行政書士の構成階層は?
今回は「日本行政 令和6年3月号」に面白い調査結果が載っていたため、解説します。
今回のテーマは「令和5年行政書士実態調査から見る現在の行政書士の構成階層」です。
今後の行政書士の活動をするうえでなかなか参考になる内容かと思います。
現在活動している行政書士の階層を知ることで、新たな発見があるでしょう。
※なお、今回は完全に娯楽記事です。
目次
年齢構成
これは現在の行政書士登録者の集計結果です。
回答者は3084人ですが、統計学的にはこれで十分に全体の比率と相似します。
なんと、第1位は61~70歳で25.7%。圧倒的な少子高齢化社会ですね。
また、続いて第2位は51~60歳以上で25.4%です。
なお、71歳以上は12.5%なので51歳以上の方が全体の63.6%を占めていることになります。
なかなかの高齢化業界です。
これについては、主たる原因として「肉体労働の要素が少ない」という部分が大きいのではないかと思います。
行政書士は一部の例外を除いては完全なるデスクワークになることが多いです。まあ、自分は最近は身体を動かすことも多いですが、大半はデスクワークばかりです。
このため、高齢化による体力の衰えが業務の支障になることがほとんどありません。
これが行政書士というよりは士業全体の大きな魅力の一つでしょう。
また、後述しますが行政事務系の公務員を20年間以上勤続した場合は試験を受けずとも行政書士に登録可能(6項登録)なことが要因の一つになっているのではないかと思います。
第2条(資格)
次の各号のいずれかに該当する者は、行政書士となる資格を有する。行政書士法
- 行政書士試験に合格した者
- 弁護士となる資格を有する者
- 弁理士となる資格を有する者
- 公認会計士となる資格を有する者
- 税理士となる資格を有する者
- 国又は地方公共団体の公務員として行政事務を担当した期間及び行政執行法人(独立行政法人通則法(平成11年法律第103号)第2条第4項に規定する行政執行法人をいう。以下同じ。)又は特定地方独立行政法人(地方独立行政法人法(平成15年法律第118号)第2条第2項に規定する特定地方独立行政法人をいう。以下同じ。)の役員又は職員として行政事務に相当する事務を担当した期間が通算して20年以上(学校教育法(昭和22年法律第26号)による高等学校を卒業した者その他同法第90条に規定する者にあっては17年以上)になる者
そもそも論で士業は高校や大学を卒業して即参入するような事業ではないので、ある程度の社会経験を積んだ後に開業される方がほとんどだと思います。
ちなみに自分は元公務員でしたが、6項登録ではなく1項登録です。
若年行政書士の可能性について
40歳未満の行政書士は全体の11.4%しか存在しません。自分もこの中に含まれています。
最近はSNSで活躍されている若い行政書士も多いため、今後は益々若年層が増加するものと予想されます。
むしろ、最新のAI技術の使用に抵抗のない若年層が急成長を遂げることもあり得るかもしれません。
業務歴
続いて業務歴です。これは開業してからの年数ですね。
なんと、最も年数の少ない5年未満が第1位で全体の51.8%を占めています。
つまり、過半数はルーキーなのです。
要因としては、残念ながら行政書士はサラリーマンのように安定収入を得ることが難しい業種であるため、開業から5年未満で廃業する者が多い傾向が強いからだと推察されます。つまり、行政書士界で5年以上継続営業できる強者はごく一部なのですね。
あまりにもシビアすぎますね…
また、他士業と比較すると試験の難易度も容易であり、副業で始めやすいというメリットもあるため、本業が忙しくなった際に行政書士業務を廃業するというケースもあり得るのかと思います。
職業属性
次は職業属性です。これは行政書士を専業でやっているか副業でやっているかの違いですね。
結果として副業者が24.5%であり、全体の1/4は何らかの副業を持っています。または行政書士業務自体を副業としています。
やはり行政書士は副業という労働スタイルと非常に相性が良いことが実証されましたね。
とはいえ、この調査のタイトルは「他資格兼業」です。おそらくは、他士業等との兼業にフォーカスされた調査結果でしょう。
そのため、士業等に関わらずサラリーマンやその他の自営業等との兼業者を含めれば副業者の割合はもっと多くなることが予想されます。
他資格兼業
次は他資格との兼業者の数です。
なぜ資格者だけで調査を限定するのか、その意図は分かりませんが…
日本行政書士会様、次回はサラリーマンや自営業者との兼業者数の調査も是非お願い致します。
やはり宅建士との兼業は一番多い27.5%です。
受験科目で民法が共通していることと、行政書士と比較すると難易度が容易であることが理由の一つかと推察されます。
しかし、注目すべきは税理士との兼業者数です。H30では27.3%だったのがR5では14.5%と激減しています。
税理士資格を保有する者は試験免除で行政書士登録できるという特殊ボーナスに恵まれているというのにも関わらずです。
これに関しては、そもそも可処分時間を税理士業に傾注したほうが利益率が高いからではないかと推察されます。
というより、根本的に税理士業自体が激務すぎるんですよね…
SNS等で税理士の方の発言を見ていると、確定申告期日の直前に領収書の山を持ってきて「何とかしろ!」とか言う理不尽な顧客の相手をされている方もいらっしゃるようです。想像するだけで胃が痛くなるような話です。
瞬間最大的な忙しさは締め切り直前の漫画家に匹敵するのではないかと感じることもあります。
全国の税理士様、今年の確定申告シーズンもお疲れさまでした。皆様の御尽力のおかげで日本の経済は回っていると言っても過言ではありません。
また、広島県内で更新が必要な建設業者や産廃業者がお客様の中にいらっしゃる場合は、是非当事務所にお任せください。(唐突な営業トーク)
行政書士登録資格
次は行政書士に登録した資格別の区分です。
まあ、当然と言えば当然ですが行政書士試験合格者が79.7%で全体の約8割です。
時点が行政事務で15.5%です。これは公務員勤続20年以上の方です。長年お国のために尽くしてもなお、さらに市民のために御尽力されようとする姿勢は素晴らしいと感じます。
また、第3位の税理士資格者は3.7%でH30の13.4%から大幅に減少傾向です。
やはり士業はどれか1本に絞ったほうが良いと考える方が多い傾向にあるのではないでしょうか。
蛇足:司法書士が行政書士試験を免除されない理由の考察
※ここから先は完全に蛇足かつ自分の推察に過ぎません。
年齢構成の章で解説した通り、行政書士になることができる者は以下の通りです。
- 行政書士試験合格者
- 弁護士
- 弁理士
- 公認会計士
- 税理士
- 公務員(行政事務に限る)勤続20年以上
この中に司法書士が含まれていないことに疑問を感じた方もいらっしゃるのではないでしょうか?自分もかつてはそうでした。
確かに、試験科目や業務の内容も共通する部分が多く、行政書士より難易度の高い司法書士が試験免除にならないのは一見すると不可解に感じます。
これについては諸説ありますが、有力な説としては「もともと同じものだったのが分岐したから」です。
司法書士と行政書士は明治時代の代書人制度をその起源としています。
そこから国民の利便性を考慮して、裁判所等への書類の作成は司法書士、それ以外は行政書士という職域で分岐して今の体制になっています。
つまり、司法書士が試験免除で行政書士になれるようになってしまったら、わざわざ分岐させた意味がなくなります。それなら最初から代書人制度で良かったじゃん…という批判は避けられないでしょう。
最後に
今回は行政書士の構成階層について解説しました。
これはあくまでも統計データに基づいた自分の解釈なので、異論はあるかと思います。気軽な読み物として読んでいただければ幸いです。
今回は以上で終わります。
最後までご覧いただき、ありがとうございます。
この記事が行政書士について学びたい方の参考になれば幸いです。
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投稿記事 - 熊谷行政書士法務事務所 広島県広島市 (lo-kuma.com)
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