発表により、この点が明確化されました。これによって、職務上請求書の濫用を防ぎ、適切な業務の範囲内での利用が促されることになります。

最後に

今回は職務上請求書は書類作成業務以外にも使用できるかについて解説しました。

今回は以上で終わります。
最後までご覧いただき、ありがとうございます。

この記事が行政書士の業務について学びたい方の参考になれば幸いです。

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