既存の通路が狭小な場合に囲繞地通行権を主張できる?

公道に面しない土地であれば当然に囲繞地通行権が認められます。
しかし、公道に面している土地であっても、通路部の幅員が狭小で使用に耐えられない場合は囲繞地通行権が認められないのでしょうか?
今回は、この問題について考えてみましょう。

事例

Aが所有している土地は公道に面している部分がある。しかし、通路部の幅員が狭小である。Aは事業で大型車両を使用するため、現在の通路では不便であると感じている。
そのため、Aは隣接する土地所有者に「あなたの土地を通行させてほしい」と主張したいと考えている。
Aの主張は認められるか?

回答:用途に応じた利用を確保できるかどうかによる

まず、民法の規定によると、囲繞地通行権の成立要件は「公道に通じない」ことです。
つまり、通行するためには公道を経由する必要がない場合に囲繞地通行権が成立するとされています。

(公道に至るための他の土地の通行権)

第210条

  1. 他の土地に囲まれて公道に通じない土地の所有者は、公道に至るため、その土地を囲んでいる他の土地を通行することができる。
民法

しかし、判例上、袋地とは土地の利用に適した通路が公路との間に存在しないことであると考えられています。つまり、その土地の用途に応じた利用の適切さが問題となります。
まあ、極端な例を言えば幅20cmくらいの激細な土地を「これは通路だ。これでもう文句を言うな」と一方的に言われても、当然ながら到底通路としての用途に耐えられないため、これは妥当な判断でしょう。
このように現在の利用だけでなく、客観的に相当な利用の適切さも考慮されます。

この判例法理を今回のケースに当てはめてみると、問題となる土地の用途は大型車両の進入進出です。客観的に考えて、相当の道の幅員が確保されることが適切であるといえるでしょう。したがって、今回の場合は「公道に通じない」に当てはまると考えられ、囲繞地通行権が認められる可能性が高いと言えます。

つまり、土地の用途や通行の必要性に応じて、囲繞地通行権が成立するかどうかが判断されることになります。このような場合は、専門家に相談して適切な対応を検討することが重要です。

まとめ

この問題では、土地の所有者が囲繞地通行権を主張する場合、土地の用途や通行の必要性が重要です。
公道に面しているが通路が狭小である場合でも、判例上は土地の利用に適した通路が存在しないことが袋地とされています。客観的に相当な利用の適切さが問題となり、大型車両の進入進出などの用途に応じて囲繞地通行権が成立する可能性が高まります。しかし、判断が難しい場合は専門家に相談して適切な対応を検討することが重要です。

最後に

今回は不動産の賃借人にも囲繞地通行権が認められるのか等について解説しました。

今回は以上で終わります。
最後までご覧いただき、ありがとうございます。

この記事が道路について学びたい方の参考になれば幸いです。

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